コピーとの戦いじゃけえ
俺がこの空間に閉じ込められてから1週間近く、お互いの能力や戦い方を教え合い、何度か手合せをし、作戦を立てた。
丹田呼吸で体力を回復させ、有機物操作で折れた骨をゆっくりくっつけ、体も万全の状態にした。
「さてと、準備はいいか?」
「ああ」
俺は素手で魔方陣に近づいた。
相手も金属操作ができる以上、余計なことはしない方がいい。
一応、フェルナンドが後詰めで控え、フェルナンドのコピー対策をする。
ベストは俺のコピーが一体だけ出て、フェルナンドとフクロにすることなんだがな…
金色の魔方陣に手を触れると、真ん中の鏡が波打った。
「来るぞ!」
俺のコピーが襲い掛かってくる。
まずいことに、剣を持ったフェルナンドも一緒だ。
「フェルナンド、俺達には近づくな。それから、作戦1」
フェルナンドが床に置いてあった神代遺産の首飾りを身に着け、俺も床に置いてあったフェルナンドのチョッキを身に着ける。
同士討ちを防ぐために考えた方法。
いくらコピーをするといっても、出てくる前のものはコピーできないだろう、と思ったことなんだが、この作戦はうまく行ったみたいだ。
「風霊駁撃!」
フェルナンドは決して弱くない。
むしろ強い。
元貴族のフェルナンドは家伝の二刀流剣術も近接格闘も上手いし、風と雷の精霊魔法もそこそこ使える。
また、一日三回動物に変身できるというが、変身中は様々な生き物に変身できる上、動物のまま魔法も使える。
それに、200人の自分と戦ってきた経験からか、駆け引きが抜群に上手い。
虚実を混ぜ合わせた動き、リスクを考えた無理のない攻撃と、必ず隙を見逃さない着実な追撃。
下手すると、以前俺が戦ったタクミヒャエルより強いかもしれない。
「先手必勝!風霊駁撃!」
フェルナンドに放った魔法を俺のコピーが相殺する。
「ちっ、やっぱりお見通しか」
2対1でフルボッコ作戦は失敗したっぽい。まあ、逆の立場になったら一番避けたいしな。
「おっさん、作戦2だ!」
まあ、1対1で決着をつけるってだけなんだがな。
俺のコピーも、俺も、金属操作を警戒して鉄器創造を発揮せず、手に持った短剣を操って戦う。
魔法もお互い相殺が可能だからほとんど出してない。
相手の金属操作を受けないように、金属操作で形を保ち続けるにはを常に張り巡らせるには短剣1本が精一杯だ。
あんまり短刀術は得意じゃないんだけどな。
有機物操作があるから直接傷口かなんかに触れば一撃だから距離は保ったまま、お互いの剣と魔法を小出しにして、けん制し合ってるていうのが現状だ。
フェルナンドの方を見ると大きな熊と狼が血まみれで暴れまわっている。
…さてと、作戦を下手に考えるとばれるかもしれなかったから戦闘中にしか考えないようにしていたが、即席の作戦その3だ。
「おっさん!相手をチェンジだ!」
お互いの相手を変える。
俺の相手は血まみれの熊だが、めっちゃ怒ってて怖い。
フェルナンドには俺の加護も、使える魔法も伝えてあるから、まあ死なないだろう。
…多分
めちゃくちゃ、魔力発破とか、土霊奔流、とか風霊奔流とか鉄の短剣の嵐とか、生みだした刀を使った南方剣術奥義とかさく裂してるけど…
…まあ、死なないだろ。
風の精霊魔法でぎりぎり致命傷は避けてるみたいだしな。
致命傷はね…
「さてと、おっさんには恨みがないけどな…土霊奔流プラス鉄器創造!返し刃バージョン!」
突き刺さったら絶対に抜けない矢尻が土石の奔流と共に熊に襲い掛かる。
「鉄器創造!パチモンモンセラート!虎口!」
土煙が収まる前に、偽物のモンセラートを抜き放ち、居合の一撃を放つ。
土煙の中に吸い込まれた斬撃が弾かれた。
「…まじか」
人の姿に戻った血まみれのフェルナンドが2本の剣を構えて俺をめっちゃにらんでいる。
「ごめん…なんて言うと思ったか、鉄器創造!プラス空気創造!」
パチンコ玉状の鉄玉を爆風で飛ばす!別名圧力鍋爆弾!
