第26話「新しい家、新しい生活」
第26話「新しい家、新しい生活」
家と土地の問題が落ち着き、みんなで以前の家に戻れることになった。
けれど――
帰ってきた家を見て、五人は驚いた。
「……あれ?」
ひまりが玄関で固まる。
「なんか、違う!」
「本当だ……」
さくらも辺りを見回す。
家の中には、新しい家具がいくつか置かれていた。
そして、以前より少し明るくなっている。
ママが首を傾げた。
「いつの間に……?」
恒一が笑う。
「少しだけ、手を入れたんだ」
「恒一さんが?」
「うん。せっかくみんなで暮らすんだから、もっと過ごしやすくしたくて」
五人の目が輝く。
「新しい家みたい!」
ひまりが走り出す。
「こっちは何?」
「ひまり、走らない!」
さくらが追いかける。
「見て! 私たちの場所がある!」
リビングの一角には、五人のための小さな棚と収納スペースが用意されていた。
さくらは棚を見て、嬉しそうに手を触れる。
「これ……私たちの?」
「そうだよ」
恒一が頷く。
「それぞれ好きなものを置けるようにした」
「ありがとう!」
さくらが笑った。
ひまりはすでに棚の一番下を覗き込んでいる。
「おやつ置いていい?」
「いいよ」
「やったー!」
すぐにお菓子を置こうとする。
「ひまり、まだ片付けてないでしょ」
「……はい」
渋々お菓子を戻す。
すずは窓際へ歩いていった。
そこには、小さな鉢植えが置いてある。
「きれい……」
「すずが好きそうだと思って」
恒一が言う。
すずは鉢植えを見つめながら微笑んだ。
「この家、前より笑ってるね」
ママが振り返る。
「家が?」
「うん」
すずは頷いた。
「前は静かだったけど、今はみんなの声がするから」
その言葉に恒一が少し照れたように笑った。
ももはというと――
「ママ!」
ママの腰に抱きついていた。
「ももの場所は?」
「あるよ」
ママが指差す。
そこには、もも用の小さなクッションが置かれていた。
「ママの隣!」
「……そこなの?」
「うん!」
ももは迷わず座った。
「ここ、ももの場所!」
あんずは部屋全体を見回していた。
そして、壁に飾られた家族写真に気づく。
「……これ」
写真には、ママと五人、そして恒一が写っている。
以前はなかった写真だ。
あんずはじっと見つめる。
「いつ撮ったの?」
「昨日」
ママが答える。
「あんずが寝てるときじゃない?」
「……」
あんずが写真を見る。
確かに、五人とも笑っている。
「これ、いいね」
「あんず?」
「だって……」
あんずは写真に触れた。
「ちゃんと、家族に見えるから」
ママは微笑んだ。
「家族だもの」
その言葉に、あんずは少し照れて顔を逸らした。
「……うん」
その日の夕方。
五人はみんなで新しい部屋を片付けた。
さくらは荷物を整理。
ひまりは張り切って掃除を始めたが、途中で疲れて床に寝転がる。
「ひまり、まだ途中!」
「休憩!」
「早すぎるよ」
すずは植物に水をあげる。
ももはママのそばを離れない。
あんずは家族写真を何度も眺めている。
ママはその様子を見ながら、笑っていた。
「本当に、戻ってこられてよかった」
すると恒一が言った。
「戻ってきただけじゃない」
「え?」
「ここから、新しい生活が始まるんだと思う」
ママは五人を見る。
「新しい生活……」
「うん」
恒一は家の中を見回した。
「みんなが増えて、家の意味も変わったから」
ママは静かに頷いた。
「そうね」
以前は、ただの家だった。
でも今は違う。
笑い声があって。
ケンカもあって。
泣くこともあって。
誰かが帰ってくれば、みんなが「おかえり」と言う。
そんな場所になっていた。
夕食の時間。
「いただきます!」
六人……いや、恒一も入れて七人の声が重なる。
ひまりが一口食べる。
「おいしい!」
「今日はちゃんと甘すぎないよ」
さくらが笑う。
「昨日の卵焼きのこと、まだ言うの?」
「だって甘かったもん」
「ひまりが砂糖入れすぎたからでしょ」
みんなが笑う。
ママも笑う。
その笑顔を見て、恒一も自然に笑った。
夜。
五人は新しく整えた部屋で布団に入った。
「新しい家って、いいね」
ひまりが言う。
「でも、私は前の家も好きだった」
さくらが答える。
すずが静かに笑う。
「どっちも同じだよ」
「なんで?」
「ママがいるから」
ももがすぐに言った。
「そう!」
あんずも頷く。
「結局、家じゃなくて誰といるかなんだよね」
ママはその言葉を聞きながら、布団の中で五人を見つめた。
「みんな……」
「なあに?」
「これからも、ここでいっぱい思い出を作ろうね」
「うん!」
五人が元気よく答える。
そして――
ひまりが手を挙げた。
「じゃあ明日は!」
「何?」
「新しい家で、おやつパーティー!」
「またおやつ!?」
部屋中に笑い声が響いた。
新しい家。
新しい生活。
そして――
変わらない家族。
これから、この家ではどんな騒動が起こるのだろう。
五人はまだ知らない。
けれど、一つだけ分かっていることがある。
この家には、笑い声が絶えない。
それだけは、きっとこれからも変わらない。




