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海繋がる  作者: 加藤無理
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新しい作戦

 サリを連れて花国に帰還すると私は東第八艦隊に配属された。この艦隊は今、陸上勤務しながら作戦を考案している。妊娠希望者や新兵を何処からどの様に招集し、誰がどの様に彼女達の世話をしながら守るのか。どんな装備をどれだけ準備するのか。どんな航海をどの航路で行うのか。時化や有事対策。


 基地に入ると私はサリを提督に引き合わせるように命じられた。


 執務室は整理整頓がなされており、広々としている。提督は五十代後半の中将なので私は緊張した。しかしなるべくハッキリしっかりとサリを紹介した。サリは疲れと緊張で顔色が良くないが提督に勧められて姿勢正しく座っている。


 提督はシドからの資料を連絡船から送られて既に読み込んでいた。私とサリに色々と質問して確かめる。私達もシドの資料を本人と確認していたので答えられた。サリは学問に自信なかったが、夫のシドの一番の理解者である。提督はサリに感心した。


 提督はシドの研究成果を確かめようと作戦を変えることにした。幸い、艦隊が編成されて間もなく、作戦も練り直す時間が十分にあった。


 翌朝、提督は総員を集めてその事を伝えた。皆、驚いて最初は面倒臭そうにしていたが、提督に説き伏せられて逆に新しい作戦に興味を持つ者が増えた。シドの研究成果は画期的で成功すれば花国の軍事費も大幅に軽減される可能性があった。将兵達の負担も減る。それが分かると皆は変更を受け入れた様子だ。提督は総員にサリを紹介した。


 サリは多くの作戦会議に参加して助言したり疑問点を指摘したりした。提督も将校達もサリの発言に傾聴する。私は海図や筆記用具や計算機具を用意したり茶を出したりしながら、皆の話に耳をそばだてる。時折、サリや将校達が私に直接尋ねてくる。笑国から一緒に帰ったサリとの会話は気楽だったが、少佐以上の上級将校達からの質問には緊張した。私は自信無かったが、頑張って答えた。


 作戦会議が終わって少尉以上の将校達に報せる時も声が上擦らないように私は頑張った。誰も私を責めたり罵倒したりもしなかったが、上官への敬意は絶対である。彼女達からも色々と質問を受ける。私はなるべく正確に答えるようにした。


 伍長から曹長までの下士官達は私を面白そうに眺めている。私も彼女達も多忙だが、私はサリの護衛と世話を担当している。食事は炊事部隊、洗濯は洗濯部隊が担当し私は依頼するけれど、他に必要な事は無いかとサリを観察して手伝う。祭国や笑国で妊婦や乳幼児達を観察しながら世話をした経験が役に立った。サリは労働を嫌う貴族だが立派な大人だし、他人を気遣うので私は苦にはならなかった。むしろサリと一緒に資料を読み込み作戦を考案するのが大変で、楽しくもあった。


 サリは花国での生活を楽しんでいるようだ。時折、母国笑国に残した息子と夫のシドに寂しそうに手紙を書いているが、私達を興味深く観察している。


「貴方達は女同士で嫉妬しないのね」

 サリは不思議そうに呟く。女の敵は女。地位も財力も筋力も有る男を奪い合い、他の女達を警戒する。そんな独特な状況が笑国以外でも当然の如く存在している。一方、女しかいない花国では女達は温和で無能やブスを排除しないし互いに尊重し合っている。


 言われてみれば確かにその通りだと私は思った。

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