大変なのは片づけの方じぇけえね
「…これで1人目か」
俺は俺の死体をまじまじと見た。
あの時、タクミヒャエルを殺していればこんな気分だったのかな。
「ふう、やっと片づいたな」
「てか、あんた散らかしすぎなんだよ。鉄球とか、釘とか散乱しまくってんじゃねえか」
「うるさいな、土くれ片付けるよりましだろ?」
水の魔法で土や血を洗い流し、汚れた水を美味礼賛に入れて乾パンや干し肉に変える。
1年に一回の戦闘で済んだのも、死体のほかに自分の魔法で生みだした土石の質量をそのまま食べ物に変えることができたかららしい。
「まあ、俺も魔法は得意じゃねえけど、土系統の魔法を使えてよかったよ」
「…ここの壁って何やっても壊れねえけど、精霊魔法は使えんだな」
「ああ、空気が無くなることもないしな」
傷の手当てをした俺達は、魔法で出した水を美味礼賛に入れてお茶を作った。
コップはフェルナンドが1月かけて作った石の食器だ。
「これってすげえ便利だな」
「ああ、国宝級のお宝だ。金にしたらいくらになるかわからんな」
そりゃあ、食べ物を無限に生みだせるんだもんな。
大げさかもしれないけど、これって世界を救えるんじゃねえの?
「さてと…やりますか」
俺は神鏡に手を置き、加護を現した。
「我、白野森卓美の加護を示せ」
フェルナンドから聞いたのだが、自分の加護を表示するだけならこれで十分らしい。
白野森卓美
ガルシア家令嬢、オラニエ家養子、建築家、ドワーフの師、海の男、木地師、カゴ編み職人、皆殺天使、馬具職人、特級厨師、眼鏡技師、美僕、メイド 、ガラス工、製本・活版印刷職人、詩聖の子、エルフの師、アテネの門弟、農奴、調香人、牛飼い、羊飼い、牧童、屠殺人、魔人(1/1000)
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魂喰い(Ⅵ)
神眼霊風(Ⅵ)
八紋武眼(Ⅵ)
妖精女王(Ⅲ)
土精霊の加護(Ⅳ)
丹田呼吸(Ⅶ)
無拍子(Ⅶ)
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・
魔人(1/1000)?
一人分ってことか?
「増えてる…」
「なんでだ?あんたは2人やったはずだろ?」
「…仮説が2つある。1つは自分以外のコピーを倒さなくちゃならないっていう条件がある。もしくは、フェルナンドには増えなくて、俺だけが増える条件がなにかある」
俺にあって、フェルナンドにないもの、性別、領主であるかないか、コピーした自分を美味礼賛で料理したこと、持っている加護…
「とにかく、もう一度試してみるしかないな」
「…ああ、でも光明が差したって感じだな。少なくとも1000年後には出られるっていうことだもんな」
「1000年って、そんなにかけるつもりはねえよ?傷にもよるけど週一で挑戦するつもりだし。慣れたらペースも早くなるだろうしな」
フェルナンドのこのメンタルの強さはどこから来るんだろうな。200年の間出られないこの空間で正気を保つとか、そっちの方が驚きだけどな。
「なあ、フェルナンドってここでは何してたんだ?」
「俺か?俺は本を書いてた」
「本?」
「ああ、他にも、彫刻とか絵とか詩とか色々だな。覚えているものを1年かけて彫刻とか絵とかで再現していくんだ」
「なんか見せてよ」
「…ってもなんも残ってないからな」
フェルナンドは手に砂を発生させ床に撒きはじめた。
砂はみるみる内に輪郭に、鼻に、目になっていき。
5分ほどで笑う少女の顔になった。
「これって…俺か?」
「ああ、急ごしらえにしたら上等だろ?」
「俺ってこんなに笑ってたっけ?」
「いや、あんたって笑った方がぜってえ、かわいいと思うんだよな。うん」
なに言ってんだこのおっさん。
まあ、ミヒャエルのせいで随分女っぽくなったことは否定しないが…
内面はあくまで男としてだな。うん。やってきたわけだし…
「ヘンタイ…」
「なっ、俺はだなあ!」
「…まあ、絵が上手いっていうのは認めるよ」
「しゃくぜんとしないな…」
「まあまあ、それより次はいつにする?」
「次って…元気だなお前。まあ、俺も早く出たいしな。タクミの怪我次第ってことだな」
「俺はかすり傷だけだ。フェルナンドの方が傷は深けえよな」
「まあ、こんだけ食材があるから、2日もあれば完治だ」
フェルナンドはコピーの死体を指差して笑った。
指が汚い。
歯も汚い…老化防止のせいか虫歯はなさそうだけどな。
それにしても俺の死体か…
あんまり見たくないから、背を向けていたんだけどな。
熊の上に寝そべる黒髪の少女の死体…耽美だけど俺のコピーだと思うと気が重いな。
あっ、熊の毛皮はいで服作ろうかな、生体解体とか職人系統の加護があるし。
フェルナンドが良いっていえばだけど。
ねえ、フェルナンド!あなたの皮はいでコートを作りたいの!
