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童子ちゃんはイケメン好き  作者: 雨宮ぐみ


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第18話 座敷わらしちゃんたちの本当の気持ち

第18話 座敷わらしちゃんたちの本当の気持ち


朝。


ママが目を覚ますと――


枕元に五人が並んでいた。


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


五人とも、じーっとママを見ている。


「……どうしたの?」


すると、ひまりが勢いよく手を挙げた。


「質問があります!」


「はい?」


「ママは幸せですか!」


「……」


朝一番から、ものすごく重い質問だった。


ママは苦笑する。


「もちろん幸せよ」


「本当に?」


すずが静かに聞く。


「うん」


「昨日、泣いてた」


「……」


ママは少し黙った。


「泣くことと、不幸せなのは違うのよ」


「そうなの?」


ひまりが首を傾げる。


「うん。嬉しくても泣くし、安心しても泣くことがあるから」


「じゃあ、昨日は?」


すずが聞く。


ママは五人を見る。


「みんながいてくれて、嬉しくて泣いたの」


「……」


五人が顔を見合わせる。


ももがママに飛びついた。


「じゃあ、ももがもっと一緒にいる!」


「ふふっ。ありがとう」


* * *


その日の昼。


あんずが突然、机を叩いた。


「家族会議をします!」


「また?」


さくらが苦笑する。


「今回は恋愛作戦じゃないよ」


「本当?」


「本当」


あんずは紙を広げた。


『ママの幸せについて』


「……」


ママが遠くから見る。


「また何か始まったわね」


五人は輪になって座った。


「ママが幸せになるために、私たちに何ができるか考えます」


さくらが手を挙げる。


「私は、家事を手伝う」


「いいね!」


ひまりも手を挙げる。


「私は、ママを笑わせる!」


「それはいつもやってるね」


「じゃあ、もっとやる!」


ひまりは変な顔をしてみせた。


さくらが笑う。


「次、すず」


「私は……」


すずは少し考えた。


「ママが悲しいとき、そばにいる」


「うん」


ももはすぐに手を挙げた。


「私は、ずっとママのそばにいる!」


「それはももが一番得意だね」


「うん!」


最後にあんず。


「私は……」


いつもなら恋愛作戦を考えるところだった。


けれど今日は違った。


「ママが自分の幸せを選べるようにする」


さくらがあんずを見る。


「どういうこと?」


「ママはずっと、私たちのことを優先してきたでしょ?」


「……」


「だから今度は、ママが自分の好きなことをしてほしい」


すずがうなずく。


「うん」


あんずは少し照れながら続けた。


「ママが高橋さんを好きなら、それでもいい」


「……」


「恒一さんを好きなら、それでもいい」


「……」


「誰も好きじゃなくても、それでもいい」


あんずは笑った。


「ママが選んだなら、それでいい」


* * *


その会話を、廊下で聞いていたママ。


「……」


胸がいっぱいになった。


今まで、自分がこの子たちを守っていると思っていた。


でも――


いつの間にか。


この子たちも、自分を守ってくれている。


「ありがとう」


ママが部屋に入ってくる。


五人が一斉に振り返った。


「ママ!」


「今の話、聞いてた?」


「うん」


ママは五人の前にしゃがむ。


「みんな、ありがとう」


「じゃあ!」


ひまりが飛びつく。


「今日のおやつ、二個!」


「そこなの?」


「幸せだから!」


ママは笑った。


「一個半ね」


「半分って何!?」


家中に笑い声が響いた。


* * *


午後。


恒一が帰ってきた。


「ただいま」


「おかえり!」


五人が玄関へ走っていく。


「今日は何かあったのか?」


恒一が聞く。


すると、あんずが真剣な顔で近づいた。


「恒一さん」


「ん?」


「ママを泣かせないでね」


「……」


恒一が固まる。


「何の話?」


「ママが幸せになるなら、ちゃんと大事にして」


「ちょっと、あんず!」


ママが慌てて飛んでくる。


「何言ってるの!」


恒一は少し驚いたあと、優しく笑った。


「分かった」


「……」


ママが黙る。


恒一は五人を見る。


「でも、俺からもお願いがある」


「何?」


「ママを大事にしてやってくれ」


五人が顔を見合わせる。


「もちろん!」


ひまりが元気よく答えた。


「私たちはママの子どもだから!」


「うん」


恒一が笑う。


「それなら安心だ」


* * *


夜。


ママは縁側で一人、空を見上げていた。


すると隣に恒一が座った。


「今日は静かだな」


「みんな寝たみたい」


「珍しい」


二人で笑う。


しばらく沈黙。


やがて恒一が口を開いた。


「昨日……泣いてたよな」


ママの表情が少し曇る。


「……うん」


「無理してないか?」


「してないよ」


「本当に?」


ママは少し考えた。


「昔は……」


「うん」


「自分が幸せになっていいのか、分からなかった」


恒一は黙って聞いている。


「この子たちを育てることが一番大切だったから」


「……」


「でも最近、少しだけ思うの」


ママは夜空を見る。


「私も、自分の人生を楽しんでいいのかなって」


恒一は優しく笑った。


「いいと思う」


ママが振り返る。


「……本当に?」


「ああ」


「私が誰かを好きになっても?」


恒一は一瞬だけ黙った。


そして――


「もちろん」


そう答えた。


ママは微笑んだ。


「ありがとう」


二人は静かに夜空を見上げた。


その様子を――


障子の隙間から五人が覗いていた。


「……」


さくらが小声で言う。


「見ちゃダメでしょ」


「でも気になる」


ひまりがさらに顔を出す。


「近い!」


あんずは目を輝かせる。


「いい雰囲気……」


すずは二人を見つめている。


「恒一さん、嬉しそう」


ももは眠そうな顔で言った。


「ママ……楽しそう」


その言葉に、五人が静かに笑った。


* * *


翌朝。


ママが台所へ行くと――


五人が朝食を作っていた。


「……え?」


さくらが卵を焼いている。


ひまりは味見をしている。


「うん! おいしい!」


「ひまり、食べすぎ!」


すずはお茶を入れている。


ももはママの椅子を用意している。


「あんずは?」


ママが聞く。


すると、あんずが紙を持ってきた。


『ママの幸せ計画』


ママは嫌な予感がした。


「……恋愛作戦じゃないでしょうね?」


「違うよ」


あんずが笑う。


「これは――」


紙を裏返す。


そこには大きく、


『ママが笑っている時間を増やす』


と書かれていた。


ママは目を丸くする。


「……」


そして、五人を抱きしめた。


「ありがとう」


「ママ、大好き!」


「私も!」


「私も!」


「ずっと一緒!」


五人の声が重なる。


ママは笑った。


涙を浮かべながら。


でも今度の涙は――


寂しさではなかった。


「私、この子たちのママでよかった」


そう思える――


温かい涙だった。


そして五人は気づいていた。


ママに必要なのは、


イケメンを見つけて家に連れてくることでも、


恋愛作戦を成功させることでもない。


ママが自分らしく笑える場所を――


みんなで守ること。


それが、五人にできる一番の「ママ孝行」だった。


……もっとも。


ひまりは朝食を三杯おかわりしていた。


「ママ、おかわり!」


「ひまり、あなたの幸せは食べることなの?」


「うん!」


「即答しないの!」


家中に、また笑い声が響いた。

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