新しい仕事と大陸
軍に復帰した私は少佐に昇格していた。艦長を務める大佐と共に作戦を建てたり部下に指示を出したりするのだ。特に私は航海を担当する。海図作成の為に測量に赴いたり時化にも耐えられる安全な航行を考えたり直接操舵する老兵達の様子をうかがったりする。時折、陸戦や海戦の演習を行い、仲間達の練度を上げる。
部下の中には私よりも遥かに年上の老兵が沢山いるが、私は卑屈にならないようにした。間違いを指摘されれば修正するし、人としての敬意を払うが、無駄な遠慮はしなかった。私も間違いを冷静に指摘するし年下である事を理由に嘲笑されないように馴れ合いを避けた。皆も私を蔑むことはしなかった。
今回私の乗る船は母国花国の南方に位置する笑国と母国との往復を繰り返す。連絡船だ。笑国に滞在している私達の同胞に家族からの手紙や物資を渡したり逆に家族へ手紙を届けたり、本国からの要請や命令を伝えたりする。笑国はシドとサリの母国でもある。もしかしたら再会するかもしれない。
連絡船はその他にも外敵が攻めてこないか確かめもする。砲弾等の装備も十分に備えなければならない。ここ五十年ほど海風列島では戦争らしい戦争は起きていない。女しかいない私達は侵略戦争を起こすつもりはない。起こしたら子孫が残せなくなるからだ。また、笑国も他の国々も戦争を起こす兆しは無い。しかし海賊が時折海路や港を荒らすので警戒しなければならない。また、戦争が起きなくても国防は国の要でもある。
私達の母国花国は海風列島の中央部に位置している。外国には半月ほどで到着する。私達連絡船は一ヶ月ほど滞在しながら任務を果たして帰還する。帰国後も報告や作戦の建て直しや準備で二ヶ月ほど滞在するとまた外国に行く。その繰り返しだ。途中で軍艦を修理したり休暇を望む者がいたり新しく配属される者もいる。
私は花国に戻っても故郷には戻らなかった。時折、家族には手紙を書くぐらいだ。
ここ三年は忙しかったが、色んな情報が入った。まほろば帝国と私達海風列島との交易は順調で互いに大きな利益が出ている。私達は金属とその製品が手に入っているし、まほろば帝国も火薬で農薬や肥料や薬品を生成して生産力や生活が向上している。互いに毎年一度は往来している。
しかし良い報せだけではなかった。まほろば帝国の西側の西府の人達の航海が失敗に終わったのだ。彼等彼女達はずっと西側に行って世界が巨大な球体なのかを確かめようとしたが、途中で巨大な陸地が立ちはだかった。和平交渉の為に慎重に近付こうとすると、攻撃を受けたのだ。先陣を切っていた軍艦が沈没し、他の軍艦は海に投げ出された乗組員を助けながら命からがら逃げてきたのだ。死者は二千人中三十名、負傷者は六十名。
この失敗でまほろば帝国は西側への航海を諦め、海風列島との交易に力を入れることにしたのだ。
どうやらまほろば帝国と海風列島の他にも文明が存在しているらしい。しかし友好的ではないようだ。




