異世界との出会い
向こうから三隻の船が来た。私達は戦闘配置についた。準備はするが攻撃はしない。三隻の船は私達の手前まで来ると衝突する前に一斉に半回転した。元来た所に戻るようだ。私達をどうやら迎えるつもりだ。私達はミヤ少将の指揮の元、操舵して三隻の後を追う。
広い砂浜の間に大きな岩石の港があった。三隻の船は綺麗に停まった。私達もその脇に停める。港にはわらわらと人が集まってくる。三隻からも人が縁まで来て私達の様子をうかがう。皆、弓矢を持っていた。何割かは沖の方へ見やって私達の仲間を観察している。警戒はしているけれども構えていない。私達も武器を持って下船した。
こちらの世界の人々の髪は紺色か青色ばかりだ。同じ人間だけれども赤い髪をしている私達とはやはり違う。また、よく見渡すと手前には武器を持った男達が私達を囲み、奥の高台には女達が集まって私達を観察している。
シドは彼等彼女達を見渡しながら大声で私達の共通語で話しかけた。沖や自分達を指差したり、身振り手振りしたりしながら、自分達は遥か東から一ヶ月かけて航海してきたと紹介している。
手前にいる男達は困った表情をしながら互いの顔を見比べた。何か話している。やはり私達とは全く違った言語だ。手前にいた男達が両手を下げて座るような素振りを見せた。座って欲しいのだと分かって私達は腰を下ろした。
奥にいた男達が高台にいた女達を十数人連れて来た。男達は女達を囲んでいる。女達を守りながら何か交渉をしようとしているのだろう。女達は私達にしきりに話しかける。言語が全く分からないので私達は答えられずに黙っている。女の一人がシドとミヤを見比べて熱心に話しかける。シドは困惑しながらも熱心に身振り手振りしながら再度紹介する。女達は私達を観察しながらもシドの話を聴いている。
女達は仲間の男達を見渡す。男達は道を開けて私達を囲む。女の一人が手を上げて立ち上がるように命じた。私達が立ち上がると皆、歩き出した。私達も誘導されて歩く。
暫く歩くと大きな洞窟が見えた。女達が松明に火を付けて中に入る。その次に私達、最後に男達が続く。女達は私達にまた座らせる。私達は腰を下ろす。女達も男達も半分ずつ洞窟から離れたが、残った男達は私達を黙って見下ろし、女達はひたすら私達に話しかける。シドとミヤが困惑気味でこれからどうするつもりなのかと尋ねると黙って聴く。シドとミヤが黙ると私達を見ては何か話しかける。彼女達が何を言っているのか分からなかったが、私達は自己紹介したり、敵意が無い事を訴えたりした。彼女達は私達が喋ると黙る。私達が黙るとまた話しかける。この繰り返しが夕方になるまで続いた。途中で水と食料が男達から手渡される。食料は炊いた赤い米の塊だった。この世界でも米が有るのかと驚いたが私達は食べた。
夜になると女達は黙ったが、私達を男達と一緒に見張った。用を足したがっている者に気付くと外に連れ出して便所に案内した。
翌日は雨が降っていた。女達はまた私達に水と食糧を与えながら話したり聴いたりを繰り返した。男達から紙と筆記用具を渡されてシドとミヤに文字や絵を書いて見せた。二人にそれらを渡す。二人は私達の世界の地図を描き地名を書き、自分を指差して名前を記す。女達は私達を見渡しながらそれを眺める。
男達が見張りをして、女達が私達に書かせたり喋らせたりする。女達は私達の言葉を習得するつもりだ。私達はそれに気付いて身振り手振りで動作を再現して動詞を教えたり、絵を描いて名詞を伝えたり、複数で集まって比べさせて形容詞を表現したり、色々工夫した。概念や時間を表現するのは難しかったが、空を見ながら天候や時間帯を教えた。女達は熱心に見聞きする。
十日ほどそれが続く。その間に三回ほど川に連れて行かれて私達は身体を洗うことになった。シドは男達に見張られながらであった。
沖で待機しているはずのバル提督は攻撃を仕掛けてこない。私達の何人かはこちらの人達の船に乗せられて仲間達に姿を見せているからだ。
こちらの世界の人達が何時頃、私達の言葉を習得するのだろうか。私達は不安になった。