パチンコ玉が突き刺さった状態で襲ってくるフェルナンドの攻撃を掻い潜り、無拍子で近づき、フェルナンドの胸に手を当てる。
「金属操作!大リーグ養成ギプス動かないバージョン!」
まあ、ただの拘束なんだけどな。
「アーンド、有機物操作!」
血液中の酸素とミネラル分が無くなり、強烈な貧血と眩暈がフェルナンドを襲う。
…マグネシウム、ナトリウムがなくなり、心停止を起こし、あと数分で死に至るはずだ。
「…悪いな」
意識が失ったのを見届けてから、本物のフェルナンド対俺のコピーの方へ向き直る。
コピーが放った魔法をフェルナンドの前に立って相殺する。
「待たせたな、フェルナンド」
「…待ったぜ」
狼の姿をしたフェルナンドは血まみれになりながらも、なんとか俺コピーと渡り合っていた。
息が上がっているが、致命傷は受けてないし、流血も少ないみたいだ。
「まだやれるか?」
フェルナンドの傷口に手を当て、流れる血を有機物操作で固める。
治癒系の加護を取っとくんだったな。
「…なんとかな。てか、あいつ強すぎだろ。武術の達人か何かか?しかも、息一つあがってねえし」
「まあ、避けることに徹してくれてよかったよ」
フェルナンドが息を整える間。俺は魔法を連発して相手を抑える。
お互いの技術じゃ相殺が精一杯だからな。火の魔法とかを使わない限りまったく影響がない。
「あいつの攻撃は俺が抑える。その隙を見て攻撃してくれ、ヒットアウェイを繰り返せば、あとは単純作業だ」
「わかった」
フェルナンドは大きなヤマネコに姿を変えた。
スピードならフェルナンドに分がある、それに魔力の残量も二人合わせれば俺たちの勝ちだ。
「…悪いな」
相手の魔法を確実に相殺し、フェルナンドに気を取られた瞬間に俺の剣が襲う。
元々、タイマンでぴったり同じ実力だから、ちょっとしたミスが命取りになる。
フェルナンドも無理はせず、確実に決められる位置を保ってコピーの攻撃をかわす。
まったく同じタイミングで魔法を使うことは出来ないが、魔法を放った瞬間はお互い隙が生まれる。
相手も下手なことはできないし、俺も迎撃以外には使わない。
それに、加護を使ってもお互いに相殺し合う加護を持ってるから対応が遅れなければ絶対に負けはしない。
まったく同じタイミングで魔法を使うことは出来ないが、魔法を放った瞬間はお互い隙が生まれる。
だから、相手も下手なことはできないし、俺も迎撃以外には使わない。
それに、加護を使ってもお互いに相殺し合う加護を持ってるから対応が遅れなければ絶対に負けはしない。
「お前も俺を殺したいのか?ミヒャエル達みたいに?」
鉄と鉄が衝突し飛び散り、火花が散る。
「俺ももう、自分さえ信じられなくなって疲れたよ」
風と雷、土と風の精霊魔法がコピーを挟み撃ちにする。
フレンドリーファイア覚悟の合わせ技。
コピーは必死に血を固めているが、俺達の近接格闘術がその隙を与えない。
「剣も俺と同じくらいの腕だとすると俺もまだまだだな。バスコ達にはほど遠い」
徐々に、コピーが弱っていくのがわかる。
そして、そのことに焦りを感じている事も。
だって、俺だから。
「ムンディー領でミヒャエルと対面した時、一度自分と話してみたかったんだ。まあ、惜しいってとこかな」
コピーがフェルナンドの爪を足に受け、大きく体勢を崩した。
「…落葉」
肩口から血を噴き出し、コピーの俺は動かなくなった。




