ep.658 黄金の地獄キッチン、あるいは「煽りすぎた純愛」
「第13暗黒調理場」は、阿鼻叫喚の坩堝と化していました。咲姫は天井のダクトから、身の安全を完全に確保した状態で、ポップコーンを片手に狂気の指示を飛ばします。
「にゃうにゃあ!いいのです、もっとやるのです!サヨさん、その燃え盛るフライパンで騎士さんの筋肉を焼き印にするのです!アリスさん、麺棒で騎士さんの逃げ道を粉砕するのですー!!」
咲姫がダクトの操作パネルをハッキングし、調理場の「火力」と「殺意」を最大設定に叩き込みました。彼女が求めているのは、ドロドロの愛憎が爆発し、全員が再起不能になる「衝撃のバッドエンド」!
「あはは!咲姫ちゃんノリノリだねぇ♪調理場のオートメーションが、みんなの『本音』を具現化し始めたよぉ~!」
「さらっと。……異常事態。咲姫様の過剰な演出により、調理場の『滅菌・洗浄プログラム』がバグを起こしました。……あ、騎士様、危ない!」
咲姫が煽り倒した結果、調理場内のスプリンクラーから、極新人の高純度レモン果汁が「聖水」となって一斉に噴射されました。さらに、極新人の「時給22NkQ(成長の余地)」という真っ白なエネルギーが、混乱を鎮めるための「光の防壁」として具現化したのです!
「な、なんだニャ!?視界が……視界が白くて清々しいニャ……!堆肥の臭いも、ドロドロした執着も、全部洗い流されていくニャ……!」
なんと、咲姫が「修羅場」を期待して投入した過剰なエネルギーが、逆に場を「超・浄化」してしまいました。
「……ふふ。……不思議だ。サヨの殺意が……温かな『家庭料理の湯気』に見える。アリスの麺棒が……未来を切り拓く『希望の杖』に見えてきた……。私は逃げるのをやめよう。……話し合えば、ローンだって……返せる気がするんだ……」
「……そうね、騎士様。私たち、少し熱くなりすぎたわ。……このレモン汁の雨の中で、一度心を真っ白にして……再出発しましょう?」
「パパぁ!私、パパと一緒にお庭でレモンを育てたい!」
炎上していた調理場は、今やマイナスイオン溢れる「聖なる癒やしの空間」へと変貌。騎士、サヨ、アリスが手を取り合い、後光に包まれながら和解し始めました。未開人たちも「ミャ~(尊い)」と涙を流し、極新人も「……労働基準法、守ります」と爽やかに微笑んでいます。
「…………にゃ、にゃう……にゃああああ!?!?違うのです!こんなの咲姫の撮りたかった昼ドラじゃないのですー!!」
ダクトの上で、咲姫が地団駄を踏んで叫びます。
「ドロドロの慰謝料請求は!?泥沼の略奪劇は!?なんでみんな、日曜朝の教育番組みたいな『綺麗な顔』をしてるのですかー!!悪夢なのです!咲姫にとって、こんな『平和で正常な解決』は地獄以上の悪夢なのですーっ!!」
咲姫の絶叫を余所に、調理場には清らかな賛美歌(わんわんによる自動再生)が流れ、銀河一「正しく、美しい」大団円の予感が漂い始めるのでした。
咲姫、結果として場を鎮める。
煽りすぎたら一周回って正常化する。




