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指紋  作者: kazu
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若手の行動(2)

 相沢の向かった先は、所轄の警察署だった。

そこで何を調べるのか?

それは、柴田の過去の罪状だった。暴走族のレディースのリーダーだった柴田。必ず何かしっぽを掴む事が出来る。そう思った相沢は所轄の警察署に向かうと、早速、過去の事件を収めている資料室に向かった。

「ふう。さすがに多いな。まあ、パソコンで調べれば、直ぐに見つかると思うか」

そう呟きながら、数台設置されているパソコンの所に向かった。

そして、一台のパソコンの電源を入れると、

「柴田、久美子ッと」

そう言いながら、検索エンジンの所に名前を打っていた。そして、検索の所をクリックすると、数件の事件の題材が映し出された。

「けっこう、事件を犯しているな。まあ、暴走族のリーダーだからな、無理も無いか」

 画面の活字を読みながら、相沢は言った。

柴田の犯していた罪。無免許運転から始まり、恐喝、窃盗、暴力事件。それは、それは、沢山の事件が出て来た。

この事件の捜査が始まって、よくここに捜査の手が伸びて来なかったなと、自分自身を反省させられた瞬間だった。

「早くここに来ればよかった。この柴田を、容疑者として眼を付けていなかった事が、この事件を長引かせた結果だな」

 そう漏らす相沢だったが、一つの事件簿に眼が止まった。そこには、とある暴力団との繋がりが載せられていた。

「柴田は、チンピラとも繋がっていたのか」

 そう言って、その部分をクリックすると、

「覚醒剤所持。柴田がそんな事まで、いや、待てよ。この男が所持していたのを、柴田が匿っていたのか」

そこに載っていた内容は、柴田とあるチンピラの関係が書かれていた。そして、そのチンピラとは、肉体関係までいっていた事も書かれていたのだ。尚且つ、その事柄が記録されたのは、最初の女性殺人があった一か月前の事だった。最近の事だったのだ。

「小松と交際をしていながら、この男とも会っていたのか。柴田と言う女、曲者だな」

 顔を顰めてそう言う相沢だった。ただ、その事件は、柴田には何の罪状も無かった。相手のチンピラは、その後逮捕されている。

相沢はそのチンピラを調べに、資料室を後にした。そして、そこの警察署から出て行こうとした時、

「あのう、警視庁の方ですか?」

後ろから相沢を引き止める声が聞こえた。その言葉に振り返ると、

「どうかなさいましたか?」

と言った相沢だった。目の前には、一人の警官が立っていた。

その警官は、相沢に不安そうな顔で、

「いえ。この前も、一人の警視庁の方がお見えになりまして、その後も一人、警視庁から調べたいものがあると」

そう言った。警官は、余計な事を言ってしまったのかと思ったらしい。しかし、相沢はその警官に微笑んで、

「そうですか。ちょっと、難解な事件が起こっているものですから、おそらくその二人もここに来たのでしょう。なにせ、班別に別れて捜査を行っているものですからね。各班で、ここに辿り着いたのだと思います。どうも、知らせてくれて有難うございます」

と、丁寧に言葉を返した。それを聞いて、嬉しそうに微笑む警官は相沢に敬礼をした後、その場から立ち去った。

だが相沢は、その警官の後姿を見ながら険しい表情になっていた。

「一体、誰がここに? それも二人」

 そう呟く相沢だったのだ。


 数時間後、街の路地に相沢の姿があった。

「この辺をうろついていたら、柴田が匿ったチンピラの事を知った奴等と会えるだろう」

 独り言を言う様にそう言った。そこは、チンピラが所属していた暴力団の縄張り内だったのだ。そして、案の定、チンピラ風の男数人が向こうから歩いてきた。

 相沢は背広の襟を立てると、顔を隠す様にその男達の方に歩いて行った。そして、ワザとぶつかったのである。

「…… 痛ッ。おいこらッ! なにぶつかってんだよッ!」

 相沢に突き飛ばされる様にして転んだ男が、振り向きざまにそう言ったかと思うと、側に居た数人の男達が、相沢を取り囲んでいた。

「ちょっと、力が入り過ぎたかな」

 小声でそう言った相沢だったが、その相沢の肩を引っ張った一人の男が、

「この野郎ッ! 調子くれてんじゃねえぞ、こらッ!」

 そう叫んで、殴り掛ってきたのである。

 それを諸に食らった相沢は、地面に叩きつけられる様に転がると、他の男が相沢の服を引っ張って起こすと、次は別の男が相沢の腹部を蹴り飛ばした。

 これには、相沢も動けなくなり地面に這い蹲っていた。そして、突き飛ばされた男が、相沢の頭の床理に来ると、

「おいこら、こっちは肩が外れたかもしれねえんだよ。どうしてくれんだよ。おおッ! お前の職場にでも行って、会社に言ってやろうか。おおッ!」

 と息巻いていた。その時、相沢が背広の中に手を入れると、

「な、なんだよ。この野郎ッ!」

 と叫びながら、再び相沢に暴行しようとした男だったが、それを間一髪除けると、相沢は男達の前に警察手帳を突き出した。

「最後のは効いたな。ここでゲロを吐き出すところだったぜ」

 そう言った相沢。そして、

「暴行罪で署まで来てもらおうか」

 と言った。するとそこに居た数人の男達が、いきなり逃走し始めたのである。しかし相沢の手は、目の前の男の手首をしっかりと握りしめていた。そして、その場で思いっきり投げ飛ばしたのである。

「な、何すか。俺達が何をしたって言うんすか?」

 相沢が刑事だと解って、下から喋り始めるチンピラの男だったが、

「いや、手間は取らせないから。ちょっと聞きたい事があってね。

 ここじゃ何だから、署でじっくりと話を聞きたくてね」

 薄ら笑いを浮かべる相沢だった。そこへ、

「相沢さん。こいつらも、何か知っているんじゃないかな」

 という声が聞こえてきた。相沢は、ふつとその声の方に振り向いた。するとそこには、二人のチンピラを引き摺る様にして連れて来た田辺が居た。

「田辺じゃないか。お前一人で、その二人を相手にしたのか」

 そう言って、捕まえていた男を引き起こす相沢に、

「チンピラの一人や二人、数秒でやっちゃいますよ」

 と、笑って言った。そんな田辺に、身体を震わせて怯える二人のチンピラだった。それを見て、相沢は妙な気がした。

 この短時間で、この二人をここまで怯えさせる。一体何をされたのか? 余程の事が無い限り、こんな野良犬が心底怯える様になる筈がないのだが。

 そう考えていた相沢だった。だが、田辺はそんな相沢の心境を察知したのか、急に横の二人の襟首を引き寄せると、

「そこまでビビる必要はないだろう。なっ」

 と、小さな声で呟く様に言った。すると、二人の男は、首を小刻みに縦に振ると、

「な、何でも話しますよ。何処にでも、連れて言って下さい」

 そう言ったのだ。そうしていると、遠くの方からパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 相沢は、キョロキョロト周りを見ると、

「俺が、呼んでおきました」

 と田辺が言ったのである。

 その時、相沢は思い出した。所轄の警官が言っていた刑事の事を。

「お前だったのか」

 そう言った相沢に、

「やはり、相沢さんも調べに行ったんですね」

 と、田辺が返した。その言葉に、吹き出す様に微笑んだ相沢は、

「只者じゃないと思ってはいたが…… ここまで来るとはな。大した奴だ」

 言った。そして、二人は三人のチンピラを引き摺って、パトカーの方に歩いて行った。


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