艦長就任
私達は何度も海賊を見つけては拿捕して武装解除させていた。砲弾を駆使して沈没させる方が確実な上にこちらの被害は少なくて済む。しかし私達は敵船近くに着弾させて動揺させてその隙に近付き、反撃されないように武装解除させていった。こちらも敵も死傷者を最低限にすることで、敵に自白させるのだ。何時どんな事を何処で誰としてきたか。拠点は何処か。首謀者は誰か。
外国にいる同胞や母国にいる者達に物資や手紙を渡す本来の仕事もした。他の船よりも早く安全な航行して確実に渡す。報告も確実にする。
また、時化の時やその直後には難破船を見つけては救助した。こちらも転覆しそうになるがそれを耐えながら船から船へ人を移動させていた。こちらも海に投げ出される危険は有ったが勇気を振り絞り叱咤激励し合った。
私達は高く評価された。私自身、三十五歳になる今年に中佐に昇格した。私は喜ぶより驚いた。仲間達と訓練したり議論したり実戦したりと頑張ったが思い切った事をしていないつもりだ。
このまま連絡船で仕事をするのか、それとも妊娠希望者の護衛に戻るのかぼんやりと考えていた所、私は扇国に行くように母国から命じられた。扇国は海風列島の東側に位置している。
扇国の国王は貴族を説得して東進する艦隊を編成することにしたのだ。海風列島の遥か西側のまほろば帝国との交易を続けるだけでも国益になるが、この世界が巨大な球体なのかどうかの決着はついていない。まほろば帝国も西進したが、文明を持った何者かに襲撃されて失敗している。
今回も何が起きるか分からない航海。扇国だけでは船団を形成できないので他国四カ国の協力を得る。扇国が責任を持つならばと私達の花国も他の三カ国もそれに賛同した。
私はその艦隊の構成員の一人になり、準備を整えて航海に参加するのだ。まほろば帝国への初航海が評価されたのだ。
扇国に到着すると私はロイに再会した。ロイはシドとサリの息子でもうじき二十歳になる。両親はこの航海に参加したかったが、ロイが説得して両親の代わりに参加することになった。元々父親のシドが遥か南への冒険を希望したことが全てのキッカケだ。ロイはシドと彼をを支えるサリを見て育った。私とロイは握手した。
今回はまほろば帝国の人達も参加する。六カ国が四隻ずつ軍艦を出して二十四隻の大艦隊になる。総勢約六千人。私達は造船や準備や時化対策の他に軍事演習も行った。攻撃を受けたら沈められないように反撃する。侵略目的ではないので危険ならば深入りせずに逃げ帰る。
戦を嫌うまほろば帝国の人々と合同で軍事演習をするのは苦労したが、次第に練度が上がった。また、まほろば帝国には心が読める女達がいる。文明と遭遇したら彼女達の能力で言語を習得するのだ。今回の航海の参加者のうち、私達花国とまほろば帝国の女達を合わせると五人に一人から四人に一人が女である。女達の士気は高く、女を見下す悪漢は非常に少なかった。
二年が経ち、私は三十七歳になり大佐に昇格した。それだけではなく前任の艦長が風邪を引いて私が跡を引き継いだ。今回の総指揮者は扇国の王子の一人であるイロ提督だ。彼は戦争の歴史に浪漫を感じる人物だが特別好戦的ではない。
私は焦ったが、なるべく平静を装って指揮を執る。軍艦は正確に動く。私は安堵した。
最後の演習を経て私達は秋に出航した。




