第4話 この家に住む!
第4話 この家に住む!
「私たち、ここに住みます!」
神谷恒一の家に、座敷わらしちゃんたちの元気な声が響いた。
「ダメーーー!」
ママは思わず叫んだ。
「どうして?」
「どうしてって……。人のお家なんだから!」
「でも、こういちお兄ちゃんがいいって言ったら?」
「それは……」
ママが恒一を見る。
恒一は困ったように笑っていた。
「僕は構わないけど」
「こういちお兄ちゃん!」
座敷わらしちゃんたちが一斉に駆け寄る。
「本当?」
「一緒に住んでいい?」
「……うん」
恒一は優しく頷いた。
「君たちがいると、なんだか家の中が明るくなるから」
「やったー!」
座敷わらしちゃんたちは大喜び。
ママだけが頭を抱えていた。
「こういちさん……本当にいいんですか?」
「はい」
「この子たち、ものすごく騒がしいですよ?」
「昨日、十分体験しました」
「夜中でも騒ぎます」
「大丈夫です」
「勝手に物を動かします」
「……それも座敷わらしだから仕方ないですね」
「私の言うことを聞かないこともあります」
「それは……大変そうですね」
恒一は笑った。
「でも、少しくらい騒がしいほうがいいですよ」
その言葉に、ママは少しだけ黙った。
恒一は家の中を見渡す。
綺麗に片付いた部屋。
けれど、どこか寂しい。
「この家、ずっと一人だったんです」
「……」
「両親が亡くなってから、僕一人で暮らしていて」
恒一は、壁に飾られた写真を見る。
そこには、若い頃の両親と、幼い恒一が写っていた。
「両親との思い出がある家だから、離れたくなくて」
ママは静かに写真を見つめた。
「でも、帰ってきても誰もいないでしょう?」
「はい」
恒一は少し寂しそうに笑った。
「静かな家も悪くないと思っていたんですけど……」
そのとき。
座敷わらしちゃんの一人が、恒一の手を握った。
「もう、ひとりじゃないよ」
「……え?」
「私たちがいるもん」
「そうそう!」
「ご飯も一緒に食べる!」
「お掃除は……ママがする!」
「こら!」
ママがすぐに突っ込む。
恒一は思わず笑った。
「ははは……」
久しぶりに、心から笑った気がした。
その笑顔を見て、ママも微笑む。
「……よかった」
「え?」
「いえ、何でもありません」
すると座敷わらしちゃんたちが、こそこそと顔を見合わせる。
「ママ」
「なに?」
「こういちお兄ちゃん、笑ったね」
「そうね」
「ママが笑わせたんだよ」
「え?」
「ママ、こういちお兄ちゃん好き?」
「なっ……!」
ママの顔が一気に赤くなる。
「何を言ってるの!」
「顔が赤い!」
「赤くない!」
「赤いよー!」
「もう!」
恒一はその様子を見て、また笑った。
「仲がいいんですね」
「……誰のせいだと思ってるんですか」
「僕?」
「そうです!」
ママは恥ずかしそうに答えた。
その夜。
座敷わらしちゃんたちは、恒一の家に布団を並べてもらった。
「今日からここが私たちのお家!」
「やったー!」
「こういちお兄ちゃんもいる!」
「ママもいる!」
ママは子どもたちの布団を直しながら、優しく笑った。
「もう……仕方ないわね」
恒一は少し離れたところから、その光景を眺めていた。
賑やかな声。
子どもたちの笑顔。
そして、優しいママ。
いつの間にか、静かだった家が温かくなっている。
恒一は小さく呟いた。
「……こんな家も、いいな」
その言葉を聞いた座敷わらしちゃんが、布団から顔を出した。
「こういちお兄ちゃん!」
「ん?」
「明日も一緒に朝ごはん食べようね!」
恒一は笑顔で答えた。
「うん。約束」
その夜。
神谷家には、久しぶりに子どもたちの寝息が響いていた。
そしてママは、眠りにつく前に思った。
――この人も、寂しかったんだ。
座敷わらしちゃんたちがここへ来たのは、もしかしたら偶然ではないのかもしれない。
そんな不思議な予感が、ママの胸に残った。
しかし――。
翌朝。
「ママーーー!」
「何!?」
「こういちお兄ちゃんのお布団に猫ちゃんがいる!」
「え?」
「しかも三匹!」
「どうして!?」
「私たちが呼んだの!」
「あなたたちーーー!」
新しい家族が増えたばかりの神谷家。
こうして、ママの新たな苦労の日々が始まった。




