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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第三部 タクミの成り上がり編
63/135

かわいそうなフェルナンドじゃけえ

「今まで色々なことを試してみた。自分の血を飲んだり、知ってる限りの魔法を試したり、剣の腕を磨いたり。この書物だって読める範囲なら全て読んだしな。とにかく、考えられる事は全て試したんだ」


もしも、ネックレスに何か魔法がかかっていたとしても、解除する呪文を知らなければ何にもならない。


ありきたりなことならフェルナンドが全部試しているだろうしな。


「おっさん、この魔人っていうのはいつから現れたんだ?」

「ここに入って6日目からかな、自分の加護はわかっていたから初めは触らなかったんだ。それでも、様々な可能性を試そうとしていくうちに…」

「自分の加護を見て驚いたと」

「ああ、俺の持ち物は全部“美味礼賛ガストロナッツ”で食うものに変えちまったからな」


1000分の0、なんだろう。おっさんがここに入ってできることは限られている。


腹が減るって言っているし、髪と髭が伸び放題だから代謝は行われているのだろう。なんか臭いし。


「おっさん、ここに来てから髪の毛ってどんくらい伸びた?」

「覚えてねえな、伸びた端から料理に変えてたからな。でも、月に一度は髪と髭を料理にしてた気がするな」


でも、歳を取らない、もしくはほとんど取っていないってことはこの空間、もしくはおっさんの時が止まっているってわけじゃない。


俺の世界の漫画、バンパイアとかみたいに年を取らないようになっているのだろうか…


ん?バンパイア?


「おっさん、おっさんのコピーと戦ったのっていつ頃だ?」

「入ってすぐ、多分本当に最初の方だったと思う」

「それで…それを食ったのは?」

「3日目、動物に変身すると傷が大分治癒できるんだが、その代償に強烈に腹が減るんだ。で、食うもんが無くなって仕方なく」


便利だな、回復力もあり、パワーも、移動力もある。

おまけに隠密性も高い。

俺も欲しい加護だな。


「…おっさん、多分それだと思う」

「…つまり、形は違えど共食いをすると魔人になるっていうのか?」


帝国統一後も飢饉は何度か起こっている。少なくとも、太守が知らないはずない。


「いや、それだったら帝国でも起こりうるからな。歴史のどっかにありそうなもんだが、ガルシア侯爵家の記録にはそんな情報はなかった。多分、コピーを食うか、その鍋の中身を食うかしたらなるんだと思う」

「だけど、俺はこの鍋からもう200人近くの俺を食ってるぞ?」


そう、フェルナンドの言う通りなら200/1000になっているはずなのだ。


「…そこなんだよなあ。なあ、その、料理しないで食ったことって…」


フェルナンドが俺の肩を掴んで揺さぶった。


「ふざけんな!いくら堕ちてもそんな事…ううっ」


目からは大粒の涙が零れ落ちた。

200年近くも精神を保ち続けて、ようやく人に会えたんだもんな。きっと、叫びだしたいほどの気持ちを必至に抑えていたに違いない。

それに、200年そのままでいたにしてはしっかりした体つきで、身ぎれいだし、言葉も流暢だ。

ずっと、自分を律しながらいつか脱出できる日の為に備えてきたに違いない。


「ごめん、俺が無神経だった。その…おっぱい触っていいからさ」

「ぐふっ、嬢ちゃん。200年ぶりにそれは強烈だぜ…」


涙は止まり、鼻血を噴き出したところで、フェルナンドは落ち着いたようだ。


大分シュールな光景だけどな。

前かがみだし…


「これはもう俺が試すしかないな」


俺は神鏡に手を置いた。


我白野森卓美シロノモリタクミが命ずる、我の加護をここに示せ」




白野森卓美シロノモリタクミ 

ガルシア家令嬢、オラニエ家養子、建築家、ドワーフの師、海の男、木地師、カゴ編み職人、皆殺天使ココ・シャネル、馬具職人、特級厨師、眼鏡技師、美僕アーティスト、メイド 、ガラス工、製本・活版印刷職人、詩聖オルフェウスの子、エルフの師、アテネの門弟、農奴、調香人パフォーマー、牛飼い、羊飼い、牧童、屠殺人

