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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第二部 ガルシアライフハック編
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お前の家燃えてるけえね

土石操作で穴を作っては閉じる。

オラニエ伯爵なら岩や地面に潜れる土行術が使えるらしいけどな。

てか、四家ってどんだけチートだよ。

兵士たちの詰所は静かで、人の気配がしない。


「まずは、モンセラートだな」


さっきの鎖鎌を腰に下げているものの、鎖鎌なんて使いこなせる自信がない。

あの女だって、物を浮かせる加護とかで補助してあのレベルだろうし。


「もんもんもん、モンセーラート!」


モンセラートと俺の持ち物は倉庫の籠に入れてあった。

しかし、人気がない。

さっき、俺が暴れた部屋も誰もいないしな。


魔力発破エーテルブトゥーム!」


爆発音と振動が中庭から響く。

これは、マリちゃんか…


中庭では、虚空の魔女がマリアと知らない男が暴れまくっていた。魔女は銀色の短剣を片手に奮戦している。


風霊撃エアリエルアロー

「ふんっ!」


魔法をシャベルで叩き落とすマリアに合わせて男が剣を振るう。

周りに傷ついた兵士たちが倒れているところを見ると、魔女のおしおきを受けたらしい。


「マリア!」

「ミヒャエル様!」


「あらあら、どういうことなのかしら…」


「マリア、あれ行くぞ!」

「はいっ!こいちばっ…恋人たちのエクストリームアタック!」

「噛むなよ…」


俺が鉄器創造で生みだした鉄球をマリアがフィダルゴブラッキーで魔女に向けて飛ばす。

もちろん命名したのはマリアだ。


「ちょ、ちょっちょっとお!」


虚空の魔女も次々に風霊壁エアリエルガードを展開するが、圧倒的な火力の前には無力だ。


魔女が時々放つ真空攻撃も、俺とマリアが散会して魔法を浴びせるとすぐに止まる。


「ほらほら、これがなきゃなんもできねえだろ?」


腰に下げた鎖鎌をチラつかせながら虚空の魔女を誘う。


「チルターンをお返し…!」

「おらあっ!」


虚空の魔女が持つ短剣をモンセラートで叩き落とし、鳩尾に蹴りをお見舞いした。


「ぐっ…覚えておきなさい!」

「一昨日きやがれですう!」


マリアがフィダルゴブラッキーを振り回して追い返す。

「はあはあ、マリア一体何が…」

「ミヒャエル様を助けようと来たんですけど…急にあの女が襲ってきて…」

「この人は?」


マリアと戦っていた男が剣を納めて俺に膝をついた。


「初めまして、ミヒャエル様、私ファンブラン・ド・シャイロノエルと申します」

「ってことは…」

「ええ、シャイロノエル家の嫡子です」


マリアがフィダルゴブラッキーをファンブランの目の前に突き刺す。


「さあ、すべて吐くのですよ。3本目のあんよが無くならないうちに…」

「お前そんなセリフどこで教わった?」

「…バスコ様に」


あいつ、マリアになに教えてんだよ。

いつかしばいちゃる。


ファンブランは北方馬術の総本家を継ぐ人間として幼いころからその道の英才教育を受けていた。

しかし、才能に恵まれず、北方馬術の腕はなかなか上達しなかったという。


「そんな中、ミヒャエル様たちが道場破りにいらっしゃると聞き…」

「消そうってか?」

「家臣と、恐らくは私の父シャイロノエル伯爵が…」

「随分物騒なことするじゃねえか」

「申し訳ございません…」

「でも、なんで俺たちに助太刀した?」

「こんなことは私の本意ではありません!」


ファンブランは地面を拳で打った。


「こんな、家のために人を殺すなんて…」

「おい、伏せろっ!」


モンセラートを抜き放ち、ファンブランに飛んできた矢を撃ち落とした。


「全てを聞かれてしまっては仕方ありませんなあ…」


