人生は困難の塊じゃろ?
一話ごとの文量は通勤中に読めるくらいがいいなーと思っていたので、ちょっと短いかと思いますが、こらえてつかあさい。
アイゼンより☆
「ガルシア家最強のジルバンテ将軍とお手合わせができるなんて光栄ですわ」
マリアは優雅に礼をすると愛シャベルこと、フィダルゴブラッキーを構えた。
「オラニエ家には代々抜け穴掘りに長けた部隊がいると聞いていたが、まさか、マリア殿がその長だったとは」
「ジルバンテ、俺の元婚約者だからと言って遠慮はいらん。ぶちのめせ」
「はっ!」
先手必勝とジルバンテは槍で床に落ちた破片をマリアに飛ばした。
「無駄ですっ」
破片はマリアの顔に当たるが、逆に砕けた。…マリア、恐ろしい子。
「…加護か」
「ええ、土石消滅の加護がついています。土系統の魔法も私にはききません」
無効じゃなくて、消滅か。
「しかし、鉄器無効の加護を持つガルシア家の相手ではありませんな」
ジルバンテの振う槍とマリアのシャベルがぶつかるたびにものすごい音を立てて床が揺れる。ただ、打ち合うたびにマリアは不利になってゆくのがわかる。しかし、力や有利な加護を持っていても、戦闘に関しては素人、詰将棋のように着実に有効打を積み上げてゆくジルバンテには敵わない。
「ふむ、これは下級兵士では相手になりませんな」
ジルバンテもマリアの攻撃が当たっても平然としている。ジルバンテが気にしているのは、武器破壊と俺たちにとばっちりが来ること。自分に当たった分はダメージにならないから頭でも顔でも平気な顔をしている。
「ならば、肉弾戦に持ち込むまでです」
マリアはフィダルゴブラッキーを防御に、攻撃には蹴りを使い分けている。
「ほう、さすがですな」
ジルバンテも無抵抗というわけにはいかず、腕で防御している。
「チートすぎるだろ」
俺の隣まで這いよったアドナイアスが説明する。
「それがガルシア家の力なのですよ。鉄器が効かない無敵の軍団。昔は対ガルシア家専用の木製、骨製武器が出回ったそうですが、鉄の武器とじゃ相手になりませんでした」
だろうな、骨製武器なんて原始人の持ち物だもんな。
「中には、それなりに完成度の高いものもあったのですよ。帰ったらお見せしましょう」
「へーっ、面白そうだな」
「やあっ!」
ジルバンテの蹴りでマリアが壁に叩きつけられた。気絶したマリアを氷漬けにすると俺たちはがれきの上に腰を下ろした。
「勝負あったな。ところで、ガルバリウスは?」
「オラニエ家の三男を追っています」
治療ができないのが痛いな。
「グレンドーラは30人くらいいるって言ってたぞ」
「大丈夫ですよ。こちらも100人向かっています。全員が鉄器無効と二重存在の加護持ちですから、すぐにケリがつくでしょう」
「二重存在って?」
「ドッペルゲンガーを操作できる加護です」
アドナイアスが杖で体を支えながら、俺の手を取って立たせた。
「単純に2倍の兵力になりますが、ダメージは本体に残りますから使いどころが難しい加護ではありますね」
「じゃあ、実質200人の鉄の武器が通用しない軍隊が追ってるってことか?」
「ええ、その冠詞として“精強な”がつきますけどね」
余裕じゃんか。
「じゃあいいや、ちょっと休憩しよ。もー眠たいし」
「そんな暇はありませんよ」
アドナイアスは俺の腕を土魔法で固めると部屋着を脱がせた。
「時間です、城に向かいますよ」
「えーー」
「えーー、じゃありません。腕もとりあえず固めておきましたから痛みはないでしょう。後で眠気覚ましを持ってこさせますよ」
「なにそれ、おいしいの?」
「軍用ですから味に期待しないでください」
軍用眠気覚ましってものすごい効きそうだな。
「マリアは?」
「シャベルを取り上げて縛り上げておきます。鉄製の檻に入れておけば大丈夫でしょう」
「あーーっもう、オラニエ家って脳筋ばっかりかよ」
「昔は帝国四家としてガルシア家にも並ぶ武勇の持ち主だったんですけどね」
「四家?」
「火、水、風、土の加護を持つ家柄です。オラニエ家は土の加護を持ち、当主には山をも動かす力があるとされてきました」
「すごいな、うちはその四家には入っていないの?」
「ガルシア家は三大太守の内の一家です」
「ややこしいな」
「ミヒャエル様は今からそのややこしい貴族の仲間入りをするのです」
「まあ、そうだけど」
「ほら、表に剛力ち〇ぽ丸を待たせていますから」
その名前で呼ぶんだな。可哀そうに、絶対一番先に名前を変えてやる。その次はジルバンテの槍で。
「その名前可哀そうじゃん」
「ご自分でおつけになったのでしょう」
「まあ、そうだけど」
いや、正確には俺じゃないんだけどね。
表にでると、俺の愛ペガサスが鞍をつけて待っていた。空はうっすら赤みがかかり、鳥の鳴き声が遠くから聞こえた。そういや、漫画とかで朝チュンって言葉があるけど。俺もネロリの君に夜這いかけられて朝チュンしたんだな。ロマンチックでもなんでもないけど。
「あっ」
アドナイアスは俺の目の前で立ち止まった。
「どした?」
「一番大事なことを忘れていました」
「なに?」
「多分、あなたが偽物だってばれます」
俺は剛力ち〇ぽ丸に抱き着いた。もうやだ。




