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海繋がる  作者: 加藤無理
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嫌な国民性

 花国から出航して約半月後に笑国に着いた。無事に港に停まる。これから冬に向かうが笑国は温暖である。私達は丈夫だが薄手の衣類を用意している。


 笑国の軍が来た。私達は見張りと子ども達を残して軍の誘導に従う。民衆達が軍にどかされながら興味津々に私達を目で追っている。


 だいぶ港から離れると大きな建物が見えてきた。私達の宿泊所だ。兵士が人間の二倍ほどの高さの大きな扉を開けて私達を中に入れた。


 私達は窓の大きく開いた大広間に誘導され、整列させられた。暫く待つと笑国の大将が共通語で挨拶した。


 笑国では風紀の為に私達が気ままに出歩く事を禁じている。その代わり必要な食糧と物資を軍が責任持って運び、適切な男達を選んで連れて来る。私達はこの宿泊所で活動をしなければならない。妊婦の世話や分娩はこちらで行われる。五日に一度、軍艦の停泊する港とこちらを笑国の軍が監視しながら私達を誘導し往復する。


 私達が自分達の判断で適切な男とその大事な女との交渉をすると風紀が乱れる。艦内や港で出産すると血の穢れに怒った海の神にたたられる。笑国の将校達は半分、迷信だと疑っているが、笑国の人達は保守的で風紀と血の穢れを気にする。


 私は動かずに黙って聴いていたが不快を覚えた。私達は血を責任持って処理するし、その他衛生面も気遣っている。そもそも命懸けの大事な出産を血の穢れと嘲る宗教観に敬意を払いたくもない。適切な男の身近な女と交渉して確認しないと却って混乱するはずだ。男本人も気乗りしないだろう。


 祭国の場合は王と王妃が自ら挨拶したし、私達が交渉するのを手助けしてくれた。しかしこちら笑国は王家も貴族も来ない。それどころか私達を異物扱いする。また、笑国の軍が連れて来た男達は私達を選ぶようだ。私達の子どもに一切責任を持たない男が何故、私達を選ぶのだろう。


 説明を終えた大将は私達の釈然としない様子を感じ取ると気まずい顔をした。笑国の軍も私達も敬礼する。


 私達は荷物を解いたり施設を確認したり掃除したりした。意外に台所も便所も診察室も分娩室も寝室もしっかりした造りになっている。部屋は多くて広く、閉じこもっても十分に生活は出来る。


 妊娠希望者は大広間の窓際に寄って待機する。窓は大きく外側からも内側からも丸見えだ。見世物の様で良い気持ちにならないが、笑国の要請だ。軍艦に子どもを残してきた私の同僚が不安そうな表情で窓際に座る。


 私は掃除したり炊事したり洗濯したり雑用をこなす。時折、同僚の様子をうかがう。軍医達は早速、私達の存在を聞きつけてやって来た笑国の妊婦達の診察を始める。その見返りとして私達は滞在の許可を得ているし必要物資を得ている。


 五日も経てば私達は交代して軍艦の見張りをする。艦内を掃除したり点検したりもする。同僚は待ちわびていた子どもに勉強を教える。他の子ども達も母親達からそうしてもらっている。


 時折、笑国の指示で軍艦を動かして隣の港に移動する。その時に物資の運搬も頼まれる。笑国が滞在を負担しているので私達は拒まない。航海術や操舵術が鍛えられるので私にも利点がある。


 時折、変な男がヘラヘラ笑いながら近寄ってきて私達に抱きつこうとしたり、複数の男達が何処かへ連れて行こうとする。その前に私達は吹き矢で撃退したり懐刀で斬りつけたり手足を掴んで投げ飛ばしたりする。殺しはしないが笑国の軍に突き出す。軍も男達に呆れた様子で引き取る。


 祭国にも悪漢はいたが、こちら笑国の悪漢はそれ以上にたちが悪い。男達は生殖の為ではなく娯楽と支配の為に無茶な性行為をする場合が多々ある。性暴力だ。女しかいない私達の花国でも性犯罪は稀に起きるが、厳しく処罰される。筋力の有る男が性犯罪を起こす事件は非常に悪辣なのに、何故か被害者も非難されるようだ。私達は互いに助け合い、条約に守られているが、笑国の女達は違う。私達は性犯罪者を見かけたら自分達に被害が無くても軍に突き出している。

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