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海繋がる  作者: 加藤無理
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冒険の予感

 私とサリは一度、扇国から花国の連絡船でサリの母国笑国に戻った。サリにとって約一年半の帰還だ。


 再会したサリと夫のシドは安堵の溜息を吐いた。シドの隣には男の子がいる。サリとシドの息子だ。息子は暫く呆然としていたが、サリが本物の母親で無事だと分かると安堵の笑みを浮かべた。


 サリとシドは私に自宅を案内した。息子は私を不思議そうに観察している。私はシド達の家に暫く滞在することになる。私はサリの護衛と世話よりもサリとシドの手伝いをする。シドは自国笑国の王室以外にも外国に既に何度も自分の研究資料をまとめて送っている。サリがそれを手伝う。私は二人を手伝いながら母国花国に資料をまとめて書簡を送り、花国からの書簡を受け取る。


 世界の果てを確かめる航海。世界が巨大な球体ならば同じ方向に進めば元に戻る。東に進むか西に進むか。扇国では結論が出なかった。そもそも本当にそんな長旅を誰がどの様に実行するのか扇国ではまとまらなかった。私とサリは一度、南に冒険したがっていたシドの元へ帰ることになったのだ。


 シドも私達の話を聴き、扇国からの書簡を読んで東か西へ行くべきだと考え直した。南へ行くのはその後で良い。


 二組に分かれて一度に東西に行こうとシドは考えたようだが、必要な船や人員や食糧等の物資を考えると現実的ではない。そこでシドは笑国の王室の許可を得て西側の舵国の王室にこの冒険の案を書簡の形にして送った。


 返事が来るまで私達は冒険に耐えられる船や人員の数、食糧や医薬品や衣料の量、浄水装置や船の構造の質について調べたり計算したりした。時化や座礁以外の脅威も考える。世界の果てに到着する前に陸地が存在するかもしれない。そこには私達の様な人間が住んでいるのか、それとも全く違う生物が文明を築いているのか皆目分からない。言語が全く通じないので戦争が起きるかもしれない。砲弾等の兵器の搭載も必要だ。


 数ヶ月が過ぎて冬になり、私は二十五歳になった。私は一度、無事だと家族に手紙を書いた。


 こちら笑国の貴族と王室は消極的だが、篤農家達は理解を示した。シドの兄が統治する領民達もシドを応援している。扇国の貴族と商人達も協力すると明言している。遥か北に位置する祭国も興味を示している。私の母国花国も新しい艦隊を編成し始め、将兵を募集している。


 舵国から返事が来た。同じ文書が笑国王室にも届いているようだ。舵国の国王は世界が球体だとする説を支持している。一方、貴族達の半数以上が世界の果ては空と海が繋がっていると考えている。舵国の国王は貴族との決着をつけるため、各国の協力を得て船団を編成して確かめる事を決めた。既にそれを各国に伝えている。つまり舵国から西進する方針を決めた。


 シドは大喜びした。私とサリはシドと話し合った。サリもシドに直接協力したかったが、折角息子と再会したのにまた別れることになる。息子を連れて行こうとしても息子はまだ八歳だ。息子は冒険に興味を持っていたが、恐怖の方が勝っていた。サリは息子と一緒にシドの安全を祈りながら待つことにした。


 私はシドと一緒に冒険に参加することになるが、サリと別れることになるので残念に感じた。しかしシドとサリとその息子が考えた末に決めた事なので文句を言わなかった。


 シドに同行する私の存在をサリは不安にならないのだろうか。私もシドも互いに恋慕しないだろうが、客観的に見れば男女だ。サリは私達花国の女達と違って嫉妬の概念がある。私が尋ねるとサリは、

「私は貴方を信用している。けれども恋仲になっても驚かない」

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