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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第三部 タクミの成り上がり編
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初めての狩りじゃけえね

シカの魔物の群れがこちらに近づいてくる。

確か、キュピロクワイスだっけ…

縄張りに入らなければ無事っていうけどな。


まあ、縄張りにはいっているんだろう。


まずは、オーソドックスなものから…


「鉄器創造!」


槍、剣がキュピロクワイスに突き刺さる。

武器屋で目にした細工を再現したんだが、なかなかの出来だな。


細かい作りも見たままだし、てか、それを覚えているのも大した能力だけどな。


魔物から引き抜いた剣先も全く潰れてないし、強度もそこそこあるっぽい。


「鑑定眼!」


キュピロクワイス

----------

魔物・加護なし


なるほど。


「身体硬化、重力変化!」


硬くした手刀を首筋に叩きこむ。ギリギリ仕留めたようだが、鉄の剣とまともにやりあえるほどじゃないな。

あくまで、ダメージの軽減と体術専用だな。


「邪眼!」


とさけんで、魔物を睨むが効いている様子がない。

邪眼は後回しだな。

気功術はすぐに使えなさそうだし、次は…


「斬撃創造!」


手刀を振ると、その線が振りぬいた方向に飛んでいき、シカを真っ二つにした。


指を開いて放っても五本にもならない所を見ると、手刀一振りにつき、斬撃は一つらしい。


切れ味は岩を切る程度、飛距離が伸びるほど威力は落ちる。


「まあ、こんなもんか」


まだ試していない加護はあるけど、せっせと草をむしるガートの後ろに魔物の死体が山積みになっているし、そもそも、これ以上持って帰れそうにないしな。


「ガート!帰るぞ」


カゴ一杯に薬草を摘んだガートが振り返って絶句した。


「なっ、なんだこりゃああ!」


いや、気がつけよ。


「ほら手伝え、もう日も暮れてきたから帰るぞ」


釈然としない顔のガートの尻を蹴っ飛ばし、シカの死体を馬に積み込む。

この魔物は捨てるところがなく、角、内臓、肉、骨とすべて有効に活用できるため持って帰って、きれいに解体しなくてはならない。


「…やりすぎたな」

「どーすんだよミカエラ!これ以上持って帰れねえぞ」

「…後ろ向いてろ」


鉄器創造で小さなリヤカーを作り上げる。

縄で馬につないで、リヤカーに魔物の死体を積み上げ、縄でまとめる。


「こっち向いていいぞ」

「なっ、なんだこりゃああ!」


本日2回目の「なんじゃこりゃああ」を無視してリヤカーの後ろに飛び乗る。


「ほら、歩けよ」

「いやいや、ミカエラ、さすがにこの量は無理…って」


重力操作をかけているから、全く問題なく進む。

俺の体感だと10分の1から10倍までに操作をできるっぽい。


「なあ、ミカエラ。ミカエラって何者だ?見たところ貴族ではなさそうだけど、上品だし、強いし、頭もいいし…そのかわいいし」

「聞かない方が身のためだぜ」

「わかった、聞かねえよ」


森の土はやわらかくて、車輪が食い込んで安定しない。

やっぱり、即席で作った奴はだめだな。


ゴムのタイヤとかはないけど、きちんとした荷馬車を買おう。


…お金が貯まったらな


「…その。街に帰ったら一緒に飯でも行かないか?」

「飯?腹減ったのか?」


カバンに詰めた乾パンと干し肉をガートに投げる。


「いや、腹が減ってるわけじゃ、減ってるけどさ。その結果より過程の方が大切っていうか…」

「我慢しろよ。帰ったらそれなりにいいもん食わしてやるからさ」

「そう!それだって!帰ったら一緒にいいもんを食おう!」

「なにを言ってんだお前は?」


街に着いた時にはすっかり暗くなり、城壁の門も閉まりかけていた。


「ちょいまち!」

「ちょっと待ってくれ!」


俺とガートルードが閉じかけた門に縋り付く。


「なんだあ、冒険者と…何だ?」


俺の格好を見て職業を判断しかねたらしい。


「…一応、冒険者かな」

「おい!これを見てみろ。すげえ獲物だ!」


門番の一人がリヤカーに飛びつく!


