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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第二部 ガルシアライフハック編
36/135

バッドボーイズは広島の宝じゃけえね

マリア恐ろしい子…

今は違う、今は。

てか、モグラってオラニエ家限定の悪口だろ。

あんまり言われてきたんでマリアの中で“言われたくない悪口ベスト1”になったんだろうな…


「貴様っ!子爵家の人間に逆らうのか!」


3名の兵士たちは俺たちに槍を向けた。


「まあまあ、兵隊さん、そうカッカしなさんな。エルフが馬鹿なのはみなさんご存じでしょうが」


バスコは槍を抑えて兵隊の肩を掴んだ。

そして、目にも留まらぬ早業で銀貨を数枚掴ませた。

俺はマリアの口を手でふさぎ、服をはだけさせた。


「ほら、焼印の跡なんてありませんよ」

「確かに…」


「それに俺たちは子爵様のお役にたつと思って、こいつを連れて来たんですよ」


バスコのゲス顔がさく裂した。


「う、うむ。お前たちがきちんと監督しておくのだぞ」

「へえ、おありがとうごぜえますだ」


バスコ、やりすぎだ。


「まあいい、今回だけは目をつぶろう。子爵家にエルフを納めるのなら。監督屋敷に連れて行くといい」


バスコから金を受け取った兵士が、レンガ造りの小屋を指さした。


「てか、フミカを見ても何も言わなかったな?」

「私の姿はあなたたちにしか見えないわ」

「ああ、そういうこと」


「フェリシティわかっているな?」

「はい」


屋敷の前で俺たちは剣を含む荷物全てをカスバートに積み、森に隠れているように言い聞かせた。

フェリシティは綿花畑に隠れ、すっと見えなくなった。


「マリア、いいか何かあったらすぐに逃げるんだぞ」

「ええ、お任せください」


君が一番、心配なんだけどね。


「すみませーん、監督さんはいらっしゃらないですかー?」


数回のノックの内、酒の匂いのする男が扉を開けた。

上半身は裸で、髭が伸び放題になっている。


「なんでえ、お前らわあ」

「監督さんですか?」

「おう、俺がここの監督だ。みんなからはババって呼ばれている」

「ババさん。俺たちはこのエルフを売りに来たんすよ。ついでにここで働かせてもらおうかと…」


ババは唾をペッと床に吐いた。


「ああっ?いらねえよ、ここにはエルフも働き手も腐るほどいる」

「そう言わないで、俺らも冒険者稼業が長いですから結構お役に立ちますよ」


バスコは揉み手をしながら、にこやかに近づいた。


「へえ、確かにでかい方は腕だけは立ちそうだ。こっちの細いのは使い物にならなそうだがな」

「いやいや、こいつもすばしっこいので何かの役にはたちますよ」


ババは何かを考えているようだった。

小屋にかけてある剣を手に取ると俺とバスコに投げ渡した。


「今から、ガルシア家の人間がこっちに来るらしい。そいつらを追い払え。エルフは置いて行っていい」

「おまかせください!」


バスコは小屋に入り、壁に掛ったクレイモアを渡された剣と取り換えた。


「あっ、おめえそれは…」

「いやあ、俺って図体がでかいからデカい得物じゃねえと」

「まあいい、うまくやれよ。それから絶対にばれるんじゃねえぞ」

「あっ、はい。俺たちと子爵家、ババさんは全くの無関係です」

「うまくやれ…」

ババは再度つばを吐いて扉を閉めた。


「フミカ、念のためマリアについていてくれるか?」

「ええ、わかったわ」

フミカは小屋の中にすっと消えて行った。




「ミヒャエル、腹減ったな…」

「ああ…食べ物を少し残しておけばよかった…」


俺たちは森の街道沿いの木の上で隠れていた。

が、ガルシア家の人間はなかなか来ない。


「だまされたんじゃないのか?」

「だますにしても、剣まで渡すかな」

「しかし、遅い。てっとり早くガルシア家まで行くか?」

「やめろ、お前が言うとシャレにならない」


日が傾き、俺たちがうとうとし始めた頃。

街道の向こうで馬車の音がした。


「来たか」


ガルシア家の紋章がついている。

俺たちは用意した覆面をかぶった。


「誰が乗っているかな?」

「さあ、ジルバンテかも知れんし…」

「勝てるか?モンセラートもジュアニータもないぞ」

「いざとなれば当主の加護を使えばいい」

「…なにそれ?」

「お前、霊廟に行ったことがないのか?」

「霊廟?」


バスコは頭を抱えた。


「アドナイアスめ。都合の悪いことは黙っておるな」


馬車が近づいてきた。


「まあ、後で教えてよ」


俺は馬車の前に立ちふさがった。


「南方奥義、東雲一閃しののめいっせん!」


地面ごと切り裂く斬撃が馬車の車輪を砕いた。

慣れない剣だから、とは言いたくないが、バスコに比べると威力が弱い。


「なっ、なんだお前たちは!」


御者が腰の剣を抜いた。


星射ほしうち!」


御者の剣が吹き飛ぶ。


「手を挙げな」


バスコがひっくり返った馬車から乗っていた人間を引きずり出した。

幸い俺の知っている顔はいない。


