吸血鬼とメイド7
日が暮れ真夜中になると空気が澄み渡り深呼吸するとカトレアの頭が冴えていくのを感じた。カトレアはアルトの幽閉されている建物の入り口へ歩き出す。入り口に到着するとそこには警備兵が一人いた。視線を交わすが警備兵に止められることなくカトレアは建物へと入っていく。
以前からこの警備兵は金で買収しており協力者であったのだ。
カトレアは闇で満たされていた入り口に足を踏み入れていった。ランプの光を頼りに階段を上っていく。その間とてつもない不安に襲われていた。
カトレアはこれまでアルトが生きたい、この場から逃げたいと思うことを前提として計画を立てていた。しかし、カトレアの願いが叶わず量産施設への移送が決定してしまった。アルトを逃がそうとしても一緒に逃げてくれるだろうか。これから行うことは一か八かの運命戦になるだろう。しかし、やるしかないと自分を奮い立たせる。
階段を上りアルトの部屋のドアを開く
「え……?」
なんとそこにはアルトの姿がなかったのだ。いつもこの時間ならこの部屋にいるはずのアルトがいない。その状況にカトレアの頭の中が真っ白になった。このままでは計画を実行できない。カトレアが必死に考えを巡らせていると後ろから青年の声がした。
「お待ちしておりましたカトレア様」
カトレアは驚き勢いよく振り返る
「-っ誰?」
「主レーモンド卿に仕えるアロンと申します」
「レーモンド卿の?」
こんな時間に一介のメイドに用事など普通ないだろうとカトレアは思った。カトレア自身の計画が漏れていたとしか考えられなかった。
「レーモンド卿の執事が私に何のようですか」
その場には張り詰めた緊張感が漂っていた。しかし、それをものともせずアロンは一つの手紙を手渡してきた。手紙を開くとそこには舞踏会の招待状が入っていた。
「カトレア様、あなたをレーモンド家の舞踏会にご招待いたします」
カトレアは一瞬何を言われたかよく分からなかった。舞踏会と言えば先日に誘いを受けたあの舞踏会のことだろうかとカトレアは考えた。しかし、予定日はまだ先のはずである。
「このような時に面白い冗談を言われるんですね」
(こんな真夜中に舞踏会の誘いだなんていくら何でもタイミングが怪しすぎる。もしかして……)
「そこにアルトもいるのですか?」
しかし、執事は答えずただただ不敵な笑みを浮かべていた。
(拒否権はないようね。)
「分かりました。その舞踏会に出席いたします」
「かしこまりました」
「では明日の夕方4時頃お迎えにあがります」
「それはいいのだけれど私舞踏会に着ていくような上等なドレスは持っていませんが……」
「ご安心ください。ドレスや装飾品などはこちらで準備いたします」
そういうと執事はその場から静かに去っていった。
(リーク・レーモンド。あなたは一体何者なの)
カトレアは渡された招待状を握りしめながらメイド寮へと戻っていった。