-------------------

魂喰ソウルイーターい(Ⅴ)

神眼霊風しんがんれいふう(Ⅴ)

八紋武眼はちもんぶがん(Ⅴ)

妖精女王グレートマザ(Ⅱ)

土精霊ノームの加護(Ⅲ)

丹田呼吸(Ⅳ)


ガルシア家令嬢って、成功したんか、してないのかわからねえな。

隷属と超抵抗が無くなってるのは痛いけど、まあ、他の加護はほとんどそのまま残ってるからいいか。


「お嬢ちゃん、あんた一体…」

「詳しい話は後でね。さて、鍋に食べ物って残ってる?」

「ああ、この間最後のパーツを…」


聞くんじゃなかったな。


「さて、見た目は美味しそうな野菜スープなんだけどな…」

「ああ、さすがに肉は気味悪くてよ、甘めに味付けした野菜スープなら材料をイメージしにくいだろ?」


野菜スープといっても、ジャガイモと菜っ葉、クルトンしか入ってないが、まあまあおいしい。


「ごちそうさま。さてと…我白野森卓美シロノモリタクミが命ずる、我の加護をここに示せ」



白野森卓美シロノモリタクミ 

ガルシア家令嬢、オラニエ家養子、建築家、ドワーフの師、海の男、木地師、カゴ編み職人、皆殺天使ココ・シャネル、馬具職人、特級厨師、眼鏡技師、美僕アーティスト、メイド 、ガラス工、製本・活版印刷職人、詩聖オルフェウスの子、エルフの師、アテネの門弟、農奴、調香人パフォーマー、牛飼い、羊飼い、牧童、屠殺人

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魂喰ソウルイーターい(Ⅴ)

神眼霊風しんがんれいふう(Ⅴ)

八紋武眼はちもんぶがん(Ⅴ)

妖精女王グレートマザ(Ⅱ)

土精霊ノームの加護(Ⅲ)

丹田呼吸(Ⅳ)



まったく、変わってねえな。


「ってことは、やっぱりコピーを殺すのが条件か…」

「自信はあんのかい?」

「こればっかりは何とも言えない。全く自分と同じ相手なんて、運だろ運。おっさんはどうやって勝ったんだ?」

「俺も毎回命がけだよ。多分だけどな、自分を相手にするのに慣れるんだ。全く同じ力、技、加護を持っていても、隙は生まれるし、生き汚さ見たいのが身につくんじゃねえかな?」

「それはコピーされないのか?」

「性格までコピーされたら戦いになんねえだろ。俺ってば腕っぷしに自信がないからトレジャーハンターになったのによ」


まあ、バスコみたいのが2人もいたら恐ろしいことになっただろうな…


「なるほどね、あのさ、誰にも言わないで欲しいんだけど…」


俺は異世界から来たこと、ガルシア家の領主となって加護を重ねがけしたことなどを話した。


「と言うわけだから、俺ってかなり強いから、相当苦労すると思うよ」

「俺も200年苦労してきたと思ったけど、お嬢ちゃんも相当波乱万丈な人生送ってるな…」

「内緒だよ☆」


ウインクをしたら、フェルナンドは頭を抱えた。


「言わねえよ、ガルシア敵にしたくねえし、てか、今ここってガルシア領なんだろ?墓荒らししてるなんてばれたらもうね…」

「しかも、俺追われてるしな」


ピースすると、フェルナンドはため息をついた。

こいつさっきから失礼な奴だな。

場を和まそうとしてやってるのに…


「ここから出ても、知り合いもいねえしな。嬢ちゃん俺と結婚しようぜ」

「やだ。俺ってこう見えて結構モテるの。まあ、一緒に冒険者やるくらいなら考えてもいいよ」

「よっしゃ!ラブラブカップルの誕生だな!」

「いや、カップルじゃねえから」

「なんだよ、つれねえな」


さあてと、休憩したら自分との闘いってか。

てか、本当に自分の体と戦ったことあんだけどな…中身は違うけど。


俺はマントを敷いた床に横になって、寝相のフリをして近寄ってくるフェルナンドに身を寄せてやり眠った。


…やっぱ、くせえな。

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