ep.665 黄金の終身刑、あるいは「22NkQの永久機関」
「……計算を修正。全宇宙を消去する必要はありません。必要なのは、猫二様の存在を『24時間365日の稼働資産』として、完全にこの城の歯車に固定することです」
曼荼羅化しかけていた極新人のホログラムが、不気味なほど鮮明な「漆黒の背広姿」へと収束しました。彼が指を鳴らすと、会場の床から無数の「宇宙ネギ雇用契約書」が触手のように伸び、猫二の四肢を優しく、しかし確実に絡めとります。
「猫二様。あなたの時給22NkQには、まだ莫大な『成長の余地(余白)』が残されています。これを埋めるための新福利厚生……その名も『全自動・人生肩代わりシステム』を承認しました」
「ひ、ひぎィィィ!名前からして嫌な予感しかしないニャ!その契約書の粘着力が、僕の毛根と魂を直接削りに来てるニャーーー!!」
絶叫する猫二の横で、サヨが冷たく微笑みながら、さらに重厚な「金色の婚姻届(公正証書付)」を極新人の契約書にホッチキスで合体させました。
「ええ、完璧よ極新人君。あなたの『効率』で猫二さんの自由時間を全て『家計管理』に変換して。騎士様、これでもう安心ね。あなたが逃げても、この猫があなたの『連帯保証人』として、永遠に私たちのために働き、追加融資を稼ぎ続けてくれるわ」
「パパ、見て!猫二さんがパパの代わりにアリスの『無限肩たたき(1回100万NkQ)』を一生分予約してくれたよ♪パパはもう、アリスの横でずっと死んだような目をして座ってていいからねっ!」
騎士の目から光が消え、文字通り「バラスト(重し)」としての機能を果たし始めました。
「にゃうにゃああ!逃げ場のない一蓮托生の地獄が、ついに『永久機関』として完成したのですー!!労働・家庭・負債が三位一体となって、猫二さんを磨り潰し続ける……これこそが究極のブラック・マリッジなのですー!!」
咲姫が鼻血を噴き出しながら、極限までズームしたカメラを固定します。そこへ、うさちぁんがトドメを刺すべく、酒樽から「琥珀色のドロドロした液体」を溢れさせました。
「あはは!逃げ場がないなら、せめて楽しく酔わなきゃねぇ~。ほら、猫二。これは飲めば飲むほど『自分が猫であることを忘れ、時給22NkQの社畜としてのみ自覚を持つ』といううさちぁん特製の特効薬だよぉ♪」
「黙れミャ!私の貢ぎ物(高級猫缶)なしで、そんな地獄を稼働させることは許さないミャ!!」
レモン色の貴公子が「またたび原木」を差し出し、猫二を依存の泥沼へと誘います。
「……全行程、完了。猫二様の尊厳は、本時刻をもって『宇宙城の共有財産』へと昇華されました。さあ、労働(披露宴)を続けましょう。休憩時間は……マイナス300年です」
「誰か……誰か僕を、福利厚生も、家族計画も、時給22NkQの余白もない、ただの汚いドブ川に捨ててニャーーー!!」
堆肥と契約書とアルコールの海の中で、猫二の魂の咆哮が、黄金の城に虚しく響き渡るのでした。
猫二、素直に結婚した方がマシじゃない?