いいですとも、タクミ…みたいなね
「食材って…まあいいか。ところでトイレってどこ?」
「…隅っこでしな」
「隅っこってどこの?」
「どこでもいい。お嬢ちゃんが好きになった隅っこがトイレだ」
フェルナンドがそっぽを向いている。
おっと、これはとんだ地雷を踏んだんじゃ…
「…フェルナンド君?」
「ほら、俺は後ろ向いてるから早くしろよ」
「…おい、こっち向け」
フェルナンドは両手で押さえて下を向いている。
本当にいやな予感がする。
これは、オラニエ家の結婚とか、イスパハンとかそういうレベルの嫌な予感ではなくて…
そう、ミヒャエルと初めて会った時のような。
「フェルナンド、もう一度聞く。お前はどこで用を足していた?」
俺の手からは雷がバチバチという音を立てて光っている。
雷の精霊魔法が使えないから完全に飾りだけどな。
「…すまん」
「やっぱりか」
気体以外のすべてを食べ物に変える神代遺産、美味礼賛。
…つまりはそういう事らしい。
「…直にしたのか?」
「いや、土で器を作ってだな。ある程度乾燥してから…」
「もおいいい!やーめて!聞きたくない!この変態!スカ○ロ野郎!」
やっぱさっきの野菜スープにも入ってたのかな?
うえ、なんか気持ち悪くなってきた。
「おい」
「ん?」
「週一でコピー倒したらもう、食糧には困らねえだろ?」
「ああ、まあな」
「トイレ作るぞ!今すぐ!」
鉄器創造と金属操作を駆使して、俺の世界にもあった便器、便座を作り出す。排泄物は、一段高くしたタンクの中に水魔法で押し込むようにした。
匂いの元になるガスなんかは防塵、防腐、有機物操作でシャットダウンできるから、大体3~4カ月は持つはずだ。
ハエの一匹もいなさそうだしな。
「よし、タクミちゃんスカ○ロ計画は阻止された。おっさん、次は風呂だ!」
「風呂って、嬢ちゃん…」
この花も恥じらう乙女が3日以上お風呂に入らないなんてことができるか!
否、断じて否である!
「嬢ちゃんじゃねえ!タクミって呼べこの準ホームレス!」
「じゃあ俺もフェルナンドって呼んでくれよ」
「…わかった、フェル爺とかでいい?」
「なんでだよ!俺まだ30だぞ!」
「…うそん」
30って言ったら。ジャ○ーズの○井とか○田とか…
こんな小汚い30歳がいるわけなかろうが…
「とにかく、風呂がいるの!絶対!ぜーったいいるの!」
「わーったって、ほら作ろうぜ」
トイレの隣に、ドラム缶台くらいの風呂釜を置き、水で満たす。
「熱創造!」
俺の熟練度では直接触っても、火傷させるくらいが精一杯だが大量の水にぶち込めば程よい湯加減のお湯になる。
最後に薄い鉄の壁をそれぞれに立てて完成だ。
なんか、初めて異世界っぽいことをした気がするな。
「よっし、じゃあ俺はトイレに行ったら、お風呂に入るから。フェル爺、熊の毛皮はぐのは任せた」
「フェルナンド!もしくはフェル君とかでもいいよ!」
「はいはい、フェルくーん!毛皮お願いねー!」
フェルナンドのアホ顔を横目に俺はトイレを試し、風呂に入った。
返り血や土石を洗い流すと、2日ぶりに生き返った気がした。
やっぱり心の洗濯って大事だよね!
それにしても、200年ここで暮らしていたっていうフェルナンドも200年ぶりの汚れって感じはしない。
やっぱり、体とか洗ってたのかな?
そんで、その水を…うう考えないようにしよう。
魔法で発生させた熱風を体に当て、おっさんのマントを体に羽織る。
「おっさきー。ってなんじゃこりゃー!」
床にも天井にも血、フェルナンドにも血、美味礼賛にも血…
「なにこれ?熊が生き返ったのか?」
「いや、タクミそれはだな。あの…」
「皆までいうな…」
毛皮も穴だらけでとても使い物にならない。
「はあ…」
とりあえず、掃除だな…
もーやだ!領主じゃなくなった瞬間、掃除とかそんなんばっかりじゃん!




