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童子ちゃんはイケメン好き  作者: 雨宮ぐみ


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第2話 我が家の問題児たち

第2話 我が家の問題児たち


「イケメンのお兄ちゃん、待ってー!」


玄関を飛び出そうとする座敷わらしちゃんの服を、ママが慌ててつかんだ。


「待ちなさい!」


「ママ、離して!」


「離しません!」


「どうして?」


「どうしてって……!」


ママは深いため息をついた。


「昨日も勝手に庭へ出て、その前は近所のお家に行って、その前は――」


「イケメンだったから!」


「そこなのよ!」


座敷わらしちゃんたちは、きょとんとした顔でママを見る。


ママは頭を抱えた。


この子たちには、どうやら「イケメン」という言葉が魔法のように効いてしまうらしい。


「いい? あなたたちは座敷わらしなの。勝手に人のお家へ行ったらダメなのよ」


「でも、座敷わらしは家に住み着くんでしょ?」


「そうだけど……」


「じゃあ、住みたいお家に行ってもいいんじゃない?」


「よくないの!」


「なんで?」


「……人間には人間の生活があるからよ」


ママが真剣な顔で言うと、座敷わらしちゃんたちはしばらく黙った。


そして――。


「じゃあ、こっそり行く!」


「そういう問題じゃない!」


「キャー!」


座敷わらしちゃんたちは一斉に逃げ出した。


「こらーーー!」


ママも追いかける。


廊下を走り、部屋を駆け抜け、座敷わらしちゃんたちは大笑い。


「ママ、遅い!」


「待ちなさい!」


「捕まらないよー!」


「待ちなさーーーい!」


そんな騒ぎをしていると――。


ガタン!


突然、棚の上に置いてあった茶碗が落ちた。


「危ない!」


ママが驚いて駆け寄る。


しかし、茶碗は床に落ちる寸前でふわりと浮いた。


「……え?」


ママが目を丸くする。


茶碗はそのまま空中を漂い、元の場所へ戻っていった。


座敷わらしちゃんたちは得意げな顔。


「えへへ」


「私たち、座敷わらしだもん」


「……もう」


ママは呆れながらも笑った。


「そうね。あなたたちは不思議な力を持っている。でも、その力は人を困らせるために使うものじゃないのよ」


「はーい」


「本当に分かってる?」


「分かってる!」


全員が元気よく返事をした。


ところが――。


その日の午後。


ママが買い物から帰ってくると、家の中が妙に静かだった。


「……あら?」


いつもなら、


「ママ、おかえり!」


と飛び出してくるはずなのに、誰もいない。


「みんな?」


返事がない。


「どこに行ったの?」


家の中を探していると、テーブルの上に紙が置かれていた。


そこには、大きな文字で書かれていた。


『イケメンのお兄ちゃんのお家に行ってきます!』


「…………」


ママは固まった。


そして――。


「あなたたちーーーっ!!」


家中に、ママの叫び声が響き渡った。


その頃。


少し離れた場所にある、とある家では――。


「……なんだ、この子たち?」


若い男性が目を丸くしていた。


その家の畳の上には、座敷わらしちゃんたちが勢ぞろい。


「こんにちは!」


「今日からよろしくお願いします!」


「ここに住みます!」


男性は言葉を失った。


「いや……待って。どうして?」


すると、一番年下の座敷わらしちゃんがニッコリ笑う。


「お兄ちゃんがイケメンだから!」


「…………」


男性は困ったように頭をかいた。


「それ、理由になるのか?」


「なる!」


全員が即答した。


そして――。


その直後。


玄関から猛烈な勢いで走ってくる足音が聞こえた。


「すみませーーーん!」


男性が振り返る。


そこには息を切らしたママが立っていた。


「うちの子たちが……本当にすみません!」


「え?」


「勝手に住み着こうとして……!」


座敷わらしちゃんたちは、畳の上でニコニコ。


「ママ、ここがいい!」


「お願い!」


「絶対ここ!」


ママは頭を抱えた。


「もう……誰か、この子たちを何とかしてください……」


男性は思わず笑ってしまった。


「大変ですね」


「……はい。本当に大変です」


ママが疲れた顔で答える。


すると座敷わらしちゃんたちが顔を見合わせた。


「ねえ」


「なに?」


「このお兄ちゃん、優しいね」


「うん」


「やっぱりここがいい!」


「だから勝手に決めないの!」


こうして――。


ママの苦労は、ますます増えていくことになった。


そしてママはまだ知らなかった。


このイケメンのお兄ちゃんとの出会いが、後に自分自身の運命まで変えてしまうことを――。

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