第24話「もう一度、家族になる」
第24話「もう一度、家族になる」
ママと五人が再会した翌朝。
久しぶりに、みんなが同じ場所に集まっていた。
けれど――
まだ、以前の家には戻れない。
家と土地の問題が解決していないからだ。
「ママ……」
ももがママの服の裾をぎゅっと握る。
「今日は、どこにも行かない?」
「うん。今日はずっと一緒にいるよ」
ママが頭を撫でると、ももの顔がぱっと明るくなった。
「よかったぁ……」
その横では、ひまりが大きな荷物を抱えていた。
「私も準備したよ!」
「何を?」
さくらが聞く。
「おやつ!」
「……それだけ?」
「大事でしょ?」
ひまりは真顔だった。
「家族には、おやつが必要なの!」
「まあ……否定はしないけど」
さくらが苦笑する。
すずは、みんなの顔を眺めていた。
そして、ふっと笑う。
「昨日まで、寂しかったね」
「うん」
さくらが頷く。
「でも今は?」
すずが聞くと、ももがママに抱きついた。
「幸せ!」
その声を聞いて、ママの目が潤んだ。
「……私も」
そこへ恒一が入ってきた。
「みんな、話がある」
五人が振り向く。
恒一の手には、一枚の書類があった。
「家のこと、少し進展があった」
「本当!?」
あんずが身を乗り出す。
「まだ正式には決まっていない。でも、すぐに取り壊されるわけじゃない」
ママが胸を撫で下ろす。
「じゃあ……」
「戻れる可能性はある」
その言葉に、五人の顔が一斉に明るくなった。
「やったー!」
ひまりが飛び跳ねる。
「家に帰れる!」
さくらも笑う。
ももはママを見上げた。
「ママ、またみんなで暮らせる?」
「うん」
ママはしゃがんで、五人を順番に抱きしめた。
「みんなで帰ろう」
「うん!」
しかし――
あんずだけは少し黙っていた。
「どうしたの?」
すずが聞く。
あんずは家の写真を見つめる。
「私、前は『イケメンの家に住みたい』って思ってた」
「そうだったね」
さくらが笑う。
「恒一さんの家に勝手に住もうとしたし」
「俳優さんの家にも行こうとした」
「蓮さんの家にも行きたかった!」
ひまりが手を挙げる。
「私、今でもイケメンは好き!」
「あんず……」
ママが苦笑する。
「でもね」
あんずは写真を胸に抱えた。
「今は、この家がいい」
「どうして?」
ママが聞く。
あんずは少し照れながら答えた。
「だって……ここには、ママがいるから」
その言葉に、ママは黙り込んだ。
さくらが続ける。
「私も、この家が好き。みんなで家事をしたり、ママを手伝ったりできるから」
ひまりはおやつの袋を抱えながら言った。
「私は、みんなでご飯食べるのが好き!」
すずは静かに微笑む。
「家って、建物じゃないんだと思う」
「……」
「みんなが帰りたいって思える場所が、家なんじゃないかな」
ももはママの膝に座った。
「ももは、ママがいるところが家!」
ママの目から、涙がこぼれた。
「みんな……」
五人がママの周りに集まる。
「ママ?」
「どうしたの?」
ママは涙を拭きながら笑った。
「私ね……」
一人ずつ、五人の頭を撫でる。
「あなたたちを守ることばかり考えてた」
「でも……」
ママは五人を抱きしめた。
「私も、あなたたちに支えてもらってたんだね」
「もちろん!」
ひまりが即答する。
「私たち、家族だから!」
さくらも頷いた。
「家族は助け合うんだよ」
「そうだね」
すずが笑う。
「嬉しいときも、悲しいときも一緒」
ももはママに頬を寄せる。
「ずっと一緒」
最後に、あんずが少し得意そうな顔をした。
「つまり――」
五人が振り返る。
「私たち、もう一度ちゃんと家族になったってこと!」
「最初から家族でしょ」
ママが笑った。
「そうだった!」
五人の笑い声が響く。
そしてその日の夕方。
みんなで簡単な食事を作った。
さくらが料理を手伝い。
すずがお皿を並べ。
ももがママの隣に座り。
あんずが料理を味見し。
ひまりが――
「ママ! これ、もう食べていい?」
「まだよ」
「じゃあ、こっちは?」
「それもまだ」
「じゃあこれは?」
「ひまり!」
「はいっ!」
みんなが笑う。
恒一もその光景を見ながら、静かに笑った。
「……やっぱり、これが一番だな」
「何が?」
ママが聞く。
恒一は五人を見て答えた。
「みんながいる家が」
ママは少し照れながら笑った。
五人は顔を見合わせる。
そして――
「じゃあ、乾杯しよう!」
ひまりがコップを持ち上げた。
「何に?」
さくらが聞く。
ひまりは元気いっぱいに叫んだ。
「家族に!」
五人とママ、そして恒一がコップを合わせた。
「乾杯!」
離れ離れになったからこそ、分かった。
一緒にいることが、当たり前じゃない。
笑い声が聞こえることも。
「おかえり」と言えることも。
「ただいま」と帰ってこられることも。
全部、大切なものだった。
その夜。
五人は一つの布団に集まり、ママの両側にぎゅうぎゅうに並んだ。
「狭い……」
ママが笑う。
「ママ、動いちゃダメ」
ももが腕を抱く。
「絶対、離さないから」
「うん」
ママは五人を抱きしめた。
「私も、離さない」
すると、あんずが小さな声で言った。
「ママ」
「なあに?」
「これからも、ずっと一緒にいようね」
ママは笑って答えた。
「もちろん」
その瞬間――
部屋の明かりが、ふわっと一度だけ揺れた。
五人は顔を見合わせる。
そして、笑った。
まるで家そのものが、
「おかえり」
と言っているようだった。




