海風列島へ帰還
まほろば帝国に来てから約一年。私達は自分達の世界に戻ることになった。その前に私達はまほろば帝国の人々に航海術や浄水装置の作り方を教える。まほろば帝国の人々も世界の形に興味を持ち、冒険を試みようと考え始めていた。
私達を世話していた東府の反対側に位置する西府の上杉氏が北府と南府の協力を得ながら艦隊を編成して西進するのだ。何も障害が無ければ私達の世界に辿り着くかもしれない。もしくは世界の果てに到達するかもしれない。
一方、私達は京や東府から精鋭を集めて彼等彼女達を連れて私達の世界に帰還する。そこで具体的な交渉を重ねる。上手くいけば交易を始める。
私達もまほろば帝国の人々も私達の世界を海風列島と名付けた。まほろば帝国が金属を、海風列島が相手側に火薬等を輸出する。二つの世界は植生も生態系も違うが、何故か似た作物が栽培されている。特に米は色が違うが共通している。どちらかに深刻な飢饉が起きたら融通し合う。また、そうでなくてもそれぞれの特産物や工芸品を輸出し合う。
私達は旅の準備で更に一年費やした。私達海風列島側はまほろば帝国の言葉をある程度習得出来た。単位が違い暦の表現も異なってはいたが、換算表を作って分かりやすくした。私達が技術を教えれば教えるほどまほろば帝国の人々は習得し、女達は神通力で応用していった。心を読む以外にも様々な能力がある。男達も必死に学ぶ。
私は二十九歳になった。造船も艦隊編成も物資の調達も想像以上に順調だ。
私達は東府の者達やそこを統治していた松本氏に礼を言った。弓と詩郎と別れることになる。二人はまだ若いが問題を起こさず計画的に長旅の準備を実行してきた。統治者としての度量が十分有る。領民達からの人望は篤い。むしろ私達海風列島の統治者よりも為政者としてふさわしい器だ。
今回私達に同行するまほろば帝国の人々は千人ほど。そのうち三割が女。その女の七割が神通力を使える。この千人の代表者には帝の妃の一人である枠田鞘と、副官の角倉平太が乗船する。鞘は心を読むだけではなく、自分の考えを伝える能力がある。相手に幻覚を見せたり聴かせたり感じさせたりもできる。
一方、角倉平太は弓の姉で御台所でもある鞠の夫。地味で素朴だが真面目な男。まだ成人していない二人の娘と一人の息子がいるが、今回の旅に責任を感じている。帝の次の権威である御台所が直接航海出来ないので夫である自分が責任持って代役を務めるのだ。三人の子達は不安そうにしているが、御台所がしっかりと公務をこなしながら育てるはずだ。
平太は私より一歳年上だ。平太は乗船するとシドとしっかり握手をした。




