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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第二部 ガルシアライフハック編
32/135

僕は友達が少ないけえ

ガルシア家の大広間に大勢の家臣が並んでいる。

アドナイアスが書類を俺の前に置く。


「今日からミヒャエル様も会議に加わりますので」


家臣一同がびっくりした顔でひそひそ話をしている。


「何か文句でも」


アドナイアスは机を叩く。


「いや、ミヒャエル様に出向いていただくほどでは…」

「内政は我らが行いますゆえ」

「狩りに出られてはいかがですかな?」

「そうだ、それがよい」

「そーだそーだ!」


……やっちゃるか


俺はモンセラートを抜き、机に突き立てる。


「じゃっかあしいい!」


何人かの文官が椅子から転げ落ちる。


「がたがた言わんとさっさとはじめんかい」

「はっつ、はひい……今月の盗賊被害から…」


侯爵領は広い分、意外に盗賊被害が多い、特に僻地などには手が回っていない状況だ。


「多いな…」

「ええ、最近は特に被害が増えています」

「兵士とか派遣できないのか?」

「そうしたいのは山々ですが…どうしても予算も人数も足りないんですよ。兵が行っても現れないこともありますし」

「……あっ!」

「どうなさいました?」

「いるじゃん!うちにうってつけのが」

「……ああ、いましたね、うってつけのが」


と、いうわけで…


「これは、お前にしかできないことなんだ!」

「ええ!私たちはあなたにおすがりするほかないのです」

「わっはっははは、俺に任せろ!」


そう、安定のモンタグート。

俺たちはバスコにお金と食べ物とベルイジスを渡して旅立たせた。


しばらく帰ってこないことを願いながら…



「しかし、ひどいな…」

「ええ、財務は悪化する一方です」

「そうじゃない、ガルシア家の帳簿のつけ方だ」

「帳簿ですか?」

「ああ、小麦いくら、野菜いくら、備品いくらしか書いてないじゃないか」

「だめなんですか?」

「一キロ当たりの値段って、毎日変わるだろ?単価が違うものを一緒くたにしたって意味がない。それに分類が雑すぎる、とりあえず商人の言い値をメモしただけじゃないか」

「しかし、ガルシア侯爵領の支出、収入をすべてまとめるとなると…」

「ああ、俺たちには無理だと思う。そこでだ、金勘定が得意な奴を呼ぼう」

「…メイディランド家ですね」

「うん、というわけで手紙を出しておいてよ」

「ご自分ではされないのですか?」

「俺は次にやることがあるしね」

「?」


「じゃじゃじゃーん!来月、博物館をオープンする!」

「なるほど、囚人を実験台に新薬や法術の研究を行うのですね」

「せんて!何その怖い施設」

「昔のガルシア領にそういう施設があったと言われています。当時は囚人ではなく、捕虜を使ったとか」


戦争の負の遺産ってやつだな。


「博物館っていうのは、珍しいコレクションを展示して多くの人に見てもらうっていう施設でさ。ガルシア家って骨董品とかは売るほどあるじゃん、売れそうにないけど」


そう、ガルシア家にはガラクタと紙一重のコレクションが充実している。

以前アドナイアスが言っていた、固い木製の矢やこん棒、魔物の骨や牙を用いた剣など対ガルシア軍用武器、敵将軍の兜、伝説があるだけに売るに売れない名刀や槍などがふんだんに眠っている。

実用もできない、売れない、侯爵家の倉庫は管理する人間もおらず、ほとんどごみ屋敷になっている。


「なるほど、で、どこに展示するのですか?」

「迎賓館、あそこ潰そ」

「何言ってるんですか?無理に決まっているでしょう」

「いいか、アドナイアス、迎賓館なんてもういらんのじゃ。客なんて滅多に来ないし、街には綺麗なホテルがいっぱいあるし、維持費がバカ高い。あんなもん、もういらんのじゃ」


アドナイアスは杖で床をこつこつと叩き、しばらく考えていた。


「ミヒャエル様、貴族特に侯爵家には対面というものがあります。迎賓館が無くなるということはどういうことかお分かりですか?」

「アドナイアス、だからこそ今ガルシア家が率先してやらなきゃいけないんだ。モンタグートもサルファパレードも武門はどこも財政が圧迫されている。その解決方法は民ではなく俺たちが決着をつけないといけないんだ」

「それがどのような結果になるか私にはわかりませんよ」

「なあ、俺達は武門だ。俺達が恐れるのは負けることと、舐められること、ビビることだろ」

「言うようになりましたね」

「まあ、この三か月ガルシア家についてみっちり勉強したしな。いいところも悪いところも見つけたよ」


アドナイアスや文官の説得を夜まで続け、迎賓館の別館を武器の博物館にすることが決定した。

一巡できるように一部改装し、そのほかの内装はほとんどそのまま、食堂や厨房、洗濯室を取り壊して学芸員や警備の詰所に改造した。


「来月開館するとして、問題は学芸員兼ガイドか…」


歴史や武器に詳しいアドナイアスは絶対無理だし、いちいち教える時間もない。


「武器に詳しいバスコに相談…って俺があいつを追い払ったんだった」


スカウトキャラバンでもする?マジックミラー張って…いやいやいや、いかんだろ。

あ、メイドさんだかわいいな。


「ミヒャエル様」

「おう、どした?」

「マリア様がいらっしゃいました」

「え?オラニエの方?」

「オラニエ家の方です」


「ミイイイヒャエルサマアアア!」


布に包んだシャベル、フィダルゴブラッキーを抱えた美少女マリアが体当たり、いや胸に飛び込んできた。柄の部分が俺の鎖骨に当たって地味に痛い。


「ごばあっ!」

「あら、ごめんなさい。もうわたしったらお馬鹿さん☆」

「馬鹿だなあ」


本当に馬鹿だ。このモグラ娘は。


「何しに来たの?」

「いやですわ、許婚をたずねるのに理由がありまして?」

「俺達ってまだ、許婚なの?」

「わたしが決めましたの…、おいやかしら?」


正直どっちでもいいんだけど。

お金持ってるし、かわいいし、穴掘れるし…穴?


「ミヒャエル様?」

「ん?いや、マリアにやってもらいたいことがあるんだけど」

「え?ええ、なんなりと」


俺はマリアを抱えて、1階にある物置に走った。


「ミヒャエル様…なにをなさいますの?」

「へっへっへ、とっても良いことだよー」

「こっ、これは…」

「どうだ?誰にも見せたことないんだ」

「すごいですぅ。こんな大きくって、しっかりしていて…」


…俺が見せたのは俺が掘った抜け穴。

まだ、貫通していないものの、長さは3メートルほどある。

将来的には穴の一部を大きくして隠れ家を作る予定だ。


「マリアにこの穴を完成させてほしいんだ」

「はい!マリア頑張ります!」


ジャッコ、ジャッコ、ジャッコ…


俺は一人穴を掘り続けるマリアを置いて物置を後にした。

気がつけばバスコもマリアもいない。


…こんなことしてたから俺って友達いなかったのかな?


「おや、ミヒャエル様。こんなところで何を?」

「アッちゃん!」

「なにがアッちゃんですか。暇なら魔法の練習でもしましょう」

「えっ、いや。今日は剣でもやろうかなって…」

「駄目です。そろそろエボニーウィッチもお返ししなくてはいけませんし、あれがなければ魔法が使えないなんてみっともないです」


ゴーシェンロード家の家宝、緑刃エボニーウィッチ。風の精霊魔法を発生させる加護を持つ短刀。精霊魔法なんて一切使えない俺でも中級の精霊魔法、風霊駁撃エアリアルショットを発生できる。

アドナイアスが使えば上級の精霊魔法、風霊奔流エアリアルストリームをノーチャージで発生させれるらしい。


「…わかったよ」


エーテルガードなんかの初級魔法は使えるようになったものの、精霊魔法は一向に使えるようにならない。ミヒャエルはもともと風霊撃エアリエルアローは使えていたようだから、俺も使えてしかるべきなのだが何の手ごたえもない。


「まず、精霊を感じる所から始めましょう」

「精霊の残滓を感じ、精霊の息吹を感じ、精霊の力を感じます」

「うん…めっちゃ感じる」

「嘘おっしゃい」

「うん、全く感じない」

「…こればっかりは、うまい下手ではありませんからね。私もどうしようもありません」


なんも感じない。

眼をつぶっても、耳をふさいでも何をしても。


精霊ってなんですかね?

そんなのがいてたまるかって感じですけど。

まあ、緑刃エボニーウィッチを使えば魔法はでるからいるんだろうけど。


「こうなったら、荒療治です」


アドナイアスは杖を取り出した。


「精霊召喚!」


なにも起こらない。


「なんかした?」

「風の精霊を一時的に集めました、これでどんなボンクラでも感じるはずです」

「いや、なんも感じないけどな」


……バーカ


「おい、いまなんつった?」

「はい?」

「とぼけんなよ」


……マヌケ


「おい、いい加減にしろよ」

「だから何を言ってるんですか?」

「てめ、ふざけんじゃねねぞ!」


俺が殴りかかろうとしたとき。


「いい加減になさいよ!」


目の前に透けた緑の女が現れた。

これって…


「あっ、精霊」

「私も大精霊になってまだ日が浅いけどこんな鈍ちんは初めてだわよ!」


大精霊は勝手に怒っている。


「だっ、大精霊!」

「アドナイアス知ってるの?」

「我々がつかう精霊魔法は小さな精霊に魔力を与えて自然現象以上の力を発揮しますが、大精霊はそれ自身が膨大な魔力を持ち、力を振うことができるのです」

「そうよ、私はフミカ。風の精霊女王グレートマザの第12番目の子にして、チャルチックを管理する風の大精霊よ」

「…で、アドナイアスこれで精霊魔法が使えるんだな?」

「ちょっと無視しないでよ。大体人間ごときが大精霊を使役しようだなんて100年早いのよっ!」

「じゃあ、なんで来たんだ?アドナイアスの魔法に呼ばれたって訳じゃないんだろ?」

「ちょっとガルシア侯爵にお願いがあったのよ。目の前にいるのに、まったく気が付かないんだもの。馬鹿かと思ったわ」

「うるせえよ、お願いしてんのにその態度はなんだ」


この女なんでこうも偉そうなんだ。


「…悪かったわよ、あなたにお願いがあるの」

「なんだ、聞いてやらんこともないぞ?」

「…調子に乗るとこの城ごとぶっ壊すわよ」

「なんだ、やんのか?コラ」


アドナイアスさんやっておしまい!


「ミッ、ミヒャエル様だめです!精霊を怒らせたら領地が滅びます!」

「むぅ…。わかった、聞いてやるからおとなしくしろ」


第精霊フミカはフンッを鼻を鳴らした。


「…まあいいわ。お願いっていうのはね」


手から何かを取り出した。

緑色の木の枝?


「エルフの里を救って欲しいの」

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