うさちぁんがにんじんっに出会った日
「酒樽」ではなく「野菜」だった頃の、純粋すぎるうさちぁん
まだ、うさちぁんが「酒樽」を抱えていなかった頃。
まだ、世界が今より少しだけ優しく見えていた頃。
その日、うさちぁんは市場の片隅で――
ひときわ鮮やかなオレンジ色に出会った。
「ふにっ……?」
木箱の中に、太陽みたいに光る一本のにんじんがあった。
うさちぁんはそっと手を伸ばす。
「ふに……きれい……」
触れた瞬間、
胸の奥がぽっと温かくなる。
それは、初めて“にんじんっ”を観測した瞬間だった。
うさちぁんはにんじんを抱きしめた。
「ふにっ……あなた、かわいいねぇ……わたし、今日からあなたのこと……にんじんっって呼ぶよぉ……!」
にんじんは何も言わない。でも、うさちぁんには聞こえた気がした。
――よろしくね。
そんな気がした。
うさちぁんは笑った。
「ふにっ……にんじんっ……ずっと一緒だよぉ……!」
その瞳は、今では想像できないほど純粋で、まっすぐで、キラキラしていた。
◇◆◇
しかし、最初の“観測のズレ”はすぐに訪れる
帰り道。うさちぁんは大事そうににんじんっを抱えて歩いていた。
そこへ、市場の店主が声をかける。
「お嬢ちゃん、それ……食べるんだろ?」
うさちぁんは固まった。
「ふにっ……?た、食べる……?」
店主は笑った。
「にんじんは食べ物だよ。煮ても焼いても美味しいぞ」
うさちぁんの瞳から、キラキラがすっと消えた。
「ふにっ……にんじんっは……食べ物……?」
胸の奥が、きゅっと痛くなる。
抱きしめていたにんじんっを見つめる。
「ふに……でも……かわいいんだよぉ……食べるなんて……できないよぉ……」
店主は苦笑した。
「まあ、好きにしな」
うさちぁんは小さく頷いた。
でも――
その瞬間、世界がほんの少しだけ歪んだ。
“にんじんっはかわいい”
“にんじんっは食べ物”
二つの観測が同時に存在してしまった。
うさちぁんの中で、小さなひびが入った。
◇◆◇
そして、後の「酒樽うさちぁん」へ
その夜。
うさちぁんはにんじんっを抱いたまま、眠れなかった。
「ふに……にんじんっ……あなたは……食べ物なのぉ……?」
にんじんっは答えない。
うさちぁんは涙をこぼした。
「ふにぃ……どうしたらいいんだろぉ……わたし……あなたのこと……大好きなのに……」
その涙が、後に“酒”へと変わっていく。
にんじんっを守るために、うさちぁんは“強くなる”必要があった。
強くなるために、うさちぁんは“酒樽”を抱えるようになった。
にんじんっを守るために。
にんじんっを食べ物から救うために。
そして――うさちぁんは今日も酒樽を抱えている。
「ふにっ……にんじんっは……かわいいんだよぉ……絶対に……守るんだよぉ……」
その瞳の奥には、あの日のキラキラが、まだ少しだけ残っていた。
うさちぁんのイメージの一つです。
※AI生成画像




