第3話 イケメンを発見!
第3話 イケメンを発見!
「ここに住みたい!」
座敷わらしちゃんたちは、イケメンのお兄ちゃんの家から、なかなか帰ろうとしなかった。
「ダメです!」
ママは座敷わらしちゃんたちを一人ずつ抱き上げながら、玄関へ向かう。
「勝手に人のお家に住み着いちゃダメ!」
「でも、お兄ちゃん優しいよ?」
「それは分かってるわ」
「笑顔も素敵!」
「……そうね」
「声もカッコいい!」
「……」
ママは一瞬黙った。
「ママ?」
「何でもないわ」
どうやら、ママも少しだけ同意してしまったらしい。
イケメンのお兄ちゃんは苦笑しながら見送っていた。
「また遊びに来てもいいですよ」
「本当!?」
「ダメです!」
「ママ、なんで?」
「あなたたちが住み着くから!」
「えへへ」
ママはため息をついた。
「もう……」
こうして、なんとか家へ連れ帰った。
ところが――。
翌朝。
「ママ!」
「何?」
「お散歩行こう!」
「いいわよ。ただし、勝手にどこかへ行かないこと」
「はーい!」
ママは念を押した。
「絶対よ?」
「はーい!」
「本当に?」
「はーい!」
……嫌な予感しかしない。
それでもママは、座敷わらしちゃんたちと一緒に町へ出かけた。
商店街を歩いていると――。
「……あっ」
一人の座敷わらしちゃんが立ち止まった。
「どうしたの?」
ママが振り返る。
座敷わらしちゃんは、道の向こうをじっと見ていた。
「ママ」
「何?」
「あそこ……」
「うん?」
「あれ……」
「何なの?」
座敷わらしちゃんが、小さな声で言った。
「イケメン……」
「また!?」
全員が一斉に振り向いた。
そこには、黒い髪の若い男性がいた。
背が高く、スーツ姿。
落ち着いた雰囲気で、手には書類の入った鞄を持っている。
「カッコいい……」
「素敵……」
「大人のイケメンだ!」
座敷わらしちゃんたちの目がキラキラ輝く。
ママは慌てて子どもたちの前に立った。
「ダメよ」
「どうして?」
「どうしてって……」
「お家、見てみたい!」
「ダメ!」
「ちょっとだけ!」
「ダメ!」
「お願い!」
「ダメったらダメ!」
しかし――。
一人がママの後ろからこっそり抜け出した。
「……あっ!」
ママが振り返る。
「こら!」
時すでに遅し。
座敷わらしちゃんは男性の後を追いかけていた。
「待ってー!」
「待ちなさいーーー!」
ママも追いかける。
その後ろから、残りの座敷わらしちゃんたちも走り出した。
「私たちも行く!」
「イケメンのお家を見る!」
「やめなさいーーー!」
商店街を小さな座敷わらしちゃんたちが走り抜ける。
そして、男性が一軒の家に入っていく。
「入った!」
「お家発見!」
「ここに住む!」
「住まないの!」
ママが慌てて全員を捕まえようとした、そのとき――。
男性が玄関から顔を出した。
「……君たち、どうしたの?」
「こんにちは!」
「こんにちは!」
「お兄ちゃんのお家、見せて!」
男性は目を丸くする。
「え?」
ママは真っ青になった。
「す、すみません!」
深々と頭を下げる。
「この子たちが勝手についてきてしまって……」
男性は座敷わらしちゃんたちを見る。
「そうなの?」
「うん!」
「お兄ちゃんがイケメンだから!」
「…………」
男性は困った顔をした。
「イケメン?」
「はい!」
「カッコいい!」
「素敵!」
次々に褒められて、男性は照れてしまう。
「……ありがとう」
「キャー!」
座敷わらしちゃんたちが大喜びする。
ママは頭を抱えた。
「もう……本当にすみません」
すると男性は優しく笑った。
「でも、可愛い子たちですね」
「ありがとうございます……」
「よかったら、少しだけお茶でも飲んでいきますか?」
「いいの!?」
「もちろん」
「やったー!」
「……え?」
ママが驚く。
座敷わらしちゃんたちは大喜び。
「ママも!」
「私は……」
男性が笑う。
「お母さんもどうぞ」
「……はい」
こうして、ママと座敷わらしちゃんたちは、思いがけずその男性の家へお邪魔することになった。
そして――。
座敷わらしちゃんたちが家の中を見回した瞬間。
「ここ!」
「ここがいい!」
「絶対ここ!」
ママの顔が青ざめる。
「ま、まさか……」
座敷わらしちゃんたちは男性に向かって、元気いっぱいに宣言した。
「私たち、ここに住みます!」
「ダメーーー!」
ママの叫び声が家中に響き渡った。
男性は思わず吹き出した。
「ははは……」
「笑い事じゃありません!」
しかし、男性は笑いながら座敷わらしちゃんたちを見つめていた。
その瞳には、不思議な優しさがあった。
そしてママは、まだ知らなかった。
この男性との出会いが、ただの「イケメン発見」では終わらないことを――。




