オラニエのターンじゃけえ
俺はオラニエ伯爵を霊廟に連れて行った。
「私が霊廟に入ってもよいのでしょうか…」
「いいってことですよ」
霊壁に手をつく。
「ガルシア侯爵ガルシア・デ・トール…以下略」
ガルシア・デ・トールバルド・ミヒャエル
ガルシア侯爵当主、建築家、ドワーフの師、海の男、木地師、カゴ編み職人、皆殺天使、馬具職人、特級厨師、眼鏡技師、美僕、メイド 、ガラス工、製本・活版印刷職人、詩聖の子、エルフの師、アテネの門弟、農奴、調香人
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魂喰い(Ⅱ)
隷属(Ⅰ)
神眼霊風(Ⅱ)
八紋武眼(Ⅴ)
超抵抗(Ⅲ)
妖精女王(Ⅰ)
土精霊の加護(Ⅰ)
丹田呼吸(Ⅲ)
無拍子(Ⅲ)
並列思考(Ⅱ)
三態鑑定(Ⅲ)
文字記憶(Ⅰ)
記憶向上(Ⅰ)
体力向上(Ⅰ)
空間把握(Ⅲ)
皮膚庇護(Ⅰ)
重量操作(Ⅰ)
鋭角操作(Ⅰ)
自在篆刻(Ⅲ)
回転掘削(Ⅰ)
生体分解(Ⅱ)
道具硬化(Ⅰ)
摩耗補助(Ⅰ)
有機物操作(Ⅷ)
石質操作(Ⅱ)
金属操作(Ⅳ)
鉄器創造(Ⅲ)
熱創造(Ⅱ)
空気創造(Ⅰ)
酒精発破(Ⅱ)
魔力発破(Ⅰ)
熱耐性(Ⅲ)
水耐性(Ⅱ)
土石耐性(Ⅰ)
鬼霊無効(Ⅸ)
水分補充(Ⅰ)
味覚改竄(Ⅰ)
球体研磨(Ⅰ)
偏光調整(Ⅰ)
漂白補助(Ⅰ)
調音(Ⅰ)
音創造(Ⅰ)
気体蒸溜(Ⅰ)
おおおおおおおおおおおお!
すげえぞ、すげえぞ!
…なんか訳のわからない加護もあるけどな。
なんだよ、味覚改竄って。
けど、バスコの八紋武眼、オラニエ伯爵の金属操作、鉄器創造、空気創造、魔力発破が増えてる!
しかし…
「あの…伯爵?職業とか加護が減っているんですが、それにあの養子って…」
「それは統合ですな、料理人とパン職人の加護を持つ人間は少なくありませんが、彼らは“特級厨師”の加護を持っていますな。加護も同様に必要なものが集まると上位加護に変わります」
「そういうことですか…で、養子っていうのは?」
「オラニエ家の加護をつけるのに必要ですからな。なに、ミヒャエル様は息子も同然、遠慮などなさらないでください」
「いや、遠慮ってか…」
「遺産の分け前も遺言に加えておきますからな。金山の収益でマリアと末永く…」
縁起でもないこというなよこのモグラ。
てか、マリアと結婚する前提かよ。
あとは鉄器無効か…
「まあ、それはさておき、私に考えがあるのです」
「はあ?」
「ミヒャエル様に加護をつける方法ですよ…」
「!!」
ひそひそひそひっそー
ふむふむふむ…
うひひひひ
ふっふっふふふふふふ
ひゃひゃひゃ……
ひゃっひゃっひゃひゃはあああ!
霊廟にモグラと俺の笑い声が高らかに響いたけえね
城の大広間では、アドナイアスと文官たちがお茶を口から垂れ流していた。
「…という訳だ」
「ミヒャエル様、正気ですか?」
「ああ、これを見てくれ」
俺が提出したのは帝国領内にある武術を教える道場の一覧。剣術から槍術、格闘技、弓術、馬術などのオーソドックスなものから球術、天駆獣術、淫躰術とかいうわけの訳の分からないものもある。
淫躰術って、なんだよ。
エッチな事か。
…エッチな事か?
「ガルシア侯爵は本日より、帝国領内の道場をすべて制覇する!」
「馬鹿じゃないですか?」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんですー。ってことはアドナイアスは馬鹿じゃないですか―?」
「…チッ」
「アドたん聞こえてるぞ?」
「申し訳ございませんでした。ミヒャエル様。本当に反省していますので、アドたんだけは勘弁してください」
そんなにイヤか?
