ep.666 黄金の特異点、あるいは「絶望の向こう側」
「……計算を修正。猫二様の精神崩壊係数が、私の設定した『成長の余白』を完全に突き抜けました」
極新人のホログラムが、スパークと共に激しく明滅しました。彼が猫二の時給として設定した22NkQ。その「余白」とは、単なるブラック労働の余地ではなく、実は「あらゆる絶望を吸収してエネルギーに変換する」という、宇宙城の物理法則すら無視したバグじみた安全装置だったのです。
「ひぎィィィ!契約書の触手が……あれ?逆に僕の体の汚れを吸い取って、なんかマッサージされてるみたいで気持ちいいニャ……?」
猫二を縛り付けていた雇用契約書の粘着力が、あまりの「不幸の蓄積」によって反転しました。堆肥にまみれていた猫二の毛並みが、不自然なほどの黄金の輝きを取り戻していきます。
「にゃうにゃああ!奇跡なのです!猫二さんの不幸が極限に達した瞬間、カメラのシャッター速度が光速を超え、私のレンズから放たれた『悦びの光線』が猫二さんの負債を浄化し始めたのですー!!」
咲姫のテンションが、猫二の絶望と対照的に「神の領域」へと到達しました。彼女が興奮で放つ「視聴率1000%のオーラ」が、会場に充満するサヨの「情念」やアリスの「重圧」を、無理やり「良質なエンターテインメントの照明」へと変換してしまったのです。
「……不可解です。全負債が、咲姫様の『幸福感』と相殺され、猫二様の時給が正の無限大へ向かって加速しています。これは城の運営システムが『完全ボランティア(猫二様への無償奉仕)』に書き換わったことを意味します」
「なんですって……!?私の借用書が、ただの『ファンレター』に書き換わっていくわ!」
「あはは!面白ーい!じゃあ、このうさちぁん特製の酒も、呪いじゃなくて『最高級の美容液』にアップデートしちゃおっかぁ♪」
うさちぁんが酒樽から放った混沌の液体が、キラキラと輝く星屑のシャワーに変化し、猫二を優しく包み込みます。
「ミャ!?おやつを貢ぐチャンスが、全銀河的なファンイベントにすり替わったミャ!!」
レモンイエローの貴公子が差し出した「またたび原木」も、今や猫二をダメにする毒ではなく、彼を「銀河一美しい猫」として演出するスポットライトに。
「助かった……のかニャ?僕、ただのドブ川の猫に戻りたかっただけなのに、なんでこんなにキラキラしてるニャ……?」
咲姫の爆発的な幸福感が、猫二を「地獄の底」から「銀河のアイドル」へと物理的に引きずり上げた瞬間でした。
天文学的な奇跡の瞬間です★




