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吸血鬼と少女 アルト過去編 13

リークが関与していると知ったアルトは急いでリークの邸宅へと向かう。心当たりがそこしかなかったためだ。


邸宅につくと美しいバラが出迎える。


アルトはリークに拾われて以降一度もここへ来たことがなかった。

相変わらずバラが一年中狂い咲いている。なんとも不気味だ。


屋敷の入り口にはリークが待っていた。まるでアルトが来るのを予知していたかのように。


「待っていたよアルト。随分と遅かったじゃないか」


アルトはリークの喉元に鋭くさせた爪を立てるがリークに軽々とはばまれ膠着状態になる。


「エルゼはどこだ」


「そう焦るなよ。逃げやしないさ」


アルトはひとまず一歩ひく。


「さあ、彼女の元へ案内してあげよう」


アルトはリークのあとについていく。


リークに案内されたのは大広間であった。


中へ入るとそこには一人佇む少女がいた。


「エルゼ!!」


アルトはエルゼとの距離を詰める。


「大丈夫か?リークに何もされていないか?」


エルゼの安全を確かめるように肩を掴む。


「私は平気」


「そうか、よかった。なら一刻も早くここを出よう」


エルゼの手をひこうとつかもうとするがつかめない。エルゼが一歩下がったためだ。


「どうしたんだ?」


「あのね、アルトは私のこと好き?」


「何を突然」


「答えて。お願い」


「正直人間の言う好きはよくわからない。だけど一緒にいてとても心地良い。こんな感情は初めてなんだ」


「そう」


エルゼはなにか納得したように肩の力が抜けた。


エルゼは走り出し扉のような大きなガラス張りの窓を開くきバルコニーにでる。


「アルト、私と一緒にいたいって言ってくれてありがとう。だけど一緒にはいられない」


アルトはエルゼが何を言っているのか分からなかった。初めて他人に拒絶される気持ちを知る。


「そんなことない。子どもたちとみんなでいればいい。騒がしい毎日になるけどきっと楽しい」


「そうね。アルトがみんなに振り回されてそれを私が叱ってきっと楽しい日々になる。私が恋い焦がれていた日常」


「なら……」


エルゼはゆっくりと首を横に振る。


「この世界は残酷で生きるのも嫌になるときがある。だけどそれを上回るほどこの世界は美しい。アルトはこれからたくさんの人と出会い別れを繰り返す。その中であなたのことを大切に思ってくれる人があらわれる」


「俺にとっての大切な人ってのはエルゼだ。それ以外なんていらない!!」


「そんなに熱烈に言われるなんてうれしいな」


そう言うとエルゼは手すりにのぼりたつ。

谷底からの風が吹き上がりエルゼの髪をなびかせる。


「バイバイ。アルト」


エルゼは谷底へと飛び降りる。


「エルゼ!!」


アルトは急いで駆けつけるがエルゼの影すら見えなかった。

呆然と谷底を眺めているアルトに近づくリーク。


「あらら、飛び降りちゃったか。仮に谷底で生きていたとしても魔獣に食べられて骨すら残らないね」


「貴様!!」


アルトはリークの胸ぐらをつかむ。


「お前の享楽に付き合うのはもううんざりだ!」


「そんなに怒らないでよ。全部君のためにやったことのんだから」


「俺のためだと……」


「そうだよ。君はねアルパになりかけてたんだ。このままアルパになっていたら君は彼女の血を飲み続けなければ生きてはいけない。だけど彼女は束縛から守ってくれた。感謝すべきなんだよ。直前まで君に血を飲ませようとしていたのに土壇場で死を選んだということはよっぽど君に縛られるのが嫌だったんだろうね。一度血を飲んだら一生ともにいなければならないからね」


エルゼがアルトに縛られないように自死したという事実に絶望する。確かに考えてみれば妖魔とともにいたい人間などいるはずがなかった。今まで受け入れられていたのがおかしい話だったのだ。


「これで君を縛るものはなくなった。自由に生きられる。彼女に感謝しなければね」


リークの言うように感謝するべきなのかもしれない。アルパになり死ぬまで恋に身を焼かれることがなくなったのだから。


だけど、エルゼがいなくなり胸の奥に空いた穴はアルトを苦しめる。


束縛から開放されたはずなのに苦しくつらかった。


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