「魔物をこんなに…何があった?」

「…なにも。ただ、狩っただけだ」

「嘘つけ!お前みたいなガキと女に暗黒地帯の魔物を倒せるはずがないだろ!言え!どこで盗んだ!」

「暗黒地帯に誰も入らねえんだろ?じゃあ、盗みようがねえだろ」

「うるさい、とにかく、俺達が預かる!」

「預かる?さっさと解体しなきゃ腐るってのに?」

「そーだ、流石にやりすぎだぜおっさん!」


体のいいカツアゲじゃねえか。

それにしてもどうしようかな。フェルナンドが動けない今、下手なことはできない。


戦えば騒ぎになってガルシア家の人間が来るかもしれないし、チクッたら役人が来たときに困る。

かといって、これを見逃すと毎日絞り取られるぞ…


酒精創造で酔わすには人数が多いし、後が怖い。


「なあ、本当にやめてくれないか?これを持っていかれるととても困ることになるんだ」


門番の一人が俺の背中に手を回した。


「まあ、姉ちゃんが付き合ってくれるなら今回は見逃してもいいんだぜ?」


その瞬間、門番の体が宙に浮き、吹き飛んだ。


「なっ!」

「てめえらふざけんじゃねえっ!」 


ガートが拳を振るわせながら、門番たちの前に立ちふさがった。


「貴様っ!俺たちに歯向かうのか!?」

「うるせえっ!女相手になんかする奴はなんかだ!」


お馬鹿。

ボキャブラリーが圧倒的に足りていない。

門番の笛の音を合図に、詰所からは次々と衛兵がこちらに向かってくる。


「…ガート逃げるぞ」

「ミカエラ…でも」

「いいから走れ!」


荷台から鞄と薬草を入れた籠を拾い、風霊駁撃エアリアルショットを地面に叩きつけて土煙を上げる。


ガートの手を引き、ほんのわずかに発動させた天眼龍目てんがんりゅうもくを使い、明かりの届かない街角まで走った。


「…ここまでくれば大丈夫だろう」

「はあはあ、ミカエラ…良かったのかよ」

「良くはないよ。今日の稼ぎが全部パーだし。でも、俺はよそから来た一般市民だからな。とりあえず、ギルバートに相談してみよう」


まだ、他の食べ物屋も営業していたが、食べる気にならず、俺達は空腹のままギルドに向かった。


「おう、やっぱり上手くいかなかったみたいだな」


ギルバートは今朝に比べたらましな顔色と服を着ていた。


「それが…」


俺が事情を話すと、ギルバートは真っ赤になってテーブルを蹴り上げた。


「ガートてめえ!嬢ちゃん絡まれてんのに逃げてきたんかコラ!」

「ギルバートいい。俺が逃げようって言ったんだ。ガートに責任はない」

「ミカエラ…」


ガートが涙目になっている。俺はカバンから、乾パンを出してガートに渡した。


「泣くなって、毛の生えた男の子だろ?」

「ブバボッ!ミカエラ…」

「ちっ、とりあえず詰所に行って抗議してくらあ」


ギルバートは吊った腕の上から上着を羽織り、出かけて行った。


「うっく、っく」

「だーから泣くなって。明日また行って違う門から入ればいいじゃんか」

「ごめん。俺、絶対幸せに…」

「あー、はいはい頼む頼む」


しっかし、痛いな。

今日の稼ぎだけじゃなくて、馬とか縄とかの装備品も置いてきちゃったし。

装備品とか入れても、あと4日で金貨5枚か…


「きっついなー。あれだけ換金したら金貨2枚にはなったのに…」


やっぱりいざという時の為に、神代遺産アーティファクト売らなきゃならないかな。

カバンの保存食を食べていると、ギルバートが瓶と紙の包みを抱えて帰ってきた。


「どうだった?」

「すまん、なんもなかったことにされてる。お前さんらの獲物も馬もきれいに片ずけられちまった」


なるほど、俺らが門番ぶっ飛ばしたって言えば捕まえて

、獲物は取り上げる。何にも言わなかったら獲物と荷物は横取り。


どっちにしても都合のいい商売ってことか。


「…もういいや。明日からまた頑張るよ」

「でもミカエラ、門を変えてもあいつらに話まわってるぜ」

「…そうだよな」

「その心配はねえ」


ギルバートが瓶の栓を抜く。

紙の包みの中には焼肉とかチーズとかが入っている。


「こう見えても5年前までは泣く子も黙る“幻惑のギルバート”って言われてたんだ。俺に任せな」


ギルバートの目が怪しく輝いた。

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