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海繋がる  作者: 加藤無理
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条約締結前

 宮殿に到着した。下船すると私達は整列した。私達を監視・護衛してきた軍人達も私達の世話をしてきた商人達も半分は引き下がった。秋蓮と夏鉄は私達を引き連れる。役人達と不思議な雰囲気の男達が中に案内する。不思議な男達は宦官だろう。後宮にいる女達と性行為出来ないように去勢された使用人だ。まほろば帝国には去勢の文化は無い。私達海風列島では性犯罪者や貴族の女達と性行為をした者が刑罰として去勢される場合がある。宦官の様な存在は盤古大陸独特だ。


 宦官達も私達を珍しそうに見ている。私達海風列島の者達は赤髪、まほろば帝国の者達は紺色の髪だ。黒髪ばかりの彼等にとっては奇異に見えるだろう。皆、年を取れば白髪になるようだが。


 私達は大広間に通された。皇帝と謁見する前に宰相をはじめとする高級役人達が私達を観察し色々と質問する。宰相は皇族ではないが科挙という難しい試験に一番の成績で合格し、皇帝を補佐している。役人達は宰相の目配せで私達や秋蓮達に質問していく。私達はやっと盤古大陸の言語を習得したのでゆっくりハッキリした口調でないと聴き取れない。秋蓮達がそれを察知して繰り返す。


 役人達は私達の軍事力と技術力と特産物について尋ねていく。私達は機密情報以外は答えていく。まほろば帝国と海風列島との交易についても説明する。役人達は紙に記録しながら質問を続ける。宰相は熱心に聴いている。


 逆に私達も訊き返した。盤古大陸では火薬の原料や金属以上に石炭が豊富に採掘される。冶金以外にも日常生活に使用されている。海風列島からは肥料や薬品にも使える火薬、まほろば帝国・うぶすな大陸からは金属、盤古大陸からは石炭を互いに輸出し合えば互いに発展していく。価格や輸出量や交易方法はそれぞれの為政者達が様々な想定をしながら話し合って条約を締結していく。イロも鞘もロイも提案した。


 盤古大陸の利益にもなるはずなのに宰相は苦い顔をする。大きな変化を嫌がり、相互不干渉を望んでいるようだ。また、紅帝国が世界の中心だと驕っている様子でもある。女の地位が高いまほろば帝国や武力を躊躇わずに使う海風列島が野蛮に見えるようだ。


 確かに紅帝国の土木技術や冶金技術や水田開発は驚嘆に値する。高度な文明ではある。しかし、他の文明を見下す態度は野蛮だと私は思う。イロ帝国も若い学者のロイも似た感情なのか不快そうに顔が歪んでいる。心が読める鞘は険しい顔をしている。


 秋蓮と夏鉄は苦笑いしながら私達と役人達の間に入り、落ち着かせた。先に三つの文明が不戦の条約を締結してはどうかと夏鉄は提案した。交易するかどうかは後で考える。宰相の顔が少しやわらいだ。役人達も安堵している。私達もその提案に賛成した。


 話がまとまりかけたところで皇帝が奥からやって来るようだ。皇帝が来ても御簾で姿がぼやけているが、私達は宰相の指示通りに跪いた。秋蓮も夏鉄も跪く。

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