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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第一部 帝都動乱編
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ガルシア家の仁義なき戦いじゃけえ

「ガルバリウス、黒幕が分かったって言ったな」

「はい、帝国騎士団の副団長が関わっています。まあ、少なくともリベルトは彼にそそのかされたと言っていますな」

「オラニエ家のバカに内乱を起こさせ、自分で火を消す。まあ、立証は無理でしょう」

マッチポンプじゃねえか。

「立証は無理?」

「無理ですね。もともと、自分が出世するためのやらせです。台本を残すほど馬鹿じゃありません」

リベルトをかばうのも限界か。


「ジルバンテ、アドナイアス、ガルバリウス。俺はどうしたらいい」


俺は両手を挙げた。いくつか考えていることはあるが、どれも後々の事を考えると判断がつかない。

「あの男を差し出しましょう。治療のために監禁していたと言えば良いでしょう」

アドナイアスが手を挙げた。

「オラニエ家は?」

「見捨てるしかないでしょう。領地も財産も取り上げられるでしょうし、そうなると縁談のうまみもありません」

「ネロリの君は?」

「殺されはしないでしょう。あの美貌ならば年老いた男爵家の後添えくらいにはなるのでは?」

「ちょっと冷たすぎやしないか?」

「帝国に弓を引くというのはそういうことです」

明智光秀の娘さんの事を思い出した。ガラシャさんだっけ?


外から聞こえる声が大きくなった。

「そのミヒャエル様はどうなさりたいのですか?」

ジルバンテが手を挙げた。

「俺は、なんかむかつくんだ」

「はい?」


俺の中の言葉にできない感情が染み出てくる。

「確かにリベルトは馬鹿だろう。馬鹿にもほどがある」

平和なときの三男なんて冷や飯食いもいいところだろう。腕に覚えのある男がちょっとした成り上がりを目指したって不思議じゃない。馬鹿だけど。

「だけど、そういう馬鹿を小ずるいやつが踏み台にして、出世するなんて許せないことないか?なあ、ジルバンテ」

ジルバンテは苦い顔でうなずいた。

「まあ、許しがたいことではありますな」

「だろ。ガルバリウス、表にいる連中は最初から事情を知ってるんだろう」

じゃなかったら、こんなに早く侯爵邸に来るはずがない。リベルトの死体がなかったから家にいると思ったんだろう。

「まあ、そうでしょうな」


侯爵邸の窓に石が投げられた。

「逆賊を渡せ!」

「お前たちも反逆者になるぞ!」

アドナイアスは俺の持っていたワインを一息であおった。

「チッ、程度の低い連中ばかり集まりやがって」


「アドナイアスお前は俺を支えるって言ったよな」

「ええ、先代ガルシア公に誓って」

桃色ローブが一瞬で黒に染まった。


「ジルバンテは剣に誓って俺に仕えるって言ったよな」

「はい、誓いは今だ我が魂にあります」

ジルバンテは槍の石突で床を突いた。


「ガルバリウスはどうだ?」

「わしと妻は3代にわたって侯爵家に仕えてきました。侯爵家はわしの家族、魂、誇りです」

ガルバリウスはどこからか例の矢筒を取り出した。…ごめん、それはいいわ。


「そうか…」

俺は手で顔を抱えて息を吐いた。でも、もう腹は決まっている。

「俺達は謀反人になってしまうかもしれない」

「構いませんよ。あのサイコサドが王子な時点で詰みかけていたんですから」


俺はメイドさんが持ってきた綺麗な鎧を着た。

「全員が戦の準備を整えています。500くらいですが、帝国騎士団くらいであれば片手で済むでしょう」

アドナイアスは俺に剣を渡した。

「ガルシア家に伝わる宝剣“モンセラート”です。実際に使われるのは30年ぶりですがこの輝きは変わらぬままです」

片刃の分厚いサーベルは振るだけで、周辺の空気が張りつめてゆくのを感じた。


中庭では兵士たちが戦装束を整えて待っていた。

「ミヒャエル様ご命令を」

ジルバンテは俺の前に膝をついた。

「ジルバンテごめんな。その、初陣だって言うのに…ビーチク丸で戦わせちゃって」

「はっはっは。ミヒャエル様、そんなことを気にされていたのですか。いや、王子では考えられないこと

ばかり起きますな」

ジルバンテは立ち上がって俺の肩を叩いた。


俺は中庭にいる兵士たちに声をかけた。

「ガルシア侯爵軍。これより俺たちは国賊になってしまうかもしれない」

兵士たちは静まり返った。

「けれども俺の国は、俺たちの国は不正義を見て見ぬふりはできない。ガルシア家を舐めた奴は潰す」

中庭に歓声が沸いた。兵士たちは手に持った槍で地面を突き、窓ガラスがカタカタ揺れた。



俺はモンセラートを抜いた。

「……しばいちゃるけえの」

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