若手の行動(3)
二人が調べに行った所轄の警察署に、三人のチンピラを連行した相沢と田辺。それを見た所轄の警官が、
「お前達。又何か悪さをやったのか?」
そう叫んでいた。その言葉を聞いた相沢が、
「この三人の事を知っているのですか?」
と、叫んだ警官に尋ねると、
「こいつ等は、昔っから悪さをする連中でして、学生の時なんかは暴走族に入っていたんですよ」
そう言った。すると、
「その暴走族には、女性のチームもありましたか?」
と田辺か聞くと、
「ありましたよ。柴田って女がリーダーをやっていましたな。それはおっかない女でして、我々も手を焼いていました」
険しい表情を見せた警官は、そう言ってチンピラ三人の横まで来ると、
「その後も、覚醒剤やら大麻やら、色んな悪事を働いていましたね」
そう言ったのである。それを聞いて、
「ここの取調室を、お借りしてもよろしいでしょうか?」
そう頼み込む様に言った相沢に、
「え、ああ、いいですよ。狭い部屋ですが、存分に使って下さい」
そう言って振り返った警官は、手で合図をしながら取調室まで案内した。その後ろを、チンピラを引き連れて付いて行く相沢と田辺だった。
取り調べは、二手に別れて行われた。
リーダー格の男は、相沢が担当した。そして、田辺が残りの二人を担当する事となった。
「ここに入りなさい」
相沢が、男にそう言うと、
「お、俺達は、こっちの部屋に?」
と別の男が言った。その男の顔を見ながら、田辺が微笑んで頷くと、もう一人残った男が、自分を指差して田辺を見ていた。その男にも、小さく頷いた後、顎で一緒に入る様に指示をした田辺だった。
相沢が取り調べをする部屋では、
「どうぞ、ここに座って」
と、優しい口調で話す相沢の一言から始まった。
「君がどうしてここに連れて来られたのか、解りますか?」
そう尋ねる相沢に、さっきの格闘で全く敵わないと悟ったチンピラは、恐る恐る答えた。
「し、柴田の事でしょうか?」
「そうです。最近会いましたか?」
チンピラの名前も聞く事無く、間髪入れず問い掛ける相沢に、
「最近って、最後に会ったのは一か月前かな。いや、もう少し前だったかもしれないな」
記憶を辿る様に、こめかみに指を当てながらそう言ったチンピラだった。すると、
「その時、他に男が居ませんでしたか? あなたが知っている男」
そう尋ねると、相沢の言葉が終わる前に、
「浩一郎、の事でしょうか?」
とチンピラが言った。
浩一郎とは、ここの警察署の資料室で調べた時に、柴田と居た人物だった。既に逮捕されていた男だ。
「あなたは、その浩一郎と言う男がやっていた薬の密売に、関与していたのですか?」
冷静な眼つきでそう尋ねる相沢に、
「と、とんでもない。そんな事、俺は知りませんよ。本当ですよ。信じて下さいよ」
と、慌てて否定するチンピラだったのだ。すると、
「解りました。解りましたから、そんなに何度も言わなくていいですよ。我々は、柴田久美子の事が知りたいだけですから」
と、笑いながら言った相沢だった。それを聞いて、大きく溜息を吐いたチンピラは、安心したのか、肩の力が抜けた様に下を向いた。
一方、もう一つの部屋では、
「……」
椅子に座って、微笑みながら二人のチンピラの方を見ている田辺だった。そんな状況に、一人の男が田辺に向かって言った。
「な、何もしないのでしょうか?」
そこに居た二人の男は、さっきの田辺に殺されるかと思う程の恐怖心を与えられた事で、完全に田辺に怯えていた。そんな二人に、
「僕は、取り調べって事が苦手でして、まあ、そちらが色々と喋ってくれれば、早く終わるのですが」
と言って二人の方を見る事無く、自分が着ている背広の塵を取る様な仕草をしていた。
すると、二人の男が顔を見合わせたかと思うと、
「柴田の事ですよね。あいつには男が居たようで、確か、小松って言ってたっけな。おい、確かそうだったよな」
と片方の男がいきなり話し始めると、もう一人の男に尋ねていた。
そして尋ねられた男も、
「おお、そうそう。小松だった。その男に、猛烈に腹を立てていたよ。姉御は、怒ったら怖いからな。そいつを殺すかもしれないと思うぐらい、めっちゃ怒っていた」
そう言ったが、その後すぐに自分の口を塞いで、田辺の方を睨んでいた。そんな男の顔を見て、ニンマリと笑顔を見せた田辺は、
「そんなにおっかない女性が、殺してしまう程怒っていた男。
ふ~ん。いいこと聞いたな。もっと聞かせてよ、話の続き」
そう言って両肘を突いて、二人の方に顔を近付けていた。そんな田辺に、怯えながら身体を後ろに仰け反る二人の男は、再び顔を見合わせると、お互いが顎で指示を出していた。
それをじっと見ていた田辺だったが、急に身体を椅子に預ける様に後ろに靠れたかと思うと、いきなり体を戻して、思いっきり机を叩いたのである。その大きな音に驚いた二人は、椅子から後ろにひっくり返ると、壁にしがみ付く様に怯え始めたのである。
その音は、隣の部屋で取り調べをしていたチンピラも驚かせていた程だった。
隣の部屋から聞こえた大きな音に、身体をピクリと動かして驚いていたチンピラ。それを見て、
「隣は、派手にやっていますね。僕等も、負けてはいられませんよ」
と言った相沢が、椅子から立ち上がると、
「えっ、そ、そんな。解りました。知っている事は全て話しますから、どうか暴力だけは勘弁してください」
そう言って、男は机に頭を擦りつけていた。
それを見た相沢は、
「冗談ですよ。僕は、隣にいる刑事とは違いますから」
と言って笑っていた。
そして二人は、チンピラ三人に柴田の事を聞き出していた。
話の内容はこうだった。
柴田は、浩一郎を含む、ここに居る三人の力を借りて、小松とも縁を切ろうとした。
その手口はチンピラがよくやる事で、小松を呼び出して脅す事だった。
「てめえっ! この女性が誰だか解って騙していたのか。おおっ」
「姉御は、俺らのチームのレディースを背負っていた女性なんだよ。
それを知っていて、他の女に手を出していたのかよ」
そう言いながら、小さな駅の裏で小松を囲んだ四人だった。
「そ、そんな。滅相も御座いませんよ。く、久美子は、大切な女性ですから、だ、騙すだなんて」
そう言いながら、腰を抜かしていた小松だった。しかし、四人の男達は脅しを止めなかった。
「久美子だって。てめえッ、誰に向かって呼び捨てしやがんだよ」
一人の男がそう言って、小松の胸座を掴むと、
「す、すいません。もうしませんから、他の女とは金輪際会いませんから、それに久美子さんも大切にしますよ」
と、怯えながらそう叫んだ小松だった。
すると、四人の後ろから姿を現した柴田だった。
柴田は、小松の不格好な姿を見て、
「もう、あんたとは別れるわ。それで私の所に一千万円持ってきな」
そう、捨てる様に吐き出す様な言葉を言い放った。そして、その場で四人に暴行を受けた小松だったのだ。
その話を聞いた相沢は、男の眼をじっと睨みつけながら、
「話は、それで終わりではないでしょう。続き、事細かに聞かせてくれますよね」
と、ねちっこく言った。そんな相沢の眼つきに怯えながら、男は全てを話し始めた。




