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吸血鬼と少女8

 アルトが目が覚めるとそこは暗闇に包まれ辺りはまったく見えなかった。周りを見回そうとすると突然後頭部に鈍い痛みが走る。


(いっ……っクソ、強く殴りやがって。)


 アルトは痛みを振り払うように頭を振る。アルトは自分の置かれている状況を探るために体を動かしてみる。手首と足首は銀の輪が付けられており、その輪と繋がっている鎖は地面に固定されていた。


 アルトは気絶する前のことを思い出してみる。


それは、カトレアが珍しく感情を隠さず胸の内を話した日のことである。


カトレアが怒って出ていきしばらくした頃ガスマスクをつけた男が現れ睡眠ガスでアルトを眠らせようとするがあまり効き目がなく最終的に鉄パイプで殴られたのところまでは覚えていた。


「あいつが使っていた催眠ガスは魔物用のものだった。だが上位種の吸血鬼の俺には効き目がない。まあ、体力がなさ過ぎて少し眠気に襲われたが……。ガスマスクを着けていた男は一件人間に見えるが、人柄の魔物だった。


見た感じ下位種の魔物であった、たぶんあいつの上に誰かがいる。あいつ自身の匂いと、かすかだが上位種の吸血鬼の匂いもあったしな」

 

 上位種の吸血鬼の匂いがしたがアルトには身に覚えのあるものだった。しかもカトレアから漂ってきたものと同じだった。


「まずいことになったな。もしあいつがこの城に紛れ込んでいるとすれば厄介なことになる。十中八九あいつの仕業だろうな」


 しっかりとカトレアに警告するべきだったといまさらながら後悔した。

 

アルトはカトレアが背伸びしようとするからつい嫉妬してからかってしまった。色恋沙汰なんて全く興味を示していなかったのに急に舞踏会に出席すると言い出したからだ。


(自分で遠ざけておいて嫉妬するなんて滑稽だな)


 アルトなり考えてカトレアを遠ざけることが彼女を幸せにする方法だった。考え抜いて出した結果のはずだった。


(なのに今更あいつを手放しがたくなるなんて……)


「やっと、目が覚めたのかい?」


 その声を聴いた瞬間アルトの過去のおぞましい記憶が呼び覚まされた。


 今アルトの表情は信じられないほど冷たいものになっていた。過去のおぞましい記憶によって感情が高まりアメシストのように美しく輝く瞳は鮮やかな深紅に染まっていく。


 男の声が徐々に近づいてくると上方に円形状に配置されているロウソクに端から順番に勢いよく火が灯っていった。暗闇で満たされていた空間がロウソクの光で包まれていく。そのおかげでアルトの視界が少しずつ開けていく。


 アルトが顔を上げるとそこには美しい青年がいた。


「また、お前に会うことになるとはな、リーク」


 アルトの目の前には青白く透き通るような肌と美しいブランドの髪を携えたリーク・レーモンド卿がいた。


「また、君に会えてうれしいよアルト」


「俺は会いたくなかったけどな」


 アルトはお前の顔を見たくないとばりに目をそらす。


「そんなに興奮しないでおくれ。瞳の色が変わっているよ」


「ふん、お前がそれを言うのか」


 リークは恐れを抱くような狂気的な笑みを浮かべ、青く輝く瞳を深紅に染め上げていた。


「お前が用もなく俺に会いに来るわけがない。何が目的だ」


「君を僕の舞踏会に招待しようと思ってね」


「舞踏会だと……」


 レーモンド卿がこんな急にわけもわからないことをしだすのは昔からだった。その都度巻き込まれていたアルトは今回も嫌な予感しかしなかった。その予感は残念ながら当たってしまう。


「そうそう。君だけじゃなくてカトレアも招待しているんだ」


「っ!?」


アルトは鬼の形相になる。


「カトレアをどうするつもりだ!」


 しかし、リークはそれに応える気はさらさらなく、それよりも何かを待っているように見えた。その直後1人の男がリークに近づき耳打ちする。


リークは今まで以上に不気味な笑みを浮かべる。


「役者はそろったみたいだね……。はぁ、僕は待ちきれないよ。こんなに胸躍るのは何百年ぶりだろうか」


青白く今にも倒れそうな血色の悪い肌に、鋭い牙、そして深紅の瞳。それは吸血鬼の姿そのものだった。


「何をするつもりだリーク」


「なにって、決して結ばれることのない2人の愛と絶望の物語さ」


 劇団の演出家にでもなったかのようにレーモンド卿は大袈裟に両手を広げる。


「僕知ってるんだ。君……ア・ル・パ・になりかけているだろう?」


「-っ!?」


「普段の君の様子を見ていればわかるさ。喉の渇きが極限状態にもかかわらず人間の血を見ても本能に呑まれないからね。彼女を除いては……」


 レーモンド卿はゆっくりとアルトに近づいていき、まるで何もかも知っているかのようにアルトを見つめる。


「それに君がカトレアに向ける視線はほかの人間を見るそれとはまったく別物だったからね」


 アルトはバツの悪そうな顔をする。


「本当に懲りないね君は。また死なせる気かい?彼女のように」


「っ……それは……」


「まあ、僕にとってはカトレアがどうなろうが関係ないんだけどね。僕を楽しませてくれるのならね」


「リーク、貴様っ!!」


「おっと、そろそろ君のお姫様を迎えに行かなくちゃ」


 レーモンド卿は振り向き歩き出した。


「待てリーク!」


 しかし、レーモンド卿はアルトを無視しその場を去っていった。


「クソっ!!!!」


 自分の声だけが虚しく響いた。



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