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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第三部 タクミの成り上がり編
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夜の蝶に変身じゃけえ!

「あの…先生。今夜が峠って…」

「何をしたのかは知らんが、内臓が痛んで毒素が体に回っておる。薬と治癒術で毒素は取り除いたが、まあ後は本人の体力次第だな…」


毒素って、変身能力を使って傷を無理矢理治療したせい?

…まさか


俺の毒物創造を受けたのか?


俺は鬼霊無効があるから毒攻撃は全く効かないが、もしも、少しづつ毒を撒いていたとしたら…


「お願いしますっ!絶対助けて下さい」

「…わかった。わしもできることはしよう」


俺はお医者さんの言う通りに氷を魔法で出したり、汗を拭いたりして看病した。


空が白んだころ、フェルナンドの容態は安定し、ゆっくりとした息をしながら、眠りについた。


「容態は安定したようじゃな。しばらく安静にしておったら大丈夫じゃろう」

「ありがとうございます」

「それでな、わしもあんまりこういうことを言いたくないんじゃが…その、大分高価な薬草を使ったからの…」

「わかっています。必ずお金を持ってきますから…」


とは、言うものの、時間がなかったからあの空間のものって持って来れなかったんだよな。


かといって、メダルを使ってもう一度あそこに行ったとしても、すぐに帰れる保証はないし…


パンパカパーン!おめでとう!1000人倒さないと出られないよ!みたいなことになったらシャレにならない。


あの空間に行くのは、万全の準備を整えてからだな。


「とりあえず、この氷砂糖売れないかな」


お菓子屋さんとかに行ってみるか。


「すみません。あのこの辺に食料品店って…」


完全なる無視。


なんとか、見つけた食料品店に入った。


「すみません、これ買い取って…」

「汚ねえかっこうで店に入んな!」

「あの、お砂糖を…」

「うるせえ!二度と来るんじゃねえこの乞食がっ!」


髪の毛を掴んで表に引きずり出された。


「やめっ…放してよっ!」

「いいか、今度来たらぶっ殺すからな!」


男のつま先が鳩尾に食い込む。

まあ、あんまり痛くないんだけど。かなりムカつく。


お金をゲットするまではトラブル起こさないでおくけど、覚えておけよ…


次は薔薇のお茶館だ。


「すみませーん」

「…」


聞こえなかったのかな?


「すみません、あの…」


俺と目が合ったメイドさんが華麗にスルーする。


そういうことか、そういうことですか…


「すみませーーん!」

「ちょっとあんた」


眼鏡巨乳メイドが俺の肩を突き飛ばす。


「なんなのよさっきから」

「あの、お砂糖を買って…」

「いらないわよ、小汚い!」


眼鏡巨乳メイドが俺の手から砂糖の入った壺を叩き落とす。


「あっぶな…おい、なにすんだよ!」


危うくキャッチした壺を抱きしめて、メイドを睨む。


「ここはね、乙女が集う神聖なティールームなの。あんたみたいなお猿さんがくるところじゃなくってよ?」


客席の女性たちが俺の方を見て顔をしかめたり、くすくす笑ったりしている。


「…わかった二度と来るか」

「そう願いたいものね」


メイドのドヤ顔を背中に表に出る。だが、絶対に許さない。


「みなさーん、この店はガルシア侯爵のホ○本を売ってますよー」


顔が固まったメイドにあっかんべーをして逃げた。

こんな店何がいいんだか!

ミヒャエルぶっ飛ばしたらマリちゃんに言ってボイコット運動でもしてもらおう。


…マリちゃんが俺の味方をしてくれたらの話だけど。


まあ仕方ない部分もある。レディ・ガ○もびっくりの恰好だからな。


「…まず、お洋服買わなくちゃ」


それに、してもお金が一銭もない。

お金に変えられそうなものは、国宝級のものばっかりだし。俺が持って行っても盗品に間違われるのがせいぜいだろうし…


「…どうしよ」


街の人々の視線が痛い。


もう完全にホームレス扱いだし。


元侯爵だぜ俺!


