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海繋がる  作者: 加藤無理
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適切な男

 祭国に来て半年ほど経つと私の同期が適切な男を見つけた。その男は鍛冶職人の息子で知的障害者だった。彼は愛情深くも厳しく躾けられているのか、決して障害に振り回されて暴れるような男ではなかった。むしろ何時も大人しくて穏やかに微笑んでいる。


 私を含む班員達は胸を撫で下ろした。私達新兵は今までなかなか適切な男が見つからなかった。私は未だに見つかっていない。


 私達はその鍛冶屋の所で職場を見学しながら雑用をこなしていた。私はかなりの技術と経験の必要な仕事だと感心している。私の同期はその親方の息子と意気投合していた。私はこちらでも男ばかりが責任有る労働をこなし、女達は地味で面倒な労働をしながら家事も育児もこなしている事に違和感を持った。筋力の有る男達が何故、家事も育児もしないのだろうか。女はか弱いのに妊娠も出産もしなければならないのに。しかし班長に訴えたが、祭国の人々に質問しないように口止めされている。


 班長は鍛冶屋の親方とその妻に息子が私の同期の相手をしてくれるように頼んだ。夫婦は不安そうな顔をしている。大事な息子を心配しているだけではなく、息子が知的障害者である事に負目を感じているようだ。私は班長の後ろで黙って話を聴いている。


 息子は長男だが知的障害者なので跡を継げない。次男が継ぐそうだ。次男は確かに一生懸命に働いている。長男は父親の言われた事をこなしているが、得手不得手が極端だ。父親の死後は次男が長男の面倒を観る。障害が無ければ長男が跡を継ぐはずであった。それを父親である親方は悲しい顔で語る。


 班長は妻に質問した。長男は私の同期を気に入っているのは確実だ。同期も班長も何度も気持ちを確かめていた。妻が同意すれば長男と本格的に交渉する。長男が受け入れれば同期は子どもを宿すことが出来る。その子どもは長男の子どもにはならないし、親としての義務を全く果たす必要はない。むしろ私達の方からいくらか報酬を出す。


 妻は考え込んでしまった。親方は苦い顔をして妻に何か言いかけるが班長はそれを制した。私達は適切な男を見つけた場合、先ずはその男にとって最も身近で大事な女と交渉するのだ。今回は母親だが、既婚者の場合は妻、独身で母親もいなければ姉妹、場合によっては娘に判断させる。彼女達が嫌がれば私達は別の男を探す。


 妻は長男を呼んだ。長男が素直に駆け寄ると妻は私達を見ながら耳打ちする。長男は最初は不思議そうな顔をしたが驚いた顔をして私の同期を見やる。最後には困った顔で俯き考え込む。妻は待つ。私達も親方も固唾を飲む。


 長男は顔を上げて同意した。妻は驚いた顔で私の同期に振り返る。同期は心底、嬉しそうな顔をしている。妻も同意した。親方は不安そうな顔をする。障害が遺伝するのではないかと私の同期を心配するのだ。しかし班長は障害が必ずしも遺伝しない事を説明した。


 私達は鍛冶屋夫婦に挨拶すると私達が宿泊している王の別荘に長男を連れて行った。長男は緊張しているが、僅かに微笑んでいる。班長が優しく抱くようにと頼むと長男は頷いた。


 私達の誰かが性行為をする時、班員が隣の部屋で待機する。男が痛みを伴う性行為をしたり、暴力を振るったり、嘲ったりすればすぐに班員が呼ばれて制裁する。逆に男が私達同胞を大事に扱えば労う。


 私は当事者ではないが緊張した。待機している間、そわそわしたが、同期の性行為は無事に終わったようだ。事前に飲んだ性交痛用の薬の効果もあったようだ。

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