アドたん。可愛いと思うんだけどな。
「でも、これは無理じゃないですか?ミヒャエル様の強さを疑うわけではありませんが淫躰術はさすがに…」
やっぱりそうなるよね。
「まあ、俺が出るわけじゃないから構わん。そして!有名所を20も倒せばー。平和な帝都のお茶の間の話題を集めること必然!」
親指をグッと立てる。
「まあ、色んな意味で目を引きますよね」
「からのー?」
「はい?」
「からのー?」
「なんですか?」
「からのー。ガルシアブランドマークの武器が流行り―?」
親指をグッと立てる。
「はい…」
「流行り―?」
「もういいですから、続けてください。」
「帝都中にファッションをはじめとするガルシアスタイルが流行り―?」
親指をグッと立てる。
「ええっと…」
「流行り―?」
「頭バグったんですか?」
「ガルシア領内で製造された衣服、武器、馬具、書物、食べ物、酒、インテリア、エクステリア…などなどこの500項目の商品がっ!高値でっ!売れるっ!」
バッと領内で製造可能な商品一覧を提示する。
「ええと」
「ふっふーん。総合ハイパーライフスタイルクリエイターの概念がないアドたんに教えてあげよう!」
俺は事前に用意した紙芝居を目の前に出す。
「その1、イケメンガルシア侯爵が各地の道場を暇つぶしに潰しました。元々文武両道のサド王子なので不思議はありません。しかっし!モンタグートやサルファパレードなど南部貴族達がそれに従いました。時は世紀末っ!」
「はあ…」
「その2、帝都をはじめとしたある程度金に余裕のある人たちや武器を実地で扱う冒険者、士官、貴族などが俺たちと同じ職人の武器、衣服などを真似するようになります。世は海賊時代っ!」
「ええと…」
「その3、その頃ガルシア領内では“ミヒャエル様が使ったのと同じ剣”とか“ミヒャエル様も大好物!ガルシアのシカ燻!”を販売するようになります!これこそ世界を革命する力!」
「まあ…」
「その4、それが帝都を中心に大人気!俺たちの活躍は本や劇になり。世の中のちびっ子たちはミヒャエル人形やカスバートキャンディーを求めて街をさまよいます。ガルシアミクス勃発!妖怪たちの仕業だニャン!」
「うんと…」
「というわけなのだよ。アドたん」
「おっしゃりたいことはわかりました…まあ、我々の考えつかないアイディアというのはわかりました」
「で?」
「当然北方貴族の圧力がかかってくる事は想定されていますよね?」
「…だよね」
「北方剣術の総本家ローゼンバウムを筆頭に帝国の半分の貴族が敵に回るでしょうね」
「だけど、このままじゃあジリ貧だぜ…」
アドナイアスは俺の出した紙を再度めくった。
「…だから、反対してはないのですよ。ただ、その代償としてこうむるものも多いと申し上げているのです」
「皆席を外してくれ。それから、ジルバンテとガルバリウスを呼んできてくれ…」
4人がテーブルに揃うまでの間、俺はムンディー子爵領土から取り寄せたミヒャエルが購入した屋敷や土地の一覧を広げた。
オラニエ家の秘密部隊にも協力してもらって、裏付けもバッチリだ。
「おう、揃ったな、これを見てくれムンディーから吐かせた分も含めて考察すると、ミヒャエルの手は帝国全土に広がっている。今サンスーシ領に行っても見つかるかわからない」
「そもそも、勝てない可能性すらありますしね…」
アドナイアスに魔導師の加護はない。
ジルバンテが魔導師とぶつかった場合最悪の事も考えられる。
「そこでだ、各道場を巡ると同時にミヒャエルの拠点やもくろみを潰す。ムンディーの所やロンサール家みたいに、そこでなければいけない理由があるはずだ」
「勝算はありますか?」
「ある、と言いたいところだが、自信はない。最悪隠れ家に火を付けて逃げればいい」
「まるで、夜盗のセリフですね」
「ゲリラと言ってほしいね」
その時、ジルバンテが拳で広間の机を叩き割った。
「ミヒャエル様。いやタクミ殿。私が勝てないとお思いですか?」
「ジッ、ジルバンテ、いいかお前が負けるとは思っていない。けどな、それはバスコも同じだ」
「私が不覚を取ると?」
ジルバンテは机の破片を握りつぶした。
某グラップラーかお前は。
「ああ取るね、不覚を取らないと思っている奴は必ず不覚を取る。誰だってそうだ」
「ガルシアの…あなたの家の将軍が信じられませんか?」
ジルバンテは顔を真っ赤にして拳を握っている。
「信じる信じないじゃない。本当にわからないのか?」
「何を分かれというのです。ガルシアは帝国最強の武門、そして、将軍の私はその中でも最強の存在でなければならないのです…」
俺はため息をついて割れた机の一方を蹴り上げた。
「もういい、主君の言うことが聞けない奴にはお仕置きしかない」
俺を押しとどめようとするガルバリウスを押しのける。
「表に出ろジルバンテ。遊んじゃるけえ」




