若手の行動
大林班の相沢が、大林に強く要望した事。それは、小松の本命の女性の事を調べる事だった。
その調査の結果、相沢の推測は的中していたのである。そして、思いも依らなかった真実を掴んだ相沢だったのだ。
小松の付き合っていた女性。それも、殺された三人の事を知っていた本命の女性である『柴田久美子』。その過去が、大林班の調べで浮き彫りにされたのだ。
柴田は、中学生の時からバレーボール部に所属していた事で、体育会系の気性の荒い性格と大柄な体型をしていた。
女性の中でも長身だった柴田は、高校生の時には強気の性格だった為か、暴走族に入っていた。それも、レディースのリーダーだったのだ。
その事から、交際していた小松とも、よく喧嘩をしていたと言う証言を得ていた。そして、腕力で小松を圧倒していたと言う。
そんな柴田の職業は、特殊メイクを施す仕事だったのだ。映画などで顔を変える技術の事で、シリコンなどを使って役者の顔を変える仕事だった。その為に、顔だけではなく、身体の至る所も変える事が出来たのである。
率直に言えば、自分の指を他人の指に変える事が出来るのである。
相沢は考えた。
柴田は、小松と三人の女性関係を知った。そして、その三人からお金を騙し取られていた事も……。
「班長。やはり、この柴田と言う女性。私は黒だと思うのですが」
そう言った相沢に、
「お前の気持ちは解る。だがな、証拠を掴まないと、違うと言われればそれまでだろう」
と、考え込みながらそう言う大林だった。
その言葉を聞いた相沢は、
「柴田の住居を調べる訳にはいきませんかね」
唇を噛みながら、頼み込む様にそう言った。
とにかく、証拠を掴む。それさえできれば、任意でも引っ張る事が出来る。そう考えていたのである。
柴田の過去の事を調べる程、慎重に事を運ばなければいけないと思っていたのだ。
暫く無言だった大林だったが、いきなり相沢の方を睨んだ。その表情に相沢は、大林が何か良い知恵を浮かばせたと思った。
「何か、手立てでも」
そう言って、大林の前に迫る相沢だったのである。その行動に、
「まあ落ち着け。法律上では、令状がないとカチコミはできない。
もしも、無理やり出来たとしても、証拠品が押収できなければ、こっちがやられる恐れがある」
そう冷静に答えた大林だった。そこへ、
「それじゃ、柴田の事を調べにといけない様に、事を運べばいいのですか?」
と、薄笑いを浮かべて言った相沢。そして、
「確か…… 柴田は、元暴走族。叩けば、いくらでもホコリが出る」
そう言い残すと、急に振り返って走って行った。それを見た大林は、その相沢の行動を止めようと、
「単独捜査は禁物だぞ」
と叫んだ。その声に、
「宛てはあります。僕に任せて下さい」
そう言い残して、人混みの中に走り去った相沢だったのである。
「宛てはあるって、俺はどうすりゃいいんだよ」
一人残った大林は、人混みの中で立ち尽くしたまま、そう呟いていた。




