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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第一部 帝都動乱編
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モンタグート無双じゃけえ

「マリア嬢、この上か?」


バスコは宝刀ジュアニータを抜き放っている。

恐らく、帝国で一番血を吸った剣である。

モンセラートより50cmは長く、重さは8キロもある。

怪しい光がマリアの顔を照らす。


「ええ、この真上に2階へと続く階段があります」


マリアがフィダルゴブラッキーを抱えて震えている。

もしも、あの場所にいたのがガルシア家ではなく、モンタグート家だったら、マリア、サイドシェリー、グレンドーラの全員は…

マリアは意図せずに放たれたバスコの殺気に恐怖していた。


「皆様、お下がりください」


マリアは魔力を併用する加護、魔力発破エーテルブトゥームを天井に放つ。

分厚い岩盤をも砕く爆風がブルーイュ邸の床を吹き飛ばす。

マリアは加護のおかげで平然としているが、一同はしばらく三半規管がしびれ、まともに立てなくなった。


「わはははは、一番槍はもらったぞ!」


いち早く復活したバスコは抜身を抱えて階段を一気に駆け上がる。

その後ろ姿を見てアドナイアスはため息をつく。

予想がついたこととはいえ…


「マリア殿、背中は任せます」

「ええ」


爆発音で近寄ってきた兵士をアドナイアスは風の魔術で吹き飛ばす。

マリアはアドナイアスに近づいた兵士をフィダルゴブラッキーで叩き潰す。


「バスコ殿にまかせると人質が危ない、ここはグレンドーラと近衛に食い止めさせましょう」

「はいっ!全員展開!退路を維持なさい!空気創造コンプレッサー


マリアが生み出した空気の塊が弾けた。フィダルゴブラッキーで散らばった岩石を飛ばしながら、マリアとアドナイアスは階段を駆け上がった。


氷狼撃ハティアロー!」

アドナイアスの魔法がドアを破った。

「リベルトっ、無事ですか!」


部屋には縛られたサイドシェリー(中身はリベルト)、返り血で真っ赤になったバスコ。そして、レイピアと短剣を構えた女性剣士と天井からぶら下がった黒覆面がバスコを相手に戦っていた。


「モンタグート様!」

「おう、アドナイアス殿。無事か?」

「ええ」

「こいつらは俺が引き受けた、お前らはこの嬢ちゃんを連れてさっさと行け」


マリアはすでにサイドシェリーを抱えている。


「わかりました。ご武運を」

「おう、穴は閉じてよいからな」


どこから帰るつもりなんだあの人は…


「本当によろしいのですか?」

「構いません、待ってたとしても、意地でも来ませんよ」


最後の兵が穴に飛び込むとマリアは再度魔力発破エーテルブトゥームで穴ごと吹っ飛ばす。



「…さて、邪魔者はいないな」


バスコはジュアニータを振り、刀が纏った血を暗殺者の顔めがけて飛ばす。

血を浴びた暗殺者が一瞬ひるむ。

戻す刀の峰でエルゼ・ポールセンの肩を狙う。


「はあっっっ!」


エルゼ・ポールセンは短刀で受け流し、レイピアで膝を狙う。

同時に、暗殺者は天井からバスコの後頭部を目がけて短剣を突きだす。


「むぅぅぅぅぅん!」


牡牛のような声を上げ、バスコの体はレイピアと短刀を弾いた。

モンタグート家が持つ加護、瞬時硬化である。

一瞬だけ体を硬化させ刀剣を弾く、使いどころが難しいもののバスコはこの加護で失敗したことがなかった。

先代モンタグート侯爵が死んだのも瞬時硬化に失敗したからだと言われている…


「はっ!笑止!」


エルゼ・ポールセンのレイピアを踏みつけ、暗殺者の右腕を切り上げる。


「ははは、北方剣術とはこの程度か!我がモンタグートの技が帝都を席巻する日も近いな!」

「剣が通らない相手なんて想定していませんからね…」


エルゼ・ポールセンはレイピアを手放し、死んだ兵士の剣を拾い上げる。


「こらこら、剣を捨てるな。ああずいぶん良い剣だと思ったらアルヴァスシュープリームじゃないか。お主のか?」

「レデューテ様が私に下さったものだ…」

「レデューテ?あの男女が伝家の宝刀をお主に託すとは思えないが…」

「だまれっ!」


エルゼ・ポールセンはひたすらに突きを繰り出し、暗殺者が天井を飛び回って的を絞らせない。

バスコは分厚い大刀を軽々と振り回しすべてを受けきった。

単調になってくると、わざと加護で受け、相手を挑発する。


エルゼ・ポールセンは北方剣術の奥義ラパロマを放った。

腰を極限まで低くし、頭上を短剣で守りながらレイピアで相手の下腹部を突くという技である。

一度刺さったレイピアを体ごと押し込み、短剣で顔を滅多刺しにするという技につなげるのだが、エルゼ・ポールセンはこの残酷な連携を得意としていた。

いや、彼女が殺めた相手のほとんどがこの技で死んでいた。


「ほう、ラパロマか。最近は使う貴族も少ないがな」


バスコは剣を低く構える。


「南方剣術奥義、東雲一閃しののめいっせん


分厚く切れ味の鋭い剣で地面ごと、相手を切り上げる技。

鍛え上げられた筋力とバスコの加護、剣閃飛来が加われば、最早剣術の域を超えた破壊技だ。


「続いて奥義、落葉らくよう


切り上げた剣を返し、再度切り下げる。


一陣の風が部屋を通る。

バスコが手に持った剣は微動だにしない。


残心を残し、ジュアニータを鞘に納める。


「ああああっ……」


エルゼ・ポールセンの右腕がずれ、天井の暗殺者が床に落ちる。


「卑怯もんが、お前らのやり口はよくわかったわ」


残酷な奥義で相手を緊張させ、天井の暗殺者が首を落とす。

無敗の剣士エルゼ・ポールセンの必勝法。

そもそも、手練れの剣士が放つ奥義はそれだけで致命傷になりえるものである。

視界を広げる加護、八紋武眼はちもんぶがんを持っていなければバスコといえども危うかったかもしれない。


「なっ、私は騎士!屋敷を守るのが私の使命!襲撃者に何も言われる…」

「黙れ、お前は剣を持つにふさわしくない」


バスコはエルゼ・ポールセンの短剣を持つ腕を捻り、そのまま砕き折った。

剣を侮辱するものの血でこれ以上剣を汚すことをためらったためである。


「があああっっっっ!」

「この暗殺者の小娘は俺が貰い受けるぞ」


うめき声をあげて倒れるエルゼ・ポールセンに声をかける。


「それから、アルヴァスシュープリームもな。俺の思い人への土産にする」


バスコ・モンタグートは暗殺者を抱えると、堂々と屋敷を出た。

ぎょっとして、モンタグートを見る者もいるが、血まみれの大男と目が合うと多くのものが腰を抜かし、あるものは泡を吹いて気を失った。


東通りの血濡れ武者。そのうわさがミヒャエルに伝わったのはそれから3日後のことである。

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