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海繋がる  作者: 加藤無理
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邪魔臭い悪漢

 私達は常時一班五人、行動を共にする。私と同期は班長や上官二人に護衛されながら、祭国の港町を散策する。時折、祭国の軍人達が遠くの町や村を案内する。五日の間に河川や運河を船で往来したり歩いたりして適切な男を探す。五日経つと軍艦に戻って五日ほど見張りしたり休んだりする。私達は交代でこれを繰り返す。


 私達花国の一隻二百人十五隻の艦隊が三年ほど祭国に停泊する。時折、祭国の指示で別の港に移動するが、私達は祭国に滞在を続ける。その間の食糧をはじめとする物資や費用は祭国と花国双方が負担する。私達が祭国からカネを出して買うこともあれば、支給されることもある。水は軍艦に設置してある淡水装置で海水から得ている。花国軍は本国から多額の金銭を支給されているが、計画的に使っている。


 私達新兵は外国に到着してから一年以内に適切な男を探して認められて性行為をしなければならない。一年経っても見つからなかったり、拒まれたりすれば諦めなければならない。無事に妊娠すれば出産まで一年ほど大人しく軍艦で過ごす。その間に定期的に軍医が診察する。班員が身の回りの世話をする。分娩は港の空地に建てられた小屋で行われる。凪ならば艦内の分娩室が使われることもある。赤ん坊が生まれれば、首や腰が据わるまで母親とその班員達が船の上で一年ほど育てる。その後、私達は母国へ寄港するので、三年ほど祭国に滞在しなければならない。


 私達新兵を指揮しながら護衛する上官達は老兵ばかりだが、熟練の船乗りでもある。また、上官達の三割ほどは産婦人科医だ。私達以外にも、祭国の妊婦を診察したり分娩を担当したりする。私達を受け入れながら滞在に必要な物資を負担する祭国への見返りでもある。また、私達は祭国の人達の労働を手伝うこともある。港では漁師や水夫、町では商人や職人、農村では農民が様々な仕事をしている。手伝いながら私達は適切な男を探す。


 時が経つにつれて私は男に少しだけ慣れた。黙々と作業する男もいれば、気さくに話しかける男もいるし、怠けて周りから叱責ばかりされる男もいる。想像以上に普通な男ばかりだが、たまに短気で攻撃的で怒鳴り散らす下品な男もいる。男の怒鳴り声は耳が痛い。発達した筋力がそのまま凶器になる。その上、刃物や鈍器を持つこともあるので、私達は被害を受ける前に吹き矢で返り討ちにすることもある。吹き矢には痺れ薬を塗っているので効果はあった。


 そんな悪漢を祭国の軍に突き出すと、軍は礼を述べたり謝罪したりするが、時々困った表情を浮かべる。祭国は階級社会なので、悪漢が貴族だと、扱いに困るそうだ。私達花国では暴力を振るう者ならば誰でも厳しく処罰すべきだと考えるが、祭国では貴族による暴力は大目に見られる。それどころか女が男に反撃する事に祭国の人々は抵抗を感じている。私達花国と祭国では幾つもの条約が決められているので私達が純粋な正当防衛で男を攻撃しても罰せられない。私達も正当防衛以外に祭国や同胞を攻撃することもない。


 稀に男が女に暴力を振るって怪我させることがある。私達はそれを見かけたらその女を避難させながら男に反撃する。祭国の人達はそんな卑劣な男を蔑むが、私達に困惑気味な態度をとる。特に当事者が夫婦ならば私達を制止することすらある。


 私には理解出来なかった。妊娠も出産もしないのに筋力が有る男による暴力を野放しにする理由は一つも無いはずだ。暴力を受けた女は怪我どころか死ぬ場合すらあるし、物も共同体も壊れる。悪漢は害悪でしかない。


 それどころか悪漢に報復する私達を祭国の人達は怖がっているようだ。女達だけではなく男達も心持ち、怯えている。

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