ep.668 黄金の浄化、それは「あまりに清らかな自壊」
「……計算不能。猫二様の神格化により、城内の『負の感情』が完全に払拭されました。……これは、致命的なシステムエラーです」
極新人のホログラムが、あまりに清らかな光に包まれて透き通り始めました。彼が設計した巨大レモン城は、もともと「効率」や「搾取」といったドス黒いエネルギーで稼働していたため、猫二が放つ「聖なる輝き」は城のOSにとって猛毒だったのです。
「ひぎィィィ!僕の体から出てるこのキラキラのせいで、サヨ様が持ってる借用書が次々と白いハトに変わって飛んでいくニャ!恐ろしい浄化作用ニャーーー!!」
猫二が身悶えするたびに、会場を支配していたドロドロの執着が霧散していきます。騎士を縛り付けていた「ローンの呪縛」も、黄金の光に触れた瞬間に「そよ風」へと変わり、彼の死んだ魚のような目に、数年ぶりとなる「生気」が宿り始めました。
「あら……?騎士様を追い詰める情熱が、なんだか『近所の優しいお姉さん』くらいの温度まで下がっちゃったわ。これじゃあ、家族計画どころか、ただの町内会だわ」
サヨがアイロンの効いた婚姻届を落とし、呆然と立ち尽くします。隣では、アリスが振り回していた巨大な麺棒が、フワフワの綿飴へと変化していました。
「にゃうにゃああ!ダメなのです!修羅場が浄化されて、誰もが『いい人』になってしまったら、私の撮りたい『地獄の愛憎劇』が撮れないのですー!!」
咲姫が絶叫しながらシャッターを切りますが、現像される写真はどれも「道端の地蔵」のように穏やかなものばかり。興奮で浮遊していた彼女の尻尾も、あまりの平和さに回転を止め、重力に従って地面へ落下しました。
「あはは!これがうさちぁん特製の『宇宙の終わり』の正体かなぁ?全員が満足しちゃって、誰も何も欲しがらない……それって、ただの『虚無』だよねぇ♪」
うさちぁんが酒樽を空っぽにして笑う中、城の果肉がボロボロと崩れ始めました。高純度の「聖なるレモンシャワー」が、城を支えていた「強欲」の土台を溶かし尽くしてしまったのです。
「……警告。城の崩壊まで残り30秒。猫二様の『時給22NkQの余白』が全て光に変換され、ついに底を突きました。……さようなら、唯一無二の固定資産よ」
極新人が最後の一礼と共に消滅し、黄金の城がゆっくりと「元の汚いゴミ捨て場」へと回帰を始めます。
「これニャ……この崩壊の予感こそが、僕の求めていた安らぎニャーーー!!」
猫二の歓喜の叫びが、レモン色の閃光の中に響き渡りました。
猫二よ、本当にそれでいいのか?