「ミヒャエルぶちのめしたら、この街滅ぼしちゃるけえ!」

「なに言ってんだ嬢ちゃん?」


振り返ると、小太りのおっさんが焼いたパン片手にこっちを見ていた。


「なんか用かよおっさん」

「いや、変わった格好した姉ちゃんがいるなと思ってみてたんだけどよ」

「ああっ、喧嘩売ってんのかてめえ!」

「怒んなよ、なんか困ったことがあったら聞いてやろうと思ってよ…」


おっさんの身なりはそれなりに小奇麗な格好をしているし、右手の指輪もそれなりに値段がしそうだ。


「実はな…」


俺がオブラートに包んで事情を話すと。おっさんは、俺の肩に手を置いた。


「よし、嬢ちゃん体を売ろう!」

「殺すぞてめえ!」


おっさんは俺が抜いた剣にビビる様子もなく、ポケットから金貨を3枚取り出した。


「ほれ、1週間待ってやるからこれで兄貴の治療費にするといい。返せればそれでよし、返せなければ家で働いてもらうぜ?」

「…おっさん何もんだ?」

「俺か、俺は男に春を売るお店を経営するアーマンドってもんだ。どうだ?話に乗らねえか?」


…最悪、俺の持っている神代遺産を質に入れてでも金を作ることが出来るし、俺の加護と力を使えば悪党ぶっ殺してでも金を作れる。


仕事があるかはわからないが、冒険者ギルドに行くっていうのも手だしな。


でも、それには、この恰好をどうにかしなきゃならない。小奇麗な格好をすれば、なんとか仕事もありつけるかもしれないし、氷砂糖だって売れるかもしれない。


それに、あの空間にもう一度入って蓄えていた食料品を売るっていうのも手だ。多分今の俺なら1000人斬りをしても3日もかからないだろうし。


「わかった。金を貸してくれ」

「よし、ついてきな」


俺はおっさんの店に行き、法術がかかった書類にサインした。


金貨三枚が重い。

侯爵だったころから無駄使いはしなかったけど、やっぱり自分の人生を握っている金って重いなって思う。


「この契約は絶対だ。守らなかったら嬢ちゃんが命を落とすぜ」

「わかってる。それからさ、中古でいいから服を売ってくれないか?なんか余ってるだろ?あと、お風呂にも入りたい」


大人のおもちゃが散乱しているお風呂場で体を洗い、久しぶりに石鹸で髪を洗った。


「風呂代、石鹸代、それから、お古とあわせて銀貨3枚だ」


銀貨10枚で金貨1枚。かなり割高だな。


「もうちょっと負けろよ。殺すぞ」

「口の悪い嬢ちゃんだな。お古っても上物の絹を使ってるし、香料使った石鹸も高けえんだぞ?」


この国に新品の服をそのまま売っている店は存在しない。

人々は店か、自分で縫った服を身に着けている。あとは、古着だけど、これも、親子、親戚とかでお古を10年くらいは貸し借りしあうので市場にほとんど出回っていないのが現状だ。

あるとしても、死人が出た家とか、質流れ品とかばかりで、小奇麗な格好とはとても言い難い。


ここなら、譲ってもらえるだろうと思ったんだけど…


「なんじゃこりゃああああ!」

「おう、流石は俺の見込んだ嬢ちゃんだ。良く似合うぜ」


真っ赤な絹のドレスに、黒のサテンとレースのひだ飾り。肩と胸、背中はギリギリまで露出し、腰回りがきつい。


「もうちょっとさ、この大人しい恰好って」

「あるわけねえだろ、ここをどこだと思ってんだ」

「…だよね」


まあ、ガ○よりはましか…

俺はあきらめてセクシーな衣装に着替えた。

何事も経験だ。


「ちょっとあんた。その格好で表に出る気かい?」


セクシーなお姉さんが俺の肩を叩いた。歳は24、5くらいかな?絹のガウンをおっぱいぎりぎりまで広げて着ている。


「おう、ミランダ。こいつ1週間後にここで働くからよ。よろしく頼むぜ!」

「…まあ、悪くはないけどね。ちょっと田舎っぽくないかい?しぐさなんてまるで男じゃないか」


…流石はミランダ姉さん。女を見る目は1級品だね!


「じゃなくて!俺は金返すからな!」

「みんなそういうのさ。初めはね」

「本当に返すってば!」

「ここの生活も悪くないよ?女が一番偉い場所なんてベットの上でしかないのさ」


はい名言きたー!

ミランダ姉さんは俺がここに来る気満々だと思ってるんだろうな。


「…まあ、返すつもりでもいいさ。でもね、その格好はないだろう?」

「この服?だってこれしか…」

「剣が男の武器なら、化粧は女の武器!口紅の1本も差さないで表に出るなんてあんた正気かい!」


そっちね。


「まったく、あんたも店で働かせる子の格好ぐらい気を遣ったらどうだい?金もうけばっかり考えてるから目が届かないのさ!」

「す、すまねえ、嬢ちゃん、ミランダ」


おっさんもミランダ姉さんには頭が上がらないらしい。


俺はミランダ姉さんの部屋に連れて行かれ、ばっちりメイクを施された。


「ほらね、あんたも磨けばもっと光るよ」


真っ赤なプルプルした唇。弓型に整った眉。眉に届きそうなまつ毛。髪はゆるくカールして、両肩からこぼれている。


嘘、これが私?


って言う所だったわ。まじで。


「私がいなかったら、あんたここでナンバーワン張れるのにね…」


となごり惜しそうな姉さんを振り切って。着ていた服とブーツ、荷物は姉さんが貸してくれたトランクに詰めて、俺は貸してもらった手袋、ヒールの高い靴、扇子を手に表に出た。


「さてと…こっからが挽回戦じゃけえね!」


俺は慣れないヒールを足に、フェルナンドの元へと急いだ。

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