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童子ちゃんはイケメン好き  作者: 雨宮ぐみ


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第5話 ママ、初めての謝罪

第5話 ママ、初めての謝罪


神谷恒一の家に、座敷わらしちゃんたちが住み始めて二日目。


朝から家の中は大騒ぎだった。


「ママ、お腹すいたー!」


一番に起きてきたのは、元気いっぱいの次女・ひまり。


「はいはい。今、ご飯を作ってるから待ってて」


「まだー?」


「まだです」


「お味噌汁の匂いがする!」


「もうすぐよ」


そこへ、長女のさくらがやって来た。


「ひまり、ママのお手伝いしようよ」


「えー、私は食べる係!」


「そんな係ありません」


ママが苦笑する。


すると、三女のすずが眠そうな顔で現れた。


「……おはよう」


「すず、おはよう」


「ママ……」


「何?」


「こういちお兄ちゃん、もう起きてる?」


「どうして?」


「……イケメンだから」


「朝からそれ!?」


すずは恥ずかしそうに笑った。


そして、四女のももがママの背中に抱きつく。


「ママ、抱っこ」


「はいはい」


ママがももを抱き上げる。


最後に現れたのは五女のあんず。


「あら、みんな朝から楽しそうね」


「あなたはどこでそんな言葉を覚えたの?」


「女の子は恋愛について勉強しないといけないのよ」


「誰に教わったの!?」


「テレビ」


「……」


ママは何も言えなくなった。


すると、廊下から恒一が現れた。


「おはようございます」


「こういちお兄ちゃん!」


五人が一斉に振り向く。


「おはよう!」


「今日もカッコいい!」


「寝起きも素敵!」


「笑った!」


「ママ、顔赤い!」


「赤くない!」


ママは慌てて顔を隠した。


恒一は苦笑する。


「朝から元気ですね」


「いつもこうなんです……」


ママは疲れたように答えた。


朝食を終えると、恒一は仕事へ出かける準備を始めた。


「じゃあ、行ってきます」


「いってらっしゃーい!」


五人が玄関まで見送る。


すると、あんずが小声で言った。


「ママ」


「何?」


「今日、作戦開始ね」


「何の?」


「ママとこういちお兄ちゃんの恋愛作戦」


「やめなさい!」


ところが、あんずはニヤリ。


「ふふふ……」


嫌な予感がした。


その日の昼。


ママが掃除をしていると――。


「ママ!」


ひまりが走ってきた。


「どうしたの?」


「大変!」


「何が?」


「こういちお兄ちゃん、仕事に行ったから寂しそう!」


「仕事だから仕方ないでしょう」


「じゃあ、元気にしてあげよう!」


「どうやって?」


ひまりは胸を張った。


「サプライズ!」


「……嫌な予感しかしないわ」


五人はこそこそ相談を始めた。


さくらが言う。


「お部屋を綺麗にしよう」


「賛成!」


ひまりが手を挙げる。


「私は料理!」


「あなたは食べるだけになりそうだからダメ」


すずが首を傾げる。


「お花を飾る?」


「いいわね」


ももが言う。


「ママも一緒にやろう」


「そうね」


そして、あんずが最後に言った。


「私は、恋愛担当!」


「あなたは何もしなくていい!」


しかし――。


時すでに遅し。


夕方。


恒一が仕事から帰ってきた。


「ただいま」


「おかえりなさい!」


ママが玄関へ向かう。


すると――。


「こういちお兄ちゃん!」


座敷わらしちゃんたちが飛び出してきた。


「お帰りなさい!」


「今日は特別だよ!」


「お部屋も綺麗にしたの!」


「お花もあるよ!」


「料理もある!」


恒一は驚いた。


「ありがとう。嬉しいな」


ところが、あんずが一歩前へ出る。


「そして最後は――」


「待って!」


ママが止めようとする。


しかし遅かった。


あんずは恒一の手を握り、ママのところへ連れていく。


「ママ、これ!」


「え?」


「こういちお兄ちゃんからプレゼント!」


「ええ!?」


恒一も驚く。


「え? 僕、何も……」


「だって二人とも好きでしょ?」


「ちょっと、あんず!」


ママの顔が真っ赤になる。


恒一も困ったように笑う。


「……あんずちゃん」


「なあに?」


「ママをからかっちゃダメだよ」


「でも、ママ嬉しそう」


「……!」


ママは言葉を失った。


そのとき、ひまりが大声で言った。


「ママ、やっぱり好きなんじゃん!」


「違います!」


「顔が赤い!」


「違う!」


「絶対好き!」


「あなたたちーーー!」


家中にママの叫び声が響く。


恒一は笑っていた。


けれど、その笑顔を見ながら、ママはふと思った。


この家に来てから、恒一はよく笑うようになった。


そして、自分も――。


以前よりずっと笑っている。


「……ありがとう」


ママが小さく呟いた。


座敷わらしちゃんたちは、顔を見合わせる。


「何が?」


「あなたたちが、この家を明るくしてくれて」


ママが微笑む。


五人は嬉しそうに笑った。


しかし――。


翌朝。


恒一が目を覚ますと、玄関に大量の荷物が並んでいた。


「……これは?」


さくらが答える。


「私たちの荷物」


ひまりが続ける。


「全部持ってきた!」


すずが小さく笑う。


「もう帰らないよ」


ももがママに抱きつく。


「あたし、ここがいい」


そして、あんずが堂々と宣言した。


「ここを正式な我が家にします!」


「…………」


ママはしばらく黙っていた。


そして――。


「神谷さん……」


「はい?」


「この子たち、返品できますか?」


恒一は吹き出した。


「ははは!」


五人も笑う。


「ママ、ひどーい!」


「返品不可!」


「私たち家族だもん!」


その言葉を聞いたママは、思わず笑った。


「……そうね」


賑やかで、騒がしくて、毎日大変。


それでも――。


「家族、か……」


ママは五人を見つめた。


胸の奥が、ほんのり温かくなっていた。


こうして、ママと五人の座敷わらしちゃんたち、そして神谷恒一。


六人の不思議で賑やかな共同生活が、本格的に始まったのだった。

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