「お前たち!こんなことをしてただで済むと思っているのか?」

「ミヒャエル様が黙っていないぞ!」


皆勝手なことを言っている。


「まあ、黙っていないだろうさ」


今しゃべってるしな。


「なあ、お前たちは子爵領に何しに行くんだ?」

「お前の知ったことではない!」

「殺すぞ?」


バスコがクレイモアの横側で馬車を打った。

馬車がホームランする。


「ムンディー子爵領にこの手紙を届けますうう!」

「見せろ」


内容は想像した通り、俺たちについてだった。

俺がマリアとそちらに行くかもしれないという事、行った時にはガルシア領に知らせること。歓待し、引き留めておくようになどと書いてあった。

俺はビリビリと手紙を破くと、御者に伝えた。


「おい、ガルシア家にはこう伝えろ。“お手紙は確かに届けました。何も心配いりません”ってな」

「そ、そんなこと…」

「これがなにかわかるか?」


俺は契約を行うためのインクを取り出した。

バスコがフェリシテに使ったものと同じだ。


「今からお前に契約の紋を施す。それで、逆らったら殺す」

「…そんなことをしても無駄だ」

「え?」

「この馬車を狙ったのが運の尽きだ」

「お前、この状況を理解してるか?」

「理解していないのはお前だ。もうすぐ、サルファパレードの騎馬隊が来るぞ」


サンダリオの所か。てかなんで馬車と一緒にいないんだ?

バスコが俺に耳打ちする。


「ミヒャエルどうする?」

「んー、戦うにしても、説得するにしてもややこしいことになりそうだな」

「いっそ、斬るか?」

「冗談だろ?」


俺は剣の先をバスコの首に当てた。

バスコは俺の手をそっと握って押しやった。


「冗談に決まっているだろ、ミヒャエルは冗談がわからんなあ」

「お前の冗談はタチが悪いんだよ。わかった、とりあえず、様子を見て説得か無力化。どちらにしても俺とお前がいれば大丈夫だろ」


馬の蹄の音がした。


「来たな」

「絶対先に手を出すなよ」


やがて、お互いの距離が良く見える距離に来た。

相手の騎馬は三騎、全員が弓を構えている。


「賊めえええええ!サルファパレード家当主サンダリオ様が成敗してくれるわ!」


サンダリオは弓を構えてこちらに突進してくる。


「サンダリオだ」

「サンダリオだな」


俺たちから数百メートルの所で、一瞬、サンダリオが馬上でピタリと止まった。


「サルファパレード家奥義、驟雨梅撃しゅううばいげき!」

「いかん、ミヒャエル下がれっ!」


バスコはサンダリオが放った矢の嵐に立ちふさがった。


「バスコっ!」


バスコの両腕、両足に数本ずつ矢が刺さっている。

「バスコ?ミヒャエル?お前らもしかして…」

「ぐううっ!わっはっははは!っつ、俺たちは悪の冒険者、バスコでもミヒャエルでもないぞ!」


よっぽど痛かったのか、バスコの演技は冴えない。


「サンダリオ俺だ。ミヒャエルだ」


俺は剣を捨てて降参した。


「なっ、ガルシア殿か!」


サンダリオは馬から飛び降りた。


「おい、モンタグート殿!無事か?」

「馬鹿、事情も確かめんと撃つ奴があるか」


バスコは瞬時硬化とクレイモアで急所への攻撃は防いだらしいが、腕の血は止まっていない。


「大丈夫か?」

「ああ、これぐらい稽古に比べたらどうってことはない…」

「どんな稽古してんだよ…」


サンダリオの持ってきた軟膏でとりあえず血を止める。

傷の手当てをしている間に、サンダリオとガルシア家の人間に経緯を説明した。


「…そうだったのか」

「で、お前たちはどうする?アドナイアスに伝えるか?」

「…我らはガルシア家の人間です。すべてはミヒャエル様の仰せのままに」

「お前は、サンダリオ?」

「…俺はガルシア家の護衛を頼まれただけだ。それ以上は請け負っていない」

「わかった、別にアドナイアスを裏切れとは言わない。連絡するのをほんの少しでいい、侯爵領に戻るのを2日遅らせてほしい」


俺は頭を下げた。


「わかりました」

「わかった」


ガルシア家の人間は近くの街で馬車を修理し、サンダリオは森で待つことになった。

「しかし、サンダリオはすごいな。あそこまで強いとは思わなかった」

「いや、もし、あの場所にミヒャエルがいなければ。それから、モンタグート殿が俺を殺す気なら、矢は一本も当たらなかったはずだ」

「バスコでいい、サンダリオ。瞬時硬化、八紋武眼はちもんぶがんを使っても結果はこれだ。お前はもっと自分の腕を誇っていい」

「…すまん。父上の代から南方馬術が衰退していってな。俺はどうやら自分を卑下する癖がついてしまったようだ」

「なに、皆同じさ」


「モンタグート様、動きがありました」


フェリシテがバスコの隣に現れた。


「どうした?マリアになにかあったのか?」

「いいえ、反乱を企てたとしてエルフの男が処刑されるようです」

「なに!うっ、つうう…」


立ち上がった衝撃で足から血がにじみ出ている。


「バスコお前はここにいろ、俺が行く」

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