ep.669 黄金の帰還「やっぱりドブ川が一番だニャ」
「……全エネルギーの放出を確認。これより、本システムは『夢の終わり』へと移行します」
極新人の声が、崩壊する城の残響の中で静かに響きました。彼が猫二の時給として設定した22NkQ。その「成長の余地(余白)」が、天文学的な奇跡によってすべて「浄化の光」として使い果たされた瞬間、黄金のレモン城は物理法則を無視したまま、粒子となって霧散し始めました。
「ひぎィィィ!体のキラキラが消えて、いつもの『洗いたての種』に戻っていくニャ!泥とゴミの匂いがする……これニャ、これこそが僕の真実の姿ニャーーー!!」
猫二は、眩いアイドル衣装がボロ布に変わっていく感触を、泣きながら噛み締めていました。サヨの執念深い契約書も、アリスの追加融資の書類も、すべてはレモンの皮の屑となって夜風に舞っていきます。
「あら、なんだか肩の荷が下りたわ。……騎士様、とりあえず今日はもう帰りましょう。夕飯はスーパーの見切り品のモヤシよ」「あ……ああ。……ローンが消えたわけじゃないけど、なんだか世界がちゃんと『汚く』見えるよ、サヨ」
騎士の目には、いつもの「死んだ魚のような光」が戻っていました。彼らにとって、これ以上の幸福はないのかもしれません。
「にゃうにゃああ!結局、最後は『貧乏くさい日常』への軟着陸なのですかー!!宇宙城の爆発という最高の撮れ高が、ただの『近所のゴミ捨て場』にすり替わったのですー!!」
咲姫は絶望しながらも、地面に転がった猫二の「汚いプロレス」の余韻を最後の一枚に収めました。その隣で、うさちぁんが空になった酒樽を枕にして、満足げに鼻提灯を膨らませています。
「あはは!夢は覚めるから楽しいんだよぉ~。ねぇ、猫二さん。またいつでも『時給22NkQ』の地獄に遊びにおいでよぉ♪」
「二度と御免だニャ!僕をただの汚いドブ川に放っておいてニャーーー!!」
レモン色の貴公子が「伝説のまたたび」を抱えて夜の闇へ消え、極新人のホログラムが完全に沈黙した時、そこにはただ、月明かりに照らされた静かなゴミ捨て場だけが残されていました。
猫二は、ボロボロの段ボールの中に潜り込み、深く、深い眠りにつきました。明日の時給がいくらになろうとも、今はただ、この「余白のない安らぎ」を愛しながら。
【完】




