第25話「ずっと一緒だよ」
第25話「ずっと一緒だよ」
家と土地の問題がまだ完全には解決していないものの、しばらくは今まで通りみんなで過ごせることになった。
朝。
「ママ、おはよう!」
ひまりが勢いよく布団に飛び込んできた。
「うわっ!」
ママが目を覚ます。
その直後――
「ママ、起きた?」
ももが反対側から抱きついてくる。
「ママ、朝ごはんできたよ」
さくらの声。
「……え?」
ママが起き上がると、部屋の外には五人が勢揃いしていた。
「今日は私たちが朝ごはん作ったの!」
ひまりが胸を張る。
テーブルの上には、おにぎり、卵焼き、味噌汁。
見た目はなかなか立派だった。
「みんな、作ってくれたの?」
「うん!」
ママは嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
五人も嬉しそうに笑う。
ところが――
ママが卵焼きを一口食べた。
「……」
「どう?」
ひまりが期待いっぱいの顔で聞く。
「おいしいよ」
「本当!?」
「うん」
ママが笑う。
すると、すずが首を傾げた。
「でも、ちょっと甘いね」
「え?」
さくらも食べてみる。
「……甘い」
あんずも一口。
「これは……」
ひまりが慌てる。
「砂糖、いっぱい入れた!」
「どのくらい?」
「いっぱい!」
「料理で一番危険な答えだね……」
みんなが笑った。
ママも笑った。
その笑い声を聞きながら、恒一は少し離れたところで微笑んでいた。
「朝から賑やかだな」
「うん」
ママも嬉しそうだった。
「こういう朝が、ずっと続けばいいね」
恒一は静かに頷いた。
「俺もそう思う」
その言葉を、五人は聞き逃さなかった。
あんずがひまりの耳元で囁く。
「今の、ちょっといい感じじゃない?」
「何が?」
「大人の会話」
「よく分かんない!」
「ひまりにはまだ早いね」
「なんで!?」
さくらが二人を見てため息をついた。
「朝から恋愛会議しないの」
そんな騒がしい朝だった。
――そして午後。
ママが洗濯物を畳んでいると、ももが隣に座った。
「ママ」
「なあに?」
「ずっと一緒?」
ママの手が止まる。
「……うん」
「明日も?」
「うん」
「明後日も?」
「うん」
「ずーっと?」
ママはももの頭を撫でた。
「ずっと一緒だよ」
ももは安心したように笑った。
「よかった」
その会話を聞いていたすずが、ぽつりと言った。
「もも、まだ怖いんだね」
ももは少し俯いた。
「……また離れたら嫌なの」
さくらも近くに来る。
「私も怖かったよ」
ひまりも続く。
「私も!」
あんずも黙って頷いた。
「私も、ママがいなくなるの嫌だった」
ママは五人を見つめた。
「みんな……」
さくらがママの手を握る。
「もう大丈夫だよ」
ひまりが反対の手を握る。
「私たち、どこにいてもママを探すから!」
すずもそっと寄り添う。
「心が繋がっていれば、きっと大丈夫」
ももはママに抱きつく。
「ママ、大好き」
最後にあんずが笑った。
「だからママも、私たちを頼っていいんだよ」
ママの目に涙が浮かんだ。
「……ありがとう」
五人はママを囲んだ。
その光景を、少し離れたところから恒一が見ていた。
そして、静かに呟く。
「本当に、いい家族だな」
すると――
ひまりが振り返った。
「恒一さんも家族だよ!」
「え?」
恒一が固まる。
さくらも笑う。
「そうだよ」
すずも頷く。
「恒一さんがいると、家がもっと明るくなるから」
ももも手を伸ばす。
「恒一さんも、ずっと一緒!」
あんずはニヤッとした。
「家族認定です」
「勝手に認定されるものなのか?」
恒一が苦笑する。
ママも笑った。
「でも……私も嬉しい」
恒一は少し照れたように目を逸らした。
「……そう言ってもらえるなら、俺も嬉しいよ」
五人は嬉しそうに笑った。
そして夜。
布団に入ると、いつものように五人がママの周りに集まる。
「今日は誰がママの隣?」
さくらが聞く。
「私!」
ひまりが手を挙げる。
「私も!」
ももも手を挙げる。
「じゃあ、みんなで寝ればいいよ」
すずが言う。
「それが一番平和ね」
あんずが笑う。
結局、五人全員がママにくっついた。
「ちょっと、みんな……」
ママは苦笑する。
「重いよ」
「でも、幸せでしょ?」
あんずが聞く。
ママは五人を見て、優しく笑った。
「うん」
そして、一人ずつ抱きしめる。
「すごく幸せ」
五人も笑った。
「ママ、大好き!」
「私も!」
「私も!」
「私も!」
「私も!」
五人の声が重なる。
ママは目を閉じた。
離れ離れになって、初めて気づいた。
家族は、ただ同じ場所にいるだけじゃない。
どんなに離れても、互いを想い、帰りたいと思える場所。
それが家族なのだ。
そして五人は、眠る前にもう一度だけママに言った。
「ずっと一緒だよ」
ママも笑って答えた。
「うん。ずっと一緒」
――その夜、五人の寝息が揃った頃。
家の外では、座敷わらしの小さな光が、そっと屋根を包んでいた。
まるでこの家と家族を、
「これからも守るよ」
と約束するように。




