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海繋がる  作者: 加藤無理
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血族の繁栄

 一度、時化に襲われたが死傷者を出さずに無事に帰港した。泣きわめいていたが子ども達も無事だ。三年振りの母国・花国。私達は安堵の涙を流した。別れ際に互いに握手したり子ども達の頬を擦ったりした。私は皆と離れるのが寂しかったが、故郷に戻った。連絡船から手紙を渡されて祖母の訃報を知ったのだ。


 信じたくはなかったが、祖母は高齢だ。私が七人姉妹の末子で母は次女なので生きていれば九十歳近い。港から歩くと非常に遠いので運河と河川を船に乗って帰路を急ぐ。三日ほどで村に到着した。


 春の終わりで皆、農作業で忙しかったが、私に気付くと作業を止めて駆け寄って来た。私も皆も安堵の溜息を吐く。家に入ると一番下の姉が食事の支度を止めて私を迎えた。私の帰還を知った他の姉も叔母・伯母もいとこ達も母も集まった。


 居間には祖母の肖像画が飾られている。やはり祖母は亡くなったのだ。私は肖像画の前に手を合わせて黙祷する。


 姉達は祖母が苦しまずに亡くなったと説明した。姉達や伯母達の顔色からして嘘ではないと分かった。安心したが、やはり寂しい。現実味が感じられないので涙は出ない。母と墓地に行く。


 墓石には確かに祖母の名前が刻まれている。母は黙祷する。私もそれにならう。母は農作業ばかりして私は朝食と夕食の時に母に甘えた。それ以外は家事に専念しながら私達の世話を祖母がしていた。私達は皆、祖母を慕っていた。祖母が忙しい時は上の姉達が手伝い、下の姉達は私の遊び相手になった。祖母は文句を言わなかったし、七人も子どもを生んだ上に仕事ばかりの母に姉達が文句を言うと止めるように諭していた。誰かが外国に行って子どもを生まなければ国も家族も滅びるからだ。


 母は悲しい顔をして黙祷を終えると、家に戻る。私も後に続くと母は祭国での出来事について色々と尋ねてきた。私が子どもを連れてきていないので任務は失敗したのだと母には分かる。私が悪漢に報復して祭国の軍に突き出した話を聴いて母は苦笑いした。私が子どもを生めなくても仕方ないと半ば諦めているのだろう。母は七人も生んだが子育ては祖母に任せていた。母は少し自嘲気味に笑っている。


 帰宅すると姉達が夕食を用意していた。姪達も集まっている。六人の姉達の中で長姉と五番目の姉以外には子どもがいる。合わせて七人。姪達は呆然と私を見つめていたが、思い出すと私に長旅の話をせがんだ。私は男という不思議な人間について語った。


 姉達も伯母・叔母もいとこ達も私が子どもを生む事を期待していない。妊娠や出産は命懸けだ。やりたくなければ無理にやる必要はない。生みたい人、生める人が二人ぐらい生めれば人口は維持出来る。子どもを生んでいなくても親戚や近所の子達の世話をするので誰からも責められるいわれもない。むしろ私の家系は子沢山の部類に入る。


 私は安堵した。祭国では男が妊娠も出産もしない分、女が沢山子どもを生まないといけないからだ。子どもを生まない・生めない女を考えると息子一人娘一人生んでも人口が維持出来るわけではない。それに何故か祭国では男児が好まれ、女児は期待されない。男は筋力が有って労働力が有るからだが、女が沢山いなければ子どもは増えないし人口は維持できない。


 男がいる社会は面倒だと私は思う。か弱いはずの女が命懸けの出産を何度も繰り返す上に子育ても家事も担う。生産活動もする。女が人間の半分しかいないのに、女をぞんざいに扱う。


 しかし祭国では温和で優しい男もいたので、私の同期達はその男達と関係を持って子宝に恵まれたわけだが。

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