警視庁刑事課
その時、後ろで全ての話を聞いていた竹下が、刑事達の前に歩いて行くと、
「この三件の事件の共通点が、全ての現場から検出された指紋。それが一致したと言う事です。つまり…… 犯人が同じなのですよ」
三件の事件の現場写真を指差しながらそう叫んでいた。
その話を聞いていた管理官が、いきなり立ち上がると、
「いいかお前らっ! 竹下鑑識員が衝きとめた証拠だ。俺達はそれを元に、この犯人を必ず逮捕する。その為に、これから各班に別れて捜査を開始する」
目の前の刑事達の士気を高める様にそう叫んだ。そして、
「大島班は、公園で殺された事件を担当しろ。先ずは目撃者が居ないかを聞き込みして、とにかく物的証拠を探し出せ。
次に大林班だが、アパートの近隣からの聞き込み捜査を開始しろ。
昼間の犯行だから、必ず声を聴いた者達が居る筈だ。それに、怪しい男がうろついていなかったか、もう一度調べ直すんだ。
もう一つの事件は、桐谷班が引き続き捜査を始めろ。クラブの同僚達にも、その後に怪しい男が店に来ていないかなどを聞きこめ。
最後に、指紋から前科が無いか? そして、靴の付着物などからの追尾を徹底してやれ。それが『松野幸三』警部補の班の仕事だ」
管理官の叫び声に、部屋に居た刑事達全員が、大きな声で返事をしていたのである。
こうして、連続婦女暴行殺人事件としての捜査が、警視庁から開始したのである。
各班の班長達は、自分達の班でこの事件を解決させようと躍起になった。
「行くぞ。俺達が初めの事件を担当していたんだ。俺達が容疑者を捕まえないと、みんなに笑われてしまうからな」
桐谷は、後ろを歩く平塚にそう言った。その言葉に、
「はい。そうですね」
と、元気よく返事をする平塚だったのだ。
一方、大林の方はと言うと、
「このヤマは…… 犯人の指紋が解っているとなれば、解決は早くなるな。他の事件もあるし、早めの逮捕にしたいものじゃな」
腕組みをして思考錯誤しながら、後ろから歩いてきた相沢にそう言った、
そして、先日の公園での事件を担当していた大島は、
「田辺、この警視庁に来ての初仕事だ。お前の歓迎祝いに、手柄を取るぞ。わかったな…… 返事はッ!」
そう叫ぶと、
「は、はいッ!」
強面の顔を更に怖そうにした大島の怒鳴り声に、身体を縮ませて返事をした田辺だったのだ。
そして、最後の班である松野は、黙って部屋を出て行ったのである。いや…… 一言だけ、
「容疑者は、死を持って償うべきだ。それだけ、人の命は重いからな」
そう呟いていた。
警視庁の玄関口からは、走り出す数台のパトカーのエンジン音が響いていた。




