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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第一部 帝都動乱編
16/135

ザルの身バレ対策じゃけえ

「なんでばれが、おれるの?」

アドナイアスは咳払いをした。

「ミヒャエル様落ち着いてください」


「ごほん」

俺は世界一恥ずかしい名前を持つペガサスの首を軽くたたいた。

「なぜ、ばれるんだ?」


「帝国軍を追い返した後、ミヒャエル様宛に決闘状が届きました。失礼ながらタクミ殿の腕では相手にすらなりません」

「相手は?」

「ボトゥザリス・リドルフィ、この間来たコシモ・リドルフィの弟です」

「なんで、あいつの弟が関わっているんだ?」


「決闘の条件はジャンジ・オノ・メイディランドの解放です」

なんかあいつ、メイディランドにこだわるよな。なんかあんのか?

「メイディランド家は両替や為替をつかさどる一族です。まあ、余計な金だけは持っていますから、リドルフィ家がメイディランド家から金を借りているとかでしょうな」

あいつとことんクズだな。


「決闘を避ける方法とかないの?」

「和解するとか、代理を出すとか、ほかの家なら何とかなったんですけどね。なまじ、ミヒャエル様の武名が知られているだけに回避するのは不自然です」

まあ、昨日オーバーキルしたばっかりだしな。


「はあ、どうしよう」

「まあ、昨日のようにしらばっくれて、ごり押しで通すしかないでしょう。できるだけ、早い内にタクミ殿の体と王子の体を元に戻す。それしかないでしょうな」


「もう、いや」

「昨日の勢いはどうされました。腰の剣は飾りですか?ほら、外にでますよ」


門が開いた。表には花や旗を持った人たちが歓声を上げている。俺が先頭に立って、手を振るとその方向から女性たちの黄色い声が上がる。家々の2階からは花弁や細かく切った色紙が降り注ぐ。


「ミヒャエル様!!」

小さな女の子が俺に花束を持って、列の前に出た。

「こらっ!どきなさい」

ガルシア家の兵士が抱きかかえて、列の外側に運び出す。


「おい、構わんから連れてこい」

「しかし…」

ミヒャエルのイメージが崩れるってか?そんなもん紙の楯だろ。


「その花くれるんだろ?」

女の子は背伸びして花を差し出した。

「ありがとう。名前は?」

「エ、エッ、エ…エ、リ、リリリリリ、カですっ」

「ありがとうエリカ」

エリカは真っ赤になって俯いた。まあ、顔はチートだしな。


「ミヒャエル様ー!」

「私のももらってください!」

大量のお姉さんが、俺の方へ駆け寄ってくる。


まず、やっちまったか?

「アドナイアス」

「はっ!エーテルガード2式」


俺とお姉さんの間に見えない壁ができる。

「ちょっと何よこれ」

「ミヒャエル様に近づけないー」


「いまですっ」

おお、なんか某軍師っぽいな。

「ミヒャエル様?」

「…ああ。急ごう」


俺達がゼカリア門の前に到着すると、入り口を遮るようにコシモ・リドルフィ率いる帝国兵が並んでいた。

「ご存知かとは思いますが、我が弟、ボトゥザリス・リドルフィが昨晩ガルシア・デ・トールバルド・ミヒャエル様に決闘を申し入れました」

コシモ・リドルフィの隣にいた大男が肩に背負った2丁の戦斧を揺する。あいつが弟か。

「知ってる、後で聞いてやるからどけ」

俺はペガサスの足を進めた。

「そうは参りません。いつ、どこで決闘をお受けいただけるかを聞くまではここから動きませぬ」


俺はモンセラートを抜いた。

「殺すぞ?」

「どうぞ。しかし、帝都内で帝国騎士団の人間を殺めたとあってはガルシア家の汚点になるでしょうな」

こいつは完全に俺達をなめている。昨日あの後なにかあったのか?


「ミヒャエル様は決闘を受けないとは言ってはおらぬ。決闘の方法も条件も伝えぬままに、日時場所だけ決めろとは恥知らずめ!なんなら、今ここでわしが代理として決着をつけても良いのだぞ?」

ジルバンテがリドルフィ兄弟から槍の届く範囲に近づく。

「わっ、我らが望むのはミヒャエル殿との決着で、ジャンジ・オノ・メイディランドをお返しいただくこと。決闘の仔細は追って知らせる!」

帝国騎士団は門の中に入っていった。


「なんだったんだ、あいつら…」

「どうも様子がおかしいですね。ミヒャエル様の正体がバレていないと仮定すると、ミヒャエル様に決闘を申し込むなんて愚かな行為や、ガルシア侯爵軍を挑発する行為などあえて悪手ばかり狙っている気がします」

メイディランドにこだわるのもそうだしな。もしも、メイディランドが殺されても恨まれるのはガルシア家だろうに。

「そういやさ、リベルトの事なんだけど…。あいつって男なのか?」

「何をおっしゃっているのですか?」

「いや、あいつの首に剣を向けたとき、てっきり女だと思ったんだ。綺麗な顔をしていたから間違えたのかと思ったんだけど、あいつを拷問するときも頭では男だって分かってたんだけど…」

「違和感がぬぐえなかったと?」

「ああ、むしろ確信に変わった感じがした」

アドナイアスは手に持った杖の先をいじった。

「ガルバリウスは何も言わなかったのですな?」

「ああ、足の治療もしたはずだから気が付かないはずはない」


「考えられる可能性は3つあります。1つ、ミヒャエル様の勘違い。2つ、ガルバリウスが気が付かなかった、もしくは、気が付いていて黙っていた。3つ、魂が入れ替わっていた」

「まあ、1、2があったとして、3ってかなり難しいんじゃないの?」


お互いに重複した加護を持っているか、加護を持っていないとできないんだよな。

「マリア様には1つ年下の妹君がいらっしゃいます。兄妹なら同じ加護を持っている可能性が高いですし、そうなると彼女がリベルト様と入れ替わった可能性が出てきました」

「まじか、でも、そうするとマリアが連れ戻しに来たのも説明がつくな」

反逆者のバカ兄貴を連れ戻すのではなく、入れ替わった妹を助けに来たと考えれば納得できる。


でも、リベルトってどうなったんだ?

「その妹ってなんて名前なんだ?」


アドナイアスは「あっ、そうか」と言って手を叩いた。

「旧姓はサイドシェリー・デ・フェ・オラニエ、現在はメイディランド家に嫁いでサイドシェリー・オノ・メイディランドと名乗っています」


「…まぢ?」

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