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童子ちゃんはイケメン好き  作者: 雨宮ぐみ


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第20話 大切な家を失う!?

第20話 大切な家を失う!?


「この家について、お話があります」


玄関に立つ男性は、そう言って一枚の書類を差し出した。


ママは書類を受け取った。


「……これは?」


「この家と土地についてです」


「家と土地……?」


ママの顔が強張る。


後ろから、五人がそっと顔を出した。


「ママ?」


男性は申し訳なさそうに続ける。


「この家は、以前の所有者から相続されたものですが……」


ママは書類に目を落とす。


「現在、土地の整理が進められていて、この家を今後どうするか、決めなければならなくなりました」


「……どうするか?」


「はい」


男性は一度言葉を選んだ。


「場合によっては、建物を取り壊して土地を売却することになる可能性があります」


「……」


ママの手から、書類が少し震えた。


「取り壊す……?」


「まだ決定ではありません。ただ、そうなる可能性があります」


その言葉を聞いた瞬間――


「嫌!」


ももが叫んだ。


ママの服をぎゅっとつかむ。


「ここ、なくなるの?」


「もも……」


「嫌だ!」


涙が目に浮かぶ。


ひまりも玄関から飛び出してきた。


「なんで!? ここ、私たちの家じゃん!」


さくらはすぐにひまりの肩をつかむ。


「ひまり、落ち着いて!」


でも、さくら自身の手も震えていた。


すずは何も言わず、家の中を見渡した。


いつもみんなで食事をする場所。


五人で遊んだ場所。


ママが笑っていた場所。


「……この家、なくなっちゃうの?」


小さな声だった。


あんずは書類をじっと見つめていた。


「まだ決まってないんだよね?」


男性がうなずく。


「はい」


「じゃあ……」


あんずはママを見る。


「まだ、諦めなくていいんだよね?」


「……うん」


ママはそう答えた。


でも、その声は少し震えていた。


* * *


男性が帰ったあと。


家の中は静まり返っていた。


いつもなら、ひまりが走り回っている時間。


今日は誰も走らない。


ももはママの膝に座っている。


「ママ……」


「ん?」


「ここ、なくならない?」


ママはすぐに答えられなかった。


「……まだ分からないの」


「嫌だ……」


ももがママの服に顔を埋める。


「ここがいい」


ママはももの背中を撫でる。


「私も、この家が好きよ」


さくらが窓の外を見る。


「私たち、どうなるの?」


「……」


ひまりが立ち上がる。


「じゃあ、私が守る!」


「ひまり?」


「家を押さえる!」


「どうやって?」


「……」


ひまりが考える。


「みんなで押さえる!」


「家は押しても止まらないよ」


さくらが思わず笑った。


久しぶりに、少しだけ空気が和らいだ。


* * *


その日の夕方。


恒一が帰宅した。


「ただいま」


いつもなら、


「おかえり!」


と五人が走ってくる。


しかし――


今日は誰も来ない。


「……?」


恒一が居間へ行くと、五人とママが座っていた。


「どうした?」


ママが立ち上がる。


「恒一くん……」


そして、今日あったことを話した。


恒一の顔が険しくなる。


「この家を?」


「まだ決まったわけじゃないけど……」


「そうか」


恒一はしばらく黙った。


そして家の中を見渡す。


「俺、この家が好きなんだ」


「……」


「みんなが来てから、ずっと家が明るくなった」


ママが少し笑う。


「私も」


ひまりが手を挙げる。


「私も!」


「はいはい」


「私も!」


「分かった」


恒一が笑う。


* * *


その夜。


五人は布団の中で話していた。


「どうする?」


あんずが聞く。


さくらが考える。


「まず、何ができるか調べよう」


ひまりが拳を握る。


「私、何でもする!」


すずは天井を見つめる。


「この家、寂しくなりそう……」


ももが小さな声で言う。


「ママと離れたくない」


その言葉に、全員が黙った。


「……」


あんずがももの手を握る。


「離れないよ」


「本当?」


「うん」


「絶対?」


「絶対」


さくらも頷いた。


「私たちは家族だから」


* * *


翌朝。


ママが目を覚ますと――


家の中が妙に騒がしかった。


「よいしょ!」


「ひまり、そこ持って!」


「分かった!」


「すず、そっちはどう?」


「大丈夫」


「もも、危ないから下がってて」


「やだ!」


「もも!」


ママが居間に入る。


「……何してるの?」


五人が振り返った。


居間には、大量の荷物。


「家を守る準備!」


ひまりが叫ぶ。


「何の?」


「分かんない!」


「分からないのに準備してるの?」


「うん!」


ママは思わず頭を抱えた。


あんずが真剣な顔で言う。


「ママ、この家を守る方法を考えよう」


「……」


「ここは私たちの家だから」


その言葉に、ママは胸が熱くなった。


「ありがとう」


五人がママに集まる。


* * *


その日の午後。


恒一とママは、家について詳しく調べるため外へ出ることになった。


「少し時間がかかるかもしれない」


恒一が言う。


「うん」


「五人はここで待っててくれ」


「分かった!」


さくらが答える。


「ちゃんと待ってる」


ひまりが敬礼する。


「任せて!」


すずは小さく手を振る。


ももはママの手を離したくなさそうにしている。


「ママ……」


「大丈夫よ」


ママがももの頭を撫でる。


「すぐ帰ってくるから」


あんずは笑顔で手を振った。


「いってらっしゃい」


二人が家を出ていく。


五人は玄関で見送った。


「……」


扉が閉まる。


その瞬間。


ももが泣き出した。


「ママ……」


さくらが抱きしめる。


「大丈夫」


でも――


さくらの目にも涙が浮かんでいた。


* * *


一方、外。


ママと恒一は並んで歩いていた。


「……怖い?」


恒一が聞く。


「うん」


ママは正直に答えた。


「この家には、みんなとの思い出がいっぱいあるから」


「そうだな」


「失いたくない」


恒一は少し考えてから言った。


「俺も、失いたくない」


ママが恒一を見る。


「恒一くん……」


「だから、一緒に方法を探そう」


「……うん」


二人は並んで歩いていった。


* * *


その頃。


家では――


五人が窓から外を見ていた。


ひまりが突然叫ぶ。


「あ!」


「どうしたの?」


「家の前に車が来た!」


さくらが窓を見る。


「誰?」


一台の車が家の前に止まった。


中から、スーツ姿の男性が降りてくる。


男性は家を見上げた。


そして――


玄関へ向かって歩き始めた。


五人の顔から笑顔が消えた。


「……また誰か来た」


すずが呟く。


あんずが立ち上がる。


「今度は、私たちが出る」


「え?」


あんずは玄関へ向かう。


さくらが後を追う。


「待って!」


五人が玄関に集まった。


そして――


コンコン。


扉が叩かれた。


五人は顔を見合わせる。


家族を守るための、本当の戦いが始まろうとしていた。

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