初めて会った男達
進むにつれて漁船や軍艦が多くなってくる。予定通り半月の航海で祭国の有る霧島に到着する。私達は艦長や上官達の指示に従いながら船を動かす。船体そのものだけではなく帆の張り方や向き、櫂の動かし方で調整していく。船は急に止まれないので工夫が必要だ。
錨を降ろす。無事に港に停泊出来た。晴れの日のそよ風なのに肌寒い。北方に位置する祭国は寒冷だ。日陰に雪が所々残っている。予めそれが分かっていたので、私達は厚着している。
私達が降りると祭国の人達が集まって来た。祭国の軍が民衆の前に立ち塞がって道を作らせ、私達を誘導する。私達は整列して奥へ進む。半分は見張りの為に船に残っている。私達は祭国の民衆と軍人達を観察しながら歩く。祭国の人々も不思議そうに私達を見つめている。上官達は真っ直ぐ前を見ながら整然と歩いている。
時折、聞き慣れない言語が聞こえる。祭国の言葉だろう。その中から低い独特の声が目立つ。また、背が高くて体格の良い人間が沢山いた。最初は祭国の人々の特徴かと思ったが、私達の花国に来ていた祭国の人達とも違う。
彼等は男だ。やっと気付いた。しかしあまりにも男達が多過ぎる。私達を誘導したり民衆に道を譲らせたりする軍人達は特に逞しい。私達と同じ女達は少ない。祭国の男達は興味津々と私達を目で追っているが、攻撃する気はないようだ。国を出る前に私達は学舎で男達は筋力が有り、時折暴力を振るうと習った。戦闘が起きると私達は不利だ。私達は一応、懐刀や吹き矢を持ち、護身術を習っているが返り討ちにする自信がない。花国では内戦が無く、実戦経験が無いからだ。
大きな広間に着いた。祭国の軍人達に誘導されて私達は整列した。周りは森林に囲まれた風情のある所だ。地面はよく均されて平らだ。正面には大きく立派な建物が佇んでいる。木造だが丈夫な造りだと素人目でも分かる。王家の別荘であり、私達の宿泊所でもある。
私達が黙って待っていると、祭国の将校が掛声をかけた。祭国の軍人達も私達も片膝を地面に付けて頭を下げる。鳥の鳴き声に混ざって別荘の扉が開く。祭国の王が姿を現すのだろう。
空気がピリッと、痺れる。頭を下げているが、逞しい祭国の軍人達が緊張しているのが分かる。私も鳥肌が立つ。
王が祭国の言葉で挨拶をした。声が低く響く。威厳がある。男の声だ。私が珍しさを感じていると、挨拶が終わり、女の声がした。王妃だ。王妃は先程の挨拶を共通語に訳している。王妃の声も威厳が有り、落ち着いている。
また鳥の鳴き声。足音が微かに聞こえる。その後、扉が閉まった。祭国の将校が掛声をかける。私達は頭を上げて立ち上がる。膝が痛いが耐えられないほどではなかった。
暫くすると祭国の軍人達は再度扉を開けて私達を中に入れる。




