女といえば恋バナじゃけえ!
ほぼ4年ぶりの更新。
もし、お待たせしてしまった方がいらっしゃいましたら本当に申し訳ございません。
これからちょこちょこ更新していきますのでご愛読のほどよろしくお願いいたします。
「ガートのアホ」
「ごめんって」
俺たちは3体目のワイバーンでようやく目玉付きの頭を手に入れることができた。
それ以外のワイバーンはガートがクレイモアで叩きつぶしてしまったのだ。
「ダニエルも相当ですけど、あなたの従者も相当ですわね…」
グロリアーナは頭のへしゃげたワイバーンの上に座っている。火を操作する加護は魔力だけではなく体力も相当に消耗するらしい。
「当主ならほぼ無限に熱術を扱えるのですけれど」
「てか、4大家でシャンタルメリューって無敵じゃん。ほかの家も強いけど攻撃で言えばやっぱり見劣りするよな」
「ミカエラさん。あなた4大家の加護をご覧になったことがあるの?」
グロリアーナがいぶかしげな眼で俺を見る。
俺たちはそれなりにいい装備を持っているし、どことなく(ガートですら)教育を受けたような顔をしているものの所詮は一般市民。流石に4大家、しかも加護を使用している瞬間なんて見たことがない。
と思われたんだろうな。あわてて「いやほら、ガルシアの武器博物館で4大家とモンダグート家が大暴れしたって聞いてさ。」と取り繕う。
「…まあ、最近のガルシアの勢いはものすごいですからね。先日もムンディー家を接収して繊維業では帝国第5位の領地になったうえ、あの魔導士グラ・フラナートを食客に迎えたとか…」
「まぢで!?」
おもわず声がうわずる。グラ・フラナートを迎え入れたということはあのミヒャエル(オリジナル)が正式にガルシア家の当主になったということ以上に、これまで進めていた謎の計画を少なくとも城内では隠さずに進めているということだからだ。
「あら、そんなにガルシア家のことが気になって?」
グロリアーナは小刀でワイバーンの首の肉を少しそぎ落とし熱術で焼いた。ナイフは真っ赤になっているが、高度な熱耐性の加護をもっているのかグロリアーナは一向に気にした様子もなく、素手でじゅくじゅく焼けている肉を口にした。
「あっ、あのさ、ほらガルシア家のミヒャエル様ってすっごい素敵らしいじゃん?」
俺も真似してみるが、とても無理だ。ナイフから伝わる熱もそうだし、俺の持っている熱耐性の加護ではとても焼けた肉をつまみあげるなんてできない。
「そうかしら?私が帝都で会った時には、マナーもわきまえない田舎者に見えましたけど。まあ、容姿は整っていましたけど、やはり頼りないというか…」
「グロリアーナのタイプってどんなん?」
吊り上がったグロリアーナの眼が一瞬緩む。
「それは…やはり私も戦や決闘の術を叩き込まれたとは言え女ですから。そうね、モンタグート様とか…ああ、イスカンダル家のご長男も素敵ね…そうね、バルバドス殿が先日仕留めたシュバルツタイガーですけど…」
「げっ」とガートが小さく叫ぶ。俺にこっそり耳打ちするとこによれば、イスカンダル家の今年で24歳になる嫡子バルバドス・ギリー・イスカンダルは18歳の時に山賊を単身、しかも素手で討伐したという超のつく戦闘狂らしい。容姿といえば、数々の山賊、盗賊退治に加え、不良貴族との決闘や魔物退治などに積極的に加わり、顔には大きな傷がいくつかあるのだという。
「あの、グロリアーナは戦傷のある男性が好きなの?」
「あら、戦傷こそ男の勲章ですわ。あのミヒャエルの剥きたてゆでたまごのような生白い顔になんの魅力があるのでしょうね?殿方の傷は領地や家名や家族や女性を守ったという跡ではありませんか。」
傷フェチだったのか…まあ、シャンタルメリュー家はその加護から火傷の跡が体に残ることが多く、現にグロリアーナの祖父、前シャンタルメリュー伯爵も顔に大きな火傷があったらしいけどな。
「お前ら、準備はいいか?」
フェルナンド達が俺らの仕留めた獲物やワイバーンをビックシーに収納し。後かたずけを終えた。
なんせ、俺は俺で想像した鉄器やら毒物やら罠やらがあるし、グロリアーナの加護は所かまわずだから火事にならないようにきちんと火種を消しておかないといけないしな。
3人にかたずけを任せたのは悪かったけど、俺もグロリアーナももう魔力がほとんど尽きている。
俺たちが仕留めたワイバーンはグロリアーナとダニエルがほぼ徹夜でダメージを与え続けていたみたいだ。さすがに俺達といえども瞬殺できるほど甘くはなかった。
5人がかり、そのうち1人は魔王、もう一人は4大家の長女とはいえ空中を飛び回るワイバーン相手は相当に大変だった。ガートも危うい場面があったし、ダニエルも背中に小さくない怪我を負った。
元気だったのは体力を底上げする加護「獣力」の加護を持つフェルナンドだけだ。
「おっけ、まあワイバーンも手に入ったことだし、今夜は街でゆっくり寝れるかな?」
「そんなわけないだろ」
フェルナンドはビックシーから背中に背負えるくらい大きなカゴを出し、俺たち全員に渡した。
「今から薬草摘みだ。1人20本摘んだらいいから楽だろ?」
夕焼けがフェルナンドの金色の瞳に差し込んだ。あたりに立ち込める血の匂いと迫りくる夜によって獣の力がみなぎってきたのだろう。
「ちょっと…わたくしが草むしりだなんて…」
「いや俺はグロリアーナ様のお世話が」
「ミカエラ、俺疲れた」
「いやでも、薬草がないとギルバートに迷惑がかかるしなー」
疲れ切った4名の溜息が夕方の森に響いた。




