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海繋がる  作者: 加藤無理
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海風列島とうぶすな大陸との交易

 私達が一人も死者を出さなかったどころか異界から千人五隻の艦隊を引き連れたので、海風列島の者達は騒然となった。私達は海風列島西側の舵国の港に停まった。港の船乗り達や住民達が固唾を飲む中、バル提督と主立った上官達は下船した。私もシドとミヤ少将と共に船を降りる。まほろば帝国の人々は艦上で待機している。


 私達は近くの王の別荘まで行った。別荘を管理していた貴族が迎える。貴族は使者と船を出して国内の水路と河川を渡って首都に有る宮殿までこの事を報せる。他の貴族達も集まって来る。


 旅の疲れが癒える前に私達はこの二年間の出来事や交渉について説明した。舵国の貴族達は狼狽しながら話を聴いていた。五泊している間に私達は食事休憩や睡眠を取りつつも、まほろば帝国の文化や地形を地図や絵を見せながら解説した。


 六日目に舵国の王が来た。バルとシドが慇懃に挨拶した後、手身近にまほろば帝国について語る。王は既に話を聴いていた貴族達の顔色を観察しながら質問していく。まほろば帝国には神通力という不思議な女達が権力を握っている事を知って抵抗を感じたようだ。しかしまほろば帝国の人々が戦を嫌うと知ると、彼等彼女達を迎えることにした。


 別荘近くの空地に簡易宿泊所を急いで建てさせる。その間に海上で待機しているまほろば帝国の人々に食糧等の物資を与える。バルもシドもまほろば帝国の人々が私達を丁重に扱った事を強調した。国王と貴族は外国四ヶ国に書簡を送り、報告した。四ヶ国からも軍や貴族が三隻から五隻ずつの小さな艦隊を編成して舵国に集まって来た。


 一ヶ月ほどで簡易宿泊所は完成し、まほろば帝国の人達千人を移動させて滞在させた。彼等彼女達は私達と髪の色が違っていたので皆は更に驚いた。


 海風列島の私達とまほろば帝国の人達との間に本格的な交渉が始まった。まほろば帝国の人達が私達の共通言語を十分に話すので海風列島の人々は驚嘆した。


 私達はまほろば帝国の人達の世話をしたり交渉の確認をしたり母国へ書簡を送って報告したりした。特に私はまほろば帝国の指揮官である鞘と副官の平太の世話をしたり資料や報告書を整理するのを手伝った。


 私はいつの間にか大尉に昇格していた。


 まほろば帝国では女達が、海風列島では花国以外は男達が侃々諤々とした議論を重ねた。海風列島では既得権益と自己顕示欲を元に話を進めようとする貴族が目立ったが、まほろば帝国では自分達も相手側も利益になる交渉を淡々と模索していた。不戦の条約を決めていく。私の母国花国の者達は白熱する両者の間に入って何度も落ち着かせている。


 一年半ほどで話がまとまり、定期的に交易する事になった。交易品の価値や価格をどんな基準で決めるのかも条約や法で明文化した。武装の基準や交戦の条件を確認し合い不戦の誓いを立てる。どちらかに深刻な飢饉が発生した場合、助け合う。


 船や装備を修理し、食糧等の物資を積む。半年ほどでまほろば帝国側が帰還する準備が整った。今回はバル提督率いる私達の艦隊は解散し、別の乗組員達が集まって農薬・薬品用の火薬等を積んでまほろば帝国の人達と同行する。


 二年はあっと言う間に過ぎた。平太はシドと握手をした後、更に私と握手した。


 私達は見送った。

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