ep.204 巡る灯り
リオは、町の広場にいた。
火台のまわりで、子どもたちが輪になって遊んでいる。
「さきひ、さきひ、なにしてる〜?」
「ことばをひろって、あつめてる〜!」
歌うような声が、風に乗って響く。
リオは、思わず立ち止まった。
それは、咲姫が語った言葉の一節だった。
子どもたちは、火台のまわりをくるくると回りながら、
語りの断片を、遊びの中に取り込んでいた。
「……これ、誰が教えたの?」
リオが尋ねると、ひとりの子が答えた。
「おばあちゃんが言ってたよ。
昔、咲姫って人がいてね、
火のまわりでお話してたんだって」
リオは、そっと記録帳を開いた。
そこには、まだ書かれていない語りが、
確かに息づいていた。
咲姫が語った言葉。
ミナが記した記憶。
町の人々が語り直した過去。
それらが、子どもたちの声に乗って、
新しい形で巡っていた。
リオは、火台のそばにしゃがみこみ、
小さな灯りをひとつ、そっと灯した。
「……語りって、こうして巡るんだな」
火の揺らぎが、子どもたちの笑い声と重なった。
『縁の章・肆
巡る灯り。
語りは、記録を越えて、
遊びとなり、歌となり、
世代を越えて巡る。
それは、町の空気に溶け込み、
新たな語り手を育てていく。』
“縁の章”第四話は、巡る灯り。
語りが、子どもたちの遊びの中に入り込み、
自然と広がっていく様子を描きました。
語りは、記録されるだけでなく、
暮らしの中で“巡る”もの。
咲姫たちの声が、
町の未来へと届き始めています。
次は、町を離れた者が語りに導かれて戻ってくる回へ。