シャイロノエル伯爵と30名ほどの兵士が城壁の上から姿を現した。


「こんなベタなセリフ生まれて初めて聞いたぜ…」

「マリアもです…」

「とっ、とにかく、全てを知られてしまったからには死んでいただきましょう!」


シャイロノエル伯爵が指笛を鳴らすと、兵士たちが俺たちを取り囲んだ。


「マリアいけるか?」

「正直、魔力がほとんどないです…」

「…俺もだ、あの魔女に使い過ぎたな」


俺とマリアは背中合わせになって武器を構えた。


「今宵のモンセラートは一味違うぞ?」

「…フィダルゴブラッキーもですう」


槍を持った兵士の足元を地面に沈め、モンセラートで首をはね飛ばす。

一時に4つの首が地面に落ちた。


マリアがフィダルゴブラッキーを振るうと兵士たちがまとめて吹っ飛ぶ。

直撃すると兜ごとへしゃげ、掠ると鎧ごと切り裂く。


改めて、シャベルって強いなって思った。

第一次世界大戦で一番人を殺した武器っていうし。


「マリア流東雲一閃しののめいっせん!」


フィダルゴブラッキーが地面を切り裂き、兵士を両断する。


なかなか上手いな…


フォームも完ぺきだし、土石操作で液状になった大地をスッと滑る切っ先はなかなかの速さだ。


「うらあ!」


遮る兵士たちを払いのけながら、シャイロノエル伯爵の方へ走る。


「覚悟しいや!」


護衛の一人を蹴り、もう一人の剣を金属操作で曲げ、相手の喉に突き刺す。

シャイロノエル伯爵の手前まで来たとき、俺の剣を受け止めた人間がいた。


「まあまて、こいつを殺しても何にもならん」

「バスコ!?」


バスコは失ったはずの右手で俺の剣を掴んでいた。


「そのいろいろ聞きたいことはあるけど。どうした?」

「まあ、こいつには貸し1つ、借り1つ出来てな」


俺の空間把握で男が引っ掛かる。

後ろに回った男が剣を抜くのに合せ、俺もモンセラートを抜いた。


「ミヒャエル様!」

バスコが俺の背後に回った兵士の首を落とす。


「あんまり調子に乗るなよ?」


バスコが伯爵の首に剣を突き付ける。


「皆、下がれ」


シャイロノエル伯爵を手首に隠した紐で縛り上げ、俺たちは用意させた馬車でシャイロノエル伯爵の城に向かった。


「さあてと、飯ぐらいは出してもらうぞ?」

「ふん、勝手にするがいい」

「父上!」

「だまれ、お前さえしっかりしていればこんなことには…」


マリアがシャイロノエル伯爵の頭をフィダルゴブラッキーの柄で殴る。


「まったく、ミヒャエル様を殺しかけておいていいかげんにしやがれです!」


血が馬車の天井に飛び、伯爵は泡を吹いて気を失った。

勢いに乗ったマリアは気を失った伯爵の横面をはたく。

ぶんぶんと顎が揺れるたびに血が吹き出し、


「マリちゃん!ちょっ、やめなさい!」

「いいぞ!マリアもっとやれ!」


バスコは馬車の中に備え付けられた酒を見つめ、上機嫌でマリアを煽る。


「おい、よせって」

「まあまあ、よいではないか」

「よくねえ、でシャイロノエル伯爵。虚空の魔女ってどこで雇った?」

「殺し屋なんて帝国には腐るほどおるわ…」

「いや、あの女加護を持っていた。多分、空気圧縮コンプレッサー、気圧操作、物体浮遊とかの3種類。そんな加護をそこらのチンピラが持てるはずないだろ?」


マリアが頷く。


「ええ、それに上級精霊魔法も使っていましたし、あの短剣は加護がついたものです」

「そうだな、チルターンも恐らく加護のついた武器だろう」


俺は腰に下げた鎖鎌を目の前で振るった。


「いえぬ…」

「ああっ!舐めてんのかおっさん?」

「言ったら、わしらだけではない、お前たちも死ぬことになるぞ…」


マリアが馬車の外を指差す。


「ミヒャエル様!あれって…」

「父上!」

「なんと…」


マリアの指差した方向にあるシャイロノエル城は赤々と燃えていた